第056話 記憶の間(その7:夢)
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(5歳)
僕は、あれからエリシオ・ガドーさんの所にお世話になっている。エリシオさんは僕を自分の子供の様に育ててくれた。エリシオさんは、僕が冒険者である事を知っている。でも、エリシオさんは僕に戦えと言わなかった。エリシオさんから、父の事を聞かれた。これまでの経過を話すとそうかと言った。少し、寂しい様子を見せたが、それ以上の事は聞かなかった。
あれから1週間がたった。僕は、この基地内を歩いていた。小さい少女に出会った。僕と同じくらいなのだろう。僕と遊びたいのだろうか。前は毎日のように戦場に行った。そして、死体から荷物を追剥していた。それを思うと今は平和に暮らしている。
『良かったら遊ぼう。』
「うん。」
『僕は、アルフォード・ウィンザー。君は…』
「私は、ステファニー・ローズ。」
『良い名前だね。』
「ありがとう。」
この子とは、良く遊ぶようになった。ボールで遊んだり、本を読んだりした。あれから2カ月の時が流れた…
『ステファニーの家族はいるの…』
「…」
『ごめん。聞かない方が良かった。』
「ううん。殺されちゃった。私に本当の家族はいない…でも、ここでお世話になっている養護施設の人は皆親切にしてくれる。」
『そうか。』
「アルフォードの家族は…」
『同じだよ…父は生死不明。母と妹に一番上の兄さんは目の前で殺された。二番目の兄さんは、一緒に逃げられたけど、この前…殺されたと思う。今は、一人だけど、ステファニーと一緒さ。エリシオさんもエリックさんも本当の家族の様に接してくれるから…今は大丈夫だよ。』
「同じだね。」
僕たちは、その後に口数が少なくなった。家族を思い出したのかもしれない。話題を変えなければ…
『ステファニーの夢はあるの…』
「お嫁さん…」
『そうか。好きな人はいるの…』
そうすると彼女は頬を赤く染めた。そして聞いてくる。
「アルフォードの夢は…」
『僕は、強い冒険者になりたい。全てを守れる冒険者になりたいんだ…もう、失うのは御免だから…』
「なれるよ。」
『え。どうしてそう思うのさ。』
「アルフォードは優しいから…きっと強くて、優しい冒険者になるよ。」
『そっか。それには努力しないとね。』
「ファイト。」
『おう。』
穏やかな時が流れていく。それから3カ月の時が流れて僕の穏やかな日常に終止符が打たれた。
僕は、エリシオさんと話していた。他愛もない事を、そうするとエリックさんが入ってくる。
「親父…仲間が下手を打った。痕跡を残したらしい。」
「まことか。」
「ああ、結界の外に魔人が2体来ている。下級と中級だから問題ないが、とりあえず報告しておく。」
「分かった。儂も出よう。」
「その方が、より確実性が上がるよ。」
その後に、結界を突き破って、2体の魔人が基地内に現れた。無差別に攻撃している。僕は、ステファニーの事が気になった。僕はステファニーのいる養護施設に向かった。ステファニーがいる。一緒に逃げよう。避難所に行くときに、魔人の攻撃の余波を受けて、瓦礫が飛んできた。僕たちはその余波に巻き込まれて、僕は意識を失った。
僕は次の日に目覚めると、そこにエリシオさんとエリックさんがいた。
『魔人は…』
「ああ、もう大丈夫だ…」
『そうですか。良かった。そういえば、ステファニーは…』
「…」「…」
エリックさも、エリシオさんも何も言わない。まさか…僕は、起きてステファニーのいる養護施設に向かった。
『ステファニーは…』
そこには、重症のステファニーがいた。瓦礫が腹部に刺さって、瓦礫がいくつか当たっているのか痣があった。
「お兄ちゃん…」
『ここにいる。もう、大丈夫だよ…直ぐに良くなる。』
僕は、回復魔法をかけ続けた。
「お兄ちゃん…ありがとう…」
『喋らなくていい。頑張れ…頑張ってくれ…』
「…」
ステファニーはこの世を旅立った。養護施設の方は涙を流していた。皆、僕の前から消えていく…なぜ…いなくなるのだ…力がほしい。僕に力があれば…
僕は、エリシオさんの家に帰った。
『すいません。少し疲れたので、今日は眠ります。』
「…」「…」
エリシオさんもエリックさんも返事が無かった。何て言葉を掛ければ良いか分からないのだろう。僕は、その夜泣いた。声を押し殺して泣いた。強くなる。強くなるんだ…
僕は、次の朝早く起きた。
『おはようございます。』
「おはよう。何か吹っ切れたか…」
『僕は強くなりたい。エリシオさん僕を強くして頂けませんか。僕はもう失うだけの人生は御免です。』
「そうか…強くなりたいか…儂は、戦いの日々を過ごしてきた。お前さんにはそんな日々とは無縁の時を過ごしてほしいと思った。儂も、ゼクスもそんな戦いの日々を終わらせるために戦ってきたのだ…次の世代には、戦いの無い日を過ごさせるためになぁ…でも、その夢を叶えられなかった。辛い日々が来るぞ。そして、戦い続ければ失うものが出てくる。それでも前に進むか…」
『お願いします。』
僕の事を優しいと言ったステファニーの言葉を思い出した。力の無い優しさに一体なんの価値があるというのか。僕は守りたかった。全てを…。それには力が必要だ。何より、力の無い自分が許せなかったんだ。僕は無力だ…




