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クリスタルの記憶  作者: 遊人
第5章 クリスタルの記憶―幼少編―
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第055話 記憶の間(その6:濁流)

■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(5歳)


 僕は、これから死ぬのだろう。僕は、裏切られて死んでいくのか。いや、僕は、自分の意志で命を絶つのか。僕は、もう生きる事に希望が見いだせないでいた。そう、今の状況に絶望していた。気が付いた時は崖の下に飛び降りていた。そして、僕は川の中に落ちていった。濁流にのまれながら僕は意識を手放した。もう、生きる事に興味がない。生きたいとは思わない。もう、どうにでもなればいいだ。


■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(15歳)


 僕は、5歳の僕を見た。運命に流されるように濁流に飲まれている。その先に見えたのは戦場だった。ここがユーレリアの激戦区。そこで、僕は思いがけない人に出会う事になった。


■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(5歳)


『うぅ…』


「気が付いたか。坊主…」


『生きているのか。どうして生きているんだ。』


「何だ。その言い方は、お前は死にたかったのか。坊主…」


『分かりません。もう、どうして良いか分からないのです。』


「坊主。名前は何て言うんだ。」


『僕は、アルフォード・ウィンザーと言います。』


「ウィンザー…?まさか、フェリックスさんとこの坊主かい。」


『おじさんは誰…』


「俺か、フェリックスさんとは一緒に戦った中だ。エリック・ガドーだ。よろしく。こう見えてもBランクの冒険者だぜ。それで、坊主…フェリックスさんは息災か。」


 僕は、首を振って答えた。おじさんはそれにそうかと答えた。あえて、それ以上の事を聞かなかった。僕もその気遣いが嬉しかった。


「これからどうする坊主。行く当てがあるのか。」


『…』


「無いか。どうだ…俺の住む基地に来るか。」


『基地…』


「ああ。ここではそれ以上の事は話せない。もしかしたらお前が内通者だといけないからな。でも、俺はお前に合わせたい人がいるんだ。」


『はい。当てもないし…。これからの事をゆっくり考えたいので…。』


「そうか。」


 僕は、こうしてエリック・ガドーさんについて行く事にした。


 一緒についていくと、いきなり上位種である甲殻芋虫という固い甲羅に守られた15m級の敵が現れた。僕は慌てて、隠れた。


「坊主、隠れていろ。すぐに片を付ける。」


 そうすると腰から刃の無い柄だけの剣を2本だした。そうして、エリックさんは闘気を剣に込めると、闘気が剣の形になった。二刀流…両手で翼を広げるように剣をダラリとさせながら大型種に向かっていく。そして、直前に闘気剣オーラブレードを前に出して45度に合わせると、闘気と闘気がぶつかり、闘気部分の刃がビームのように伸びた。それが、甲殻芋虫を焼切るように裂いていく。これで勝負がついた。甲殻芋虫はあっという間に絶命した。


 エリックさんは凄く強かった。何でも超越者という上位の冒険者だそうだ。そして、戦い方も独特だった。この人の武器は柄だけの剣だった。最初は何の冗談かと思ったけど、闘気を解放する事で、闘気剣オーラブレードとして戦う戦闘スタイルをとっている。本人に聞くと、通常の剣は直に壊れるし、手入れが面倒だ。ズボラな俺にはこの柄だけの剣がお似合いだと言った。


 そうして、戦いを繰り返し、ようやく洞窟に辿り着いた。その洞窟は地下に掘られている昔の神殿の跡を利用して、基地にしている。


「ようこそ、俺たちの基地へ。」


 僕は、とりあえずエリックさんに連れられて、基地内を案内して貰った。居住区と冒険者が住む所が別々になっている。戦闘員と非戦闘員なのだろう。一通り、基地内を案内された後に僕はここの責任者に会う事になった。


「親父、今帰ったぞ。」


「この忙しい時に何処に行っていたこのバカ息子は…。」


「そういうなよ。親父。そのおかげで良いものを拾ってきたぞ。」


「良いもの…」


「入ってこい。上流から流されてきた。そこを助けた。名前を名乗れよ坊主。」


『初めまして、僕は、アルフォード・ウィンザーです。』


「ウィンザー…。もしやお前さんは…」


「ああ、親父…アレックスの息子だそうだ。」


「そうか。ゼクスの孫か…。」


『おじさんたちは僕の事を知っているの。』


「ああ、知っているとも。儂は、ゼクスともフェリックスと同じチームにいたのだ。イーグル・スピリット戦士団の守りの要と昔は言われていたよ。お前の父や祖父と多くの時間を共有した者だ…。あの時の儂は、多くの才能に恵まれた者と過ごした。それは今でもこの儂の心の中で生きている。」


『そうですか。』


「ああ」


 この人は強い、この人は温かい人だと思った。そして、家族が崩壊したあの日から一番安堵した瞬間でもあった。気付けば涙が出ていた。


■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(15歳)


 僕は、この人を知っている。この人は、イーグル・スピリットで、メインガードを務めた。エリシオ・ガドーさん。この人が生きていた。20年前にライオスを倒し、その後は行方不明の戦士団。その消息はいまでも多くの謎があると聞いている。この人がこんな所にいたなんて…。そして、ここで何かに対抗する組織を束ねている。それは、僕の父や祖父と何かの関係があるのか。祖父は生きているのか。エリシオさんは20年前の映像で30代前半だった。今の姿は、40代前半…いかにも強い人間の持つオーラを放っている。そして、僕はこの人の下で戦いを覚えていく事になる。そして、このエリシオさんこそが、僕の強さの秘密の鍵を握っている人物であった。

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