第054話 記憶の間(その5:裏切りの報酬)
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(4歳)
朝から僕は、ユーレリアの戦場に来ている。来ているといっても正々堂々と歩いている訳では無い。僕はこそこそと隠れながら進んでいる。そして、僕は冒険者の死体を探していた。
そして、3時間後に死んで時間が経った死体を発見した。剣と盾そして、バックがあった。
「おぇ…」
僕は、吐き気に見舞われた。これが戦場か。死体を見たら獣に体を裂かれた爪痕があった。こんな敵が、この辺にいるのか。僕はバックと武器を拾って帰路についた。
僕は、闇の武器商人を訪ねた。同じように合図を出すと闇商人が出てきた。
「坊主、生きていたか。」
『何とか。ここで戦うにはどの位のレベルが必要なんですか。』
「武器にもよるが、獣の類なら15位あれば、何とかなるかもな。今の坊主では多分敵わない。逃げる事で対応した方がいい。」
『そうですか。僕は剣と盾とバックを渡した。』
「上物だな。まぁ…ここいらで戦おうって奴はそれなりに腕のある冒険者だ。勘違いをした冒険者も偶にいる。そういう奴でないとやられないから、俺らにとっては貴重な存在だよ。それにしても、最初にしては良い者に巡り合えたな。お前は運が良いかもしれない。」
そう言って、鋼の剣と鋼の盾の値段である500Gと400G渡してきた。
『剣と盾。鋼の剣と盾は1500Gで取引されているはず。少し足元をみているのでは…。』
「そう言うな坊主。こっちは正規のルートではない。バイヤーを通してこちらも売らなければならないからな。これが精一杯だよ。気に入らなければ引き取ってもらって結構だ。こちらも在庫を抱えるというリスクも背負っている。」
『申し訳ない。それで結構です。それとバックの中身はどうでしたか。』
「今、見ているよ。バックの中に希望石と魔結晶があったぞ。それでは、魔結晶は7割で引き取らせて貰う。
魔結晶は700Gだ。坊主…バックはどうする。」
『バックとは…』
「このバックは冒険者専用バックでな。バックの中に魔法で物を整理して入れてくれる上物よ。剣や盾もこの中に入れて来れば目立たないし、何と言っても収納力と軽量化の魔法が施されている必需品だ。」
『そうですか。それなら僕が使いましょう。』
「分かった。それから魔法はどうする。」
『魔法…?』
「金があれば、魔法を覚えた方が良いと思ってよ。転移や回復、更に攻撃どれも金で買える。契約するなら金が必要だ。」
『転移と回復は幾らです。』
「そうだな。各300Gってとこだ。」
『分かりました。契約します。』
「毎度…」
そういうと魔法書から長距離移動と治癒魔法を契約した。契約するとクリスタルが輝いた。今日の儲けは1,000Gだった。少しは豪勢な食事にしよう。
小屋に帰ると兄に食事を渡した。兄は今日は豪勢だと言った。調子はあいかわらず良いとはいえない。調子が良くない時に栄養のない物を与えた事が更に厳しい状況にしていた。それも今日で終わる。
『兄さん、希望石がある僕と兄さんの分だ。これを融合する。』
「…」
多分だけど調子も良くなるはずだ…
あれから、1カ月がたった。兄も元気になっている。転移が出来るようになって、仕事がしやすくなった。戦いも経験したし、ある程度僕も逞しくなっている。レベルも17になっていた。
最近、兄が僕の仕事を心配している。そして、初めて兄と衝突した。確かに僕のやっている事は立派とは言えない。それでも兄を生かすためには必要だった。でも、その事は兄には言えない。それを知れば、自分自身の存在が僕に悪い影響を与えていると思うからだ。
あれから、毎日のように戦場に来ては、物を持ち帰っている。闇の武器商人から忠告された。
「お前は仕事をやり過ぎる。このような生活をしている人間は多い。お前のように強い訳ではないのだ。仕方なくなっている者もいる。餌場がなくなればどうなるか分かるか。少しは餌を現場に残せ。これはお前のための忠告だ。」
『分かった。1週間は様子を見ます。それでいいですか。』
「ああ。そうした方が良いぞ。これ以上、荒れた場合は俺もお前も危険になる可能性がある。」
小屋に帰ると兄さんから懇願された。もう危険な事はしないで欲しいと…僕はしたくてしている訳では無い。そう思うと苛立ってしまった。
『兄さん。僕だって戦いたくて、戦っている訳では無いんだ。兄さんが生きるためには、希望石がどうしても必要なんだよ。』
「…」
その1週間後に、僕たち兄弟は別れ離れになってしまう。これは運命の悪戯だった。この事も僕の人生を左右する大きい出来事になるとは僕は予想もしていなかった。
1週間後に、僕は再び戦場に行った。今日は何の成果もなかった。しかし、帰り際に盗賊に襲われた。多分であるが、縄張りの関係なのだろう。僕は、隙をついて長距離移動で逃げた。小屋に戻ろうとしたとき、小屋が燃えていた。
『兄さん…』
「僕は、兄を救おうとして、小屋に走った。それを止めたのは宿屋の亭主だった。心配だから顔を見にきたらこうなっていた。もう、遅い…。」
『兄さぁぁぁん…』
僕は、兄さんを守る事が出来なった。宿屋のおじさんは宿屋に来いと言われた。僕は泣きながらその後を何も考えないで付いて行った。そして、気が付いた時には遅かった。何時もの宿屋の方向で無い事に…
『おじさん…』
「お前がいけないのだ。お前が…。」
気が付くと前後に盗賊がいる。そして、左側は崖になっており下は川であった。
「俺は情報屋だ…宿泊する人間から情報を買ったり、売ったりして生計を立てていた。お前のお蔭で、商売上がったりだ…悪いがここで死んで貰う。」
『おじさん…』
「お前がいけないんだ。お前が…俺の好意を裏切り、仲間の仕事を取ったお前が…。」
結局、僕は何をやっていたのだろう。大好きな家族を守れなかった。唯一の家族である兄も守れなかった。そして、優しいと思った宿屋の店主に裏切られ、そして騙された。僕は生きる必要があるのだろうか…
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(15歳)
僕は、事の顛末を上空から見ていた…あの優しいそうな宿屋の主人が豹変した姿を…そしてキスリング兄さんは、火事になる前に目の前から姿を消した事を僕は知っている。いや、4歳の時の僕は知らない。まずい、このままでは…おい…やめろ…何てことを…




