第037話 偽りの邪竜
■クリスタニア大陸 竜宝山 アルフォード・ウインザー
「へぇ。すごい技を使いますね。業火の煌か。なかなか良さそうな技です。」
「上空に飛んで回避したか。とりあえずは及第点よ。」
そうすると彼女は更に業火の煌を上空に向けて放つ。僕はカウンターで業火の煌の攻撃力を計った。流石に主攻撃の技らしく15,000の攻撃力がある。これは危険と見て、18,000に力を調整して業火の煌を放った。そして、技が中間点でぶつかり、こちらの威力が大きいのか、そのまま謎の少女の傍に炸裂する。しかし、相手も自分の攻撃が相手に押されていると見るや回避行動を早めにとって攻撃を躱した。
「見かけで人は判断しない方が良いか。それにラーニングが使える。小癪にも私の技を真似よって…。」
『それはどうも…。』
「それでは、これはどうかな幻惑の霧。」
やれやれ、戦いには色々な事はつきものだが、4人にも5人にも見える幻惑を使ってくるとは…気配が察知出来ない状況であれば、惑わされるところだった。それでは、こちらもそろそろ全力で行きますか。剣を鞘から抜いて、雷属性の技を剣に直撃させた。そして、更にホーリーを発動すると剣の柄の部分にあるクリスタルが高速で回転する。そして黄色い粒子の光が放たれ、その光が剣に集まってくる。
次の瞬間、謎の少女は幻惑しながら僕に突っ込んできた。そして、彼女は闘気を解放して放った。僕は幻惑に囚われないように、実体をとらえ、ゼクスが使っていた技である。ライトニングブレイクで闘気を迎え撃った。彼女もこの技の体制に入った瞬間に危険を感じたのだろうが、闘気技を出し終えた瞬間に来たため、躱せなかったのだろう。上空で技と技の衝突の余波に巻き込まれて飛ばされた。そして、彼女は地面に体をぶつけて消えた。僕も闘気と技の余波をもろに受け、ダメージを負うが、次の瞬間にレストレーション2を使って、自分の意識を何とかキープした。そして、僕は地面に着地すると、少女が突然現れた。
「とりあえず、合格ね。」
『えぇ。あれを喰らったのに無傷ですか。』
「もともと、実体ではないからよ。」
『それにしては、実体と同じように攻撃をしていたし、なにより幻惑には戦闘力が無いはずです。』
「疑うのも無理はないわね。あれは、体の一部を使った分身体なのよ。」
僕は、彼女が消えた所に行くと、白い綺麗な鱗があった。そういう事か。あなたは聖母竜なのですね。
『どうして、聖母竜が邪竜の味方をするのです。』
「フフフ。もともと邪竜など存在しないからです。」
『それは、どういう事です。』
「もともと、私はここで子供を産むために来たのです。そして、卵を孵化させていました。人々はここを観光地にしようと集まった。このままでは、子供の生まれる環境に適さないのよ。欲望の影響を受けるとそれこそ邪竜になる可能性があるの。だからある程度成長するまでは、人が来ないようにするしかなかったのよ。」
『しかし、それでは生贄になった子たちは、人間はどうでも良いと言うのですか。』
「彼女たちは元気よ。この上で一緒に暮らしているわ。子供も5歳になったからそろそろ帰そうと思っていたところよ。」
『そうですか。それで、冒険者に幽霊を見せて追い払ったり、冒険者に試練を与えたのもあなたですね。』
「その通りよ。」
■クリスタニア大陸 竜宝山山頂 アルフォード・ウインザー
山頂に上がると、小さい竜がいた。小さいとっても、僕より遥かに大きい。そして、洞窟の中では生贄になった少女がいた。しかし、5年間も経っていたので、それなりに成長している。僕は、聖母竜に、アイデルフィアの状況を話した。町が衰退している事。そして、今年も生贄を出そうとしている事を説明した。そうすると聖母竜は曇った顔をした。竜もある程度の域に達すると人化できるようで、僕は人化した竜と話している。
そして、僕は聖母竜にある提案をした。それは、観光地の復活と生贄の解放。更にここの当主であるバルディス家との会合についてだ。聖母竜は、迷惑を掛けたと言って、それを了承した。僕は、聖母竜に、それでは、町に来てほしいと話すと、子供と離れる事は出来ないと言われたので、バルディス家の人をここに連れてくる事で話をした。それには理解を示した。あとは、バルディス家の出方次第となった。
■クリスタニア大陸 アイデルフィア バルディス家 アルフォード・ウインザー
僕は、三度、バルディス家を訪れた。そして、家族全員を集めて貰った。そして、これまでの経過を説明すると、セイリオスさんは僕の手を握ってありがとうと言ってきた。更に、ソフィアさんも嬉しそうにしている。母親のロージスさん、長女のエミリーさんも喜んでいる。しかし、当主であるセバスチャンさんは、うれしさ半分、困惑半分の顔をしていた。僕は、セバスチャンさんに、聖母竜に提案して事を話した。それには、町の復興も出来るのではと考えたようだ。早速ではあるが、使者を出す事になった。つまり、セイリオスさんを派遣する事になった。生贄の解放と観光地としての復活。そして、入山者の安全の確保など、いろいろ協議する事になったようだ。僕は、それではと言うと、今日はここに逗留して下さいと言われた。前回の逗留した時には疲れが取れなかったので躊躇したが、これも何かの縁かもしれないと受け入れた。
その後、この町は繁栄する事になる。観光地の復活。そして生贄の解放は問題なかった。入山者の安全については、聖母竜は感知しないとの返事だったが、ローランズでは冒険者が料金を取って生計を立てていると話すと、その考えが採用された。しかし、聖母竜に対して敵意ある行動をとった場合は、排除すると言われた。それには、バルディス家も納得し、共存共栄が始という。




