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クリスタルの記憶  作者: 遊人
第3章 クリスタニア学園―修行編―
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第031話 物語と脚本家

■クリスタニア大陸 アイデルフィア バルディス家 アルフォード・ウィンザー


 僕は今、セイリオスさんとソフィアさんのお宅に来ている。お宅と言っても豪邸だ。このバルディス家というのはこのアイデルフィアの町を設立した時の名家らしく、由緒あるお宅らしい。僕には関係の無い話ではあるが…。話を聞くと、この町は毎年、若い女性をドラゴンの生贄に捧げているようだ。ドラゴンが住み着いたのは遥か昔だが、それまでは聖竜と呼ばれる部類のドラゴンが住んでいたので、観光名所にもなっていた。そして、町もその影響を受けて成長をしていた。ところが、5年前に、邪竜と呼ばれる部類のドラゴンが聖竜を追い出して住みだした。それにより、町から明るさが消えた。そして、若い女性は町から去り、それに伴って若い男も町を出てしまった。それがきっかけで町は寂びれる一方になった。バルディス家は名家ゆえに、2人の娘がいても、この町から出る事を許さないという。そして、今年はこの家の次女であるソフィアさんが生贄の番らしい。先程のリザードマンに襲われなかったら、彼女は竜宝山に行っていたとの事だった。そして、彼女たちからすれば圧倒的な正義の味方が現れたという物語ストーリーが出来上がったのだが…


 それにしてもなんで、生贄を出すのだろうか。僕は不思議に思った。人の言葉が話せるのだろうか。それを要求されているのか。思い切って質問してみると、ドラゴンは知能が発達しており、念波で生贄を要求しているらしい。そして、この町はそれを黙って受け入れているのかという事も聞いた。冒険者ギルドにドラゴン討伐依頼として出しているようで、この5年で3組の戦士団が依頼を受けたらしい。なんでも犠牲者の霊が出たり、頂上付近では試練があるって話だ。それを聞いてから冒険者ギルドの依頼を受ける者がいないらしい。前回はDランク4人の戦士団が敗れている。この大陸ではCランク以上の冒険者は少ないとの話だ。なんでも討伐する魔物のレベルが他の大陸より弱いのが原因らしい。良いことではないかと思うのだが、高額依頼が少ない事が高ランク冒険者をこの大陸に留まる事を許さないのだという。


 そして、僕は今後の事を考えている。ドラゴンは強いのかという事だ。この依頼を受けた場合、僕が勝てば問題はない。もし、僕が負ければ報復はないのかという点が気になる。さき程、この町を見た。確かに若者がいない。そして、活気がない。だからと言って、この町の滅びを僕が早めてしまうのはどうかと思う。正直、こんな重い話を引き受ける気にもなれなかった。この先に魔人との戦闘があると思うとここで戦わなければならない理由はないからだ。僕は修行に来ている。ドラゴンとの戦闘はオマケ程度なのだ。敵わなければ撤退すれば良いい。その程度の考えだった。でも良く考えて、ちょっかいを出して、この町に迷惑を掛けたかもしれない。僕はどうすれば良いか分からなかった。ただ、この家の期待はかなりのものだろう。その時、僕に与えられた控室の扉がノックされた。


■クリスタニア大陸 アイデルフィア バルディス家 セバスチャン・バルディス


 ほう。感心な青年だな。ここにいるだけでも只者でない風貌だ。このような方がこの町に来てくれるとは、何かの天啓だろう。


「私は、バルディス家の当主でセバスチャンと申します。先程は、長男のセイリオスと次女のソフィアが助けて頂いてありがとうございます。」


『いえ。たまたま通りがかっただけですから御気にしないで下さい。』


「いいえ。そういう訳にもいきません。今夜は此処に泊まって下さい。食事も当方で用意致します。ごゆるりとして下さい。」


『分かりました。それでは、今夜はこちらに泊まらせて頂きます。』


 そうして僕は泊まる部屋に案内された。


■クリスタニア大陸 アイデルフィア バルディス家 アルフォード・ウィンザー


 意外な展開だ。普通であれば、ドラゴンの討伐を頼まれると思ったのだが…。ここの当主は、身内よりこの町の事を思っているのかもしれない。竜の討伐は成功すれば良いが、先程の懸念がある。そう思うとここの当主は町民の事を考えている人だと好感が持てた。ただ、父親としてはどうだろうか。あれこれ考えていると僕に与えられた部屋の扉がノックされた。誰だろう…


『どうぞ。』


現れたのは、セイリオスさんだ。


『何か御用ですか。』


「父と話したようですが、何かございましたか。」


何かを窺う様な物の言いようだ。つまりは、親の心子知らず。やれやれ、この人は何も分かってはいないようだ。個人的には気持ちは分かるが…


『いいえ。ここに逗留する事を進められただけです。食事も用意して頂けるそうです。』


「それだけでございますか。」


『それだけです。』


 彼は、落胆した表情を見せた。それもそうだろう。あの救出劇を見れば…そして、彼も彼女も僕に救世主としての物語ストーリーを思い描いた。ところが、当主である脚本家セバスチャンが動かなかった。それが彼の落胆に繋がったのだろう…

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