第028話 気配を探れ!!
■クリスタニア大陸 清流の森 アルフォード・ウィンザー
2日目の朝、アルタイドさんに連れられ、清流の森にある川の前に立っている。気配を察したければ、いろいろな事に気を使わなければならないとアドバイスを言われた。集中力する事。何より自然体になる事だと言われた。簡単に言われても何だかピンとこない。そして、アルダイドさんは川に石を投げた。
「見てみよ。石を投げて川に出来た波紋を…。石を投げた中心にお主がいたとして、波紋は広がりを続けているな。このまま何もなければ、直に消えていくじゃろう。」
今後は、石を2つ用意して、同じように川に投げ入れた。同じように波紋が広がっている。消える前にもう一つの石を投げると波紋はぶつかり、ぶつかった所の波紋は消えた。
「つまり、波紋がぶつかった所に何かが干渉してくると思えば良い。今のは、例えじゃ。お主を中心として集中する事じゃ。そうすれば、気配は感じる事が出来るだろう。じゃが、言葉で言うのは簡単じゃが、実戦する事は難しい。集中するには自然体になる事よ。気配を出す事なく自然体になる事じゃ。」
『理論的な事は理解しました。気配を察知するにはどうするのです。』
「ついて参られよ。」
『はい。』
そうして、僕は滝の傍につれて来られた。そして、轟音が声を遮る。そうするとアルダイドさんが念波で会話をしてきた。ここには、多くの動物や魔物がおる。この滝の傍で動物や魔物の気配を探れれば良いと言われた。
「自然体で集中することじゃ。」
『具体的にはどうするのです。この滝の音が五月蠅過ぎて何も聞こえないし、感じませんよ。』
「簡単じゃ。この五月蠅い元である滝の音を消せばよいのじゃよ。ホッホッホホ…儂が集中するところを見せるからまねられよ。」
そう言って、アルタイドさんは座禅を組み始めた。そして、小鳥の鳴き声が聞こえると言った。僕は半信半疑だと思ったけど、僕の上空を小鳥が嘴をパクパクしながら飛んでいるのを見て納得した。
■クリスタニア大陸 清流の森 アルフォード・ウィンザー
僕は、アルタイドさんと別れて2日が経過した。さっぱり分からない。耳に集中して座禅を組んでも滝の音が消えるどころか、五月蠅くて集中出来ない。やれやれだ。正直、この壁が越えられるか自信がない。それどころかその後の戦いを考えるとこの滝で過ごす事が不安と苛立ちに繋がっている。いかん、いかんな。僕はそう思って頭を振った。
目を瞑って、集中する。何も感じない。何もいないのではないかと思って上空を見ると、そこに大きい鷲の魔物が僕を狙っていた。やれやれだ。僕は偶然に気が付いたに過ぎない。今の僕は丸腰だが、この1月半の間にある程度の攻撃力は有している。僕はカウンターを装着して相手の能力を確認した。戦闘力は5,000程ある。これまで戦った中では、ずば抜けて強い相手だ。僕は詠唱を始めると、僕の両腕に魔法陣が現れる。更にターゲットという補助魔法を使った。これで躱される事はない。僕は、心の中で稲妻属性であるサンダーボルトを左手に発動し、更に、右手でウォーターカッターを発動して待機状態にしている。僕は飛翔魔法を使って鷲に向かって高速に動きながら攻撃した。上空でウォーターカッターを発動させ、翼の片方を切り落とした。更に、サンダーボルトを大鷲に向けて放った。敵はそれで絶命したのだろう、空中で希望石と魔結晶になった。僕はそれを空中で受け止めて着地した。
ふぅ。そうするとパチパチという拍手が聞こえる。後ろを振り向くとアルタイドさんが来ていた。そして念波で話してくる。
「ホッホッホ…凄いの、あの大鷲も敵ではないか。儂もあれには勝てるが、あんなにスムーズに勝つことは出来んな。余程、力の差があるのだろう。じゃが、力が均衡していれば、あのような戦いは出来ない。」
『やはり、そうですか。』
「まあ、お主に対抗できる者がそういるとは思わんがの。それでどうじゃ、気配の事は順調か。」
『駄目です。考えれば考えるほど、集中できません。』
「根を詰めてはいかんの。お主はまだ若い。そんなに急ぐ必要などあるまい。」
『…』
魔人の事は言わない方が良い。彼には強い魔物と言っただけなのだ。あえて、不安にさせる必要がない。更に、アルタイドさんは、どれ剣を使うようだが、剣の動きを見てやろうと言ってきた。僕はありがとうございますと言うと棒を渡してきた。どうやら模擬戦をするらしい。そうして、アルタイドさんは念波でこう言ってきた。
「儂をそのバトルカウンターで能力を読んでみよ。」
『分かりました。戦闘能力は7,350です。随分高い戦闘力ですね。』
「まあ、Dランクだからの。それなりに戦えるわい。じゃが、お主にはかなわないから戦闘力を7,350に合わせて模擬戦をしようじゃないか。」
『分かりました。魔法と闘気はどうしますか。』
「まあ、これは訓練じゃ。だから、魔法は禁止じゃ。出来れば怪我も御免じゃな。闘気は問題ないぞ。儂も多少は使えるからの。」
『分かりました。それではお願いします。』
僕は、最初に様子を見ている。相手の攻撃に対して、躱したり、攻撃の流れを受け流している。流れる剣技は、流石は熟練した冒険者を彷彿させるものだ。僕は関心しながら剣を出していた。
「どうした。攻撃してこないのか。」
『それでは、攻撃をしますよ。』
そうして、僕は相手に攻撃したが、軽くかわされた。それどころか、こちらの力を逆に利用して剣撃がくる。守る事だに集中していた時は対応できたのだが、攻撃する時の隙を突かれて何度か剣でダメージを受けた。そして、相手に打撃を与える事は出来ない。こうして1時間ほどアルタイドさんと模擬戦を行った。
「ここまでにするか。」
『ふぅ。ありがとうございました。』
僕は、ダメージと動き回った事で、肩で息をしていた。そして、その場に寝そべっている。それにしても疲れた。僕はその時に上空をボーと眺めていた。チッチと鳥の鳴き声が聞こえる。随分静かだなぁと思って、ふと我に返ると滝の轟音が聞こえてくる。あれ…そうして僕はアルタイドさんを見た。
「どうじゃ。何か分かったか。」
『はい。』
「お主は、迷いが沢山あった。そして焦りがな。最初に言ったじゃろ。自然体になる事を…。そして、各器官を集中する事じゃ。お主は耳だけに頼ろうとしたり、力んでいた。」
そう言って、アルタイドさんはニッコリと笑った。




