第027話 ローランズの案内人
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 理事長室 アルフォード・ウィンザー
僕は、理事長室で今後の事を打ち合わせた。あの映像を見てから1カ月が経っている。そして、アイオロス教官との個人指導は終えて、これからは実戦の中で自分自身の力を取り戻そうと考えている。クリスタニア大陸には3体の魔人がいる事が分かっている。どれも下位~中位の魔人であるとの事だ。この前のイーグル・スピリットが対戦した最強魔人と言われている存在ではない。それだけがせめてもの救いだ。
僕は最終調整のため、このクリスタニア大陸で最も過酷な場所を教えて貰った。そこは、竜宝山と呼ばれる竜の住む岩山だという。そこには、飛翔魔法で2日から3日かけて行くとの事だ。僕はここで3カ月間の間を過ごそうと思っている。まあ、生きていればの話になるが…。武器は、自分が最初に運ばれた時の物を使うつもりだ。マジカルガンナーは置いていく事にした。出来ればカウンターも置いていきたい処であるが、状況を見ながらの戦闘もしたいし、気配の対処しながらの戦いもしてみたい。そして、戦闘能力の程度とその時のダメージを計測するためだ。
理事長に挨拶を終え、アイオロス教官に今後の活動について報告している。長期討伐になる旨を説明した。アイオロス教官は頷いて僕を送り出してくれた。もしかしたら、帰ってこないと思っているかもしれない。アイオロス教官から哀愁を感じた。それと同時に教官から覚悟が伝わってくる。僕は教官に挨拶をして退室した。そして、向かったのはグレース先生のところだ。先生にはクリスタルの状況を確認して貰った。当初の予定だった半年という回復期間が大幅に短縮されている事が分かった。これなら後、3週間位でクリスタルは回復するのではないかとの事だ。これについては、野犬、森熊、ゴブリン、リバーオクトパス、リザードマン、魔力樹等の戦闘で得た希望石の融合によるものが大きいと思う。これまでの戦闘はアイオロス教官と供にしての戦闘だったので、非常に楽な戦いだった。これからは一人で総てを熟さなければならないだろう。その次に向かったのは、マリーさんの所だ。当分は指導員としての活動は出来ない事を伝えた。来たるべき戦いに向けて修行すると言うと、隊員の皆も応援してくれた。中には僕がこの町から離れる事に不安を持つ人もいる。それでも暖かく送り出してくれた。ちなみに、ギルドの支部長と行政府には理事長から報告して貰う事になっている。
■クリスタニア大陸 ローランズ アルフォード・ウィンザー
僕は、クリスタニアを出て、ローランズという町に来ている。ローランズは、今回の修行地に2番目に近い町ということだ。竜宝山には、竜が住んでいる。その他にも魔物がいるが、総てが中級くらいのモンスターだそうだ。竜以外は敵ではないだろうと思うのだが、竜宝山に入る前にアイオロス教官からは、ローランズにある清流の森に行って修行した方が良いと言われた。そこで、敵の気配を察知する術を学べと言われている。僕は、この町で清流の森の情報を集めた。そこは、魔物が生息しているという事もそうだが、大きな滝があり森の中に滝の流れが作り出す轟音があるため、敵の気配が感じられないと非常に危険な場所だという事が分かった。確かにここなら、敵の気配を察知するには打って付けだろう。町で干し肉や乾パンを買って準備をした。テントは持っていない。移動するのに邪魔だからだ。町の中を歩いていると観光案内所があった。この町の観光名所は清流の森だそうだ。危険なのではないかと思うのだが、人間というのは多少のリスクを背負って生きる事は問題ないらしい。案内人が熟練の冒険者であり、危険な場合は長距離移動で町に帰ってくれるため、リスクは少ないようだ。
僕は、清流の森を案内してくれる冒険者を雇うことにした。戦力にしようとするわけでもない。この冒険者がどのように敵の気配を察知するのかを見てみたいからだ。僕は、この町で一番ベテランの冒険者であるアルタイド・ベルトさんという方を雇った。この道25年らしい。その前は冒険者をしていて、Dランクまでなっているという。
「何時頃から清流の森に入るのかね。」
『そうですね。明日からお願いします。』
「分かった。でもお前さんは、本当に儂を必要としているのかね。」
『どうしてそう思うのですか。』
「お主が只者ではないからだよ。」
『…?言っている事が分かりません。』
「そうか。分からないか。それならそれで良い。」
■クリスタニア大陸 清流の森 アルフォード・ウィンザー
ザーーーという轟音が言葉を遮ってしまう空間にいて、案内人のアルタイドさんは、周りを警戒している。そして、何事もなく1日が過ぎて行った。聞いているより安全な場所だと僕は思った。
町に帰って、アルタイドさんにお礼を言った。その時に、思ったより安全ですねと言うと、アルタイドさんは訝しげな顔をしている。そして、彼はこう話を綴った。
「お主は面白いな。今日、安全だったのは、お主のせいだよ。ホッホッホホ…」
『どうして、そう思うのですか。』
「最初に言ったはずじゃ。お主が只者でないと…。」
『…』
「分かっていないようじゃの。お主の気配が強すぎるのじゃ。森の中の動物も魔物もお主には敵わない。だから警戒して出てこないのじゃ。お主は気配を抑えられるか。」
『ある程度、抑えられます。』
「どれ、抑えてみよ。」
『はい。』
「ほう。10以下に抑えられるようじゃな。この状態で森に行けば、魔物も出てくるはずじゃ。」
『なるほど、そういう事でしたか。残念です。一日を無駄にしてしまいました。』
「残念…無駄…どうやらただの観光客ではないようだの。この森で何をするきじゃ。良ければ聞かせてみなさい。参考になる事もあるかもしれんよ。」
『僕は、記憶を無くした冒険者です。戦い方も分からないのですが、気配の察知は出来ない。そして、これから強い魔物と戦わねばなりません。今の私は、未熟なのです。それを埋めるために竜宝山で修行を考えていました。それで、ここまで来たのですが、教官から竜宝山で修行する前に、清流の森で修行した方が良いとアドバイスを受けまして…』
「なる程、良い師がいるようだ。確かに、清流の森でなら気配を察する事を覚えるには打って付けじゃ。」
『そうですか。』
僕は、そうして2日目もアルタイドさんに案内を頼んだ。そして、気配を察するにはどうしたら良いかアドバイスをもらう事になった。




