第025話 恐怖心
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 屋上 アイオロス・グレイア主任教官
講義が終わると、各チームは自分たちに与えられた部屋に行った。そして、教室には私とアルフォード君の2人だけになっている。あの映像を食い入るように見ていた。彼は戦いの途中で何度も困惑した表情をした。それを見た私は、彼とこのイーグル・スピリット戦士団が無関係でない事を理解した。
彼は、考え込んでいた。そして、顔色も青白くなっている。理事長の話を彼が聞いているとすれば、彼はもしかしたら魔人と戦う事になるだろう。そうなった時に、この学園で魔人と戦える者は皆無だろう。我々は教官といっても無力な存在だからだ。理事長は戦えるだろうが、それでも足止め程度しかならない。これが現実だ。
我々も自分自身を鍛えなければならない事は承知している。そして、記憶が無い事もそうだが、魔人と一流の冒険者との戦いを見て、魔人の強さに驚愕してもしょうがない。この町の戦力として、冒険者は期待できない。それは、この町の付近で戦う敵は低ランクの魔物が主だからだ。行政府が所有している騎士団も団長は別にして、それ以外は学園を卒業した者が多い。そして、侵攻してくる魔物もたかが知れている。そうなると、王都からの派遣してくる者が中心として戦う事になるだろう。彼もそのサポートになる可能性はある。多分だが、派遣されてくる者では魔人は倒せない可能性が高いだろう。そうなると彼がメインで戦う事になる可能性が非常に高いと思う。彼は、教室を出て屋上に来ている。彼と話さなければならないだろう。
「どうかしたか。」
『アイオロス教官…講義の事を考えていました。』
「そうか。ES戦士団の話を前に聞いたろう。もしかしたらと思ってな。インテリジェンスカードを見せて貰った時に、ユーレリア大陸の戦場で登録したと書いてあったから調べさせて貰った。あの戦士団は至宝と呼ばれた戦士団で、多くの人々の希望だった。いや、人々だけではない冒険者にとっても希望だった。かれこれ、20年位前の話だ。君と話してもしかしたら、ゼクス・ウィンザーという戦士団長と君が関係者と思ってな。その時は、簡単に話せる話ではないと思って話さなかった。正直に話すと理事長が魔人が襲ってくる可能性を話さなければ、見せる積りではなかった。もう少し、調べてからと考えていたんだ。君の上達は、人の何倍も速い。だから、俺は常人と君を同じに考えるのはどうかと思ってな。それに、最近は壁に当たっていたろ。」
『分かっていましたか。』
「ああ。何か分かったかい。」
『はい。教官の想定通りでした。僕は、イーグル・スピリットと関係があります。あの映像で見た剣や黒い服と同じものを持っています。』
「そうか。鷲が獲物をとらえた紋章が入っているものを持っているとすれば、関係者なんだろう。」
『そうですね。僕は自分自身が分からない事も不安です。そして、魔人と戦うかもしれないと思うと不安になります。』
「怖いか。」
『はい。怖いです。正直に話すと、魔人に対抗するには、僕一人では足りませんよ。あの映像を見て頂ければわかるでしょうが、魔人の強さは普通ではない。そうだ。彼らに頼むことは出来ないのでしょうか。』
その言葉に、アイオロス教官は首を振っている。
「それは、出来ない。彼らは20年位前に行方が分からなくなっている。」
『そうですか。』
「君の気持も分かるよ。正直に話せば、俺自身も怖いからね。でも、俺自身は戦うつもりだ。たとえ、敵わないにしても、少しでも助けたいから…」
『…』
「君にはいろいろな選択肢があると思う。この学園に来て、孤立してるだろう。彼らを助ける義務などないしな。この町を出て、違う町に行くという選択肢もある。」
『…』
「君は、どうする。」
『分かりません。今は、自分の力を取り戻す事に力を注ぎたいと思います。その結果ですね。僕は、この町に来て、お世話になった人もいますから…』
「そうか。それと、この資料を君にも複製してあるから渡しておこう。何かの参考になるかもしれない。」
『ありがとうございます。』
そう言って、俺は屋上を出て教官室に帰って行った。彼は悩んでいるだろう。彼自身が望んだ訳でもないが、結果として彼に頼る事しかできないのだから…
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 屋上 マリー・シャロン(学園3年 第2チーム長)
屋上に見えたのは、1年生のアルフォード君とアイオロス主任教官だ。何やら深刻な表情をしている。チームは全員で、会議室で次の行動計画の立案をしている。次の計画は全体的なレベルを考慮して戦わなくてはならない。そう、この前のような失敗は出来ないのだから…
屋上で、アルフォード君と主任教官の会話を聞いてしまった。この町が魔人に襲われる。そして、イーグル・スピリット戦士団とは何だろうか。彼は一人では対抗出来ないと言っている。彼は魔人と戦えるの。どういう事なのか。その後に、教官は彼に町を出る選択肢を話している。それに彼は無言だった。それでも彼自身は、自分の力を取り戻そうと話している。いったい、この町に何が起ころうとしているのだろうか。
その後、教官と別れた彼に話しかけた。一人でいるなら我々のチームの会議室に来ないかと誘った。彼は指導員なのだから…
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 3年 第2チーム会議室 アルフォード・ウィンザー
妙な展開になっている。屋上で一人で考え事をしていたが、その後にアイオロス教官が来た。更に、その後にマリーさんが話しかけてきた。そして、今、僕は3年生のフロアの第2チームの会議室にいる。
会議室は、チーム全員でいろいろ検討するように円卓になっている。それにホワイトボードがあって、行動を記入し、それを作戦参謀が行動計画書にして、チーム長が学園の承認を取るのだろう。僕は孤立しているし、こういう会議室に入るのはこれが初めてだった。
ここで、彼女たちから質問があった。どこの1年生チームに属するかという話だ。この前の戦闘からどのチームでもチーム長になれると言われた。僕は、チームには属さず全チームのアドバイザー的な存在という取り決めになっていますと話すとそれはすごいわねと言われた。その後に、次の行動計画を聞かされて、アドバイスを求められた。どうやら、次の討伐はチームの平均戦闘力を確認して、ゴブリンの討伐になったようだ。僕は、単独行動だったから集団性のあるゴブリンの討伐ではなく、一対一で対戦できる依頼を受けた。それを思うとチーム戦なので、ゴブリン討伐は、自分のランクにあっていると思い。僕が思うところを述べた。チーム長も指導員が了承したと思ったのだろう。計画書に纏めるように作戦参謀に指示を出した。




