第021話 三者会談の結論
■クリスタニア大陸 クリスタニア 行政府 フレイヤ・ミッターマイヤー理事長
「リンツ参事官。彼はこの町に来て2週間しか経っておりません。素性は不明です。彼自身は記憶が有りません。冒険者のインテリジェンスカードには、5歳から戦闘経験があります。学歴は有りません。私は、彼の才能が当学園に良い刺激を与えると考え特待生として迎えました。」
それには、リンツ参事官も困惑した表情をしている。
「良い刺激?我々の務めは、町を守り、平和を目指すために存在するのだ。学生に刺激を与えるためではない。学生の育成方針も決まっている。不必要な刺激は、不安と焦りを生みかねない。それとも、その彼は我々が定めた育成方針を変えてまで、学園に必要な存在なのかね。」
「彼の存在は、何れこの学園や町に必要な戦力になると思います。」
■クリスタニア大陸 クリスタニア 行政府 ライアン・アラルコン支部長
「その彼というのは、アルフォード・ウィンザー君の事かね。理事長…」
「そうです。支部長は彼を知っているのですか…」
「知っておるよ…報告書も上がっている。」
リンツ参事官は訝しげな顔をしている。
「報告書?」
「参事官、理事長は学園の事もそうだが、町の治安についても考えている。それは私が保障しよう。彼を学園に入学させた事は良い事じゃ…」
「ほう…支部長は全てを知っているという事ですかな…」
「学園の入学前に、彼を事情聴取している。エドワルド・コナー調査官が調べたが、犯罪歴は無し…記憶もないが…」
「それで?」
「理事長、彼は静かに暮らしたいという事だろう。」
「はい。」
「町の治安の事もある。参事官よ…彼の事は内密に出来るか…」
「支部長がそこまで言うなら守りましょう。」
「それが良い。彼の機嫌を損ねさせる必要はない。彼は、国賓級で迎えなければならない存在だ…B+の冒険者じゃ…」
「それは確かに、町にとっても良い事だ。私も彼に会ってみたい。彼は静かに暮らしたいようだが、万が一の場合もある。その時には彼に頼むしかないケースもあるだろう。それに、周りも不穏な動きがあるようだ…」
それには、理事長は不安な顔をした。
「近隣の町が襲われている。魔人が魔物を使ってな…」
「しかし、町には結界があります。それに幻影を見せていて、魔物や魔人は町の存在は分からないはずです。それが分かるという事であれば、大変な事になる。」
「理事長、言いたい事は分かる。だが、魔人には知恵があるのだ…魔物を集団で動かし、危機感を町に与える。そして、騎士団を派遣させるのだが、多くの者を派遣すると町への痕跡を残す結果になりかねん。これまで、襲われた町も同様の手口で襲われている。つまり、魔人は何処かで騎士団の動きを観察しているのだ。そして、騎士団がいなくなったのを見計らって町を襲う事で、被害が大きくなっている。ここらで、被害を食い止めなければならない。」
「それは…でも彼のクリスタルは砕けています。そして、彼が彼自身の本来の力を発揮できない状況にある。ここで魔人と戦いに備えるのは危険です。我々は、彼の力を元に戻す事に専念するために素性を隠しているのです。」
「危機に関しては待ってくれない。魔人の勢力圏からは距離もある。我々の番が来るには、まだ時間的猶予がある。半年から1年というところだ。それに彼だけに戦えという事は言っていない。王都であるロックハルトに連絡し、派遣要請も出している。何人かの力を合わせる事になるかもしれない。この部分で戦力が集まれば、彼の出番はない。だが…万が一の時に備えなければ、知らないで戦うより、心の準備をして貰った方が良いだろう。それに彼の素性を隠し続ければ、嫉妬からこのような手紙が来ることになる。」
「確かに…町の治安を第一に考えるしかなさそうね。」
「そうじゃの…我々ギルドも彼をサポートしよう。それに、学園のアイオロス主任教官の指導を受けているようじゃ…時期に強さは得られる。当分は、嫉妬から雑念が入ると思うがの…それにアイオロス主任教官は我々にも知らない事を感ずいているかもしれん。」
理事長は、それには顔を顰めた…
「どういう事です。支部長。」
「ユーレリア大陸のギルドにある資料を取り寄せているようだ。彼なりに、考えているという事じゃろう。それにこれまで襲われた町は大きくない。対応した者もEランクだ。そもそも魔人とは戦えないレベルの者。王都もその辺を理解してくれれば、派遣する戦士団で対応が可能だと思うぞ…杞憂に終わる可能性もある。」
リンツ参事官に彼を合わせなければならない。来たるべき時に備えて…




