第108話 記憶の間(その20:ゼクスとの対話)
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(8歳)
僕は痣に聖なる光を発動した。そして、腕の紋章にも同じように聖なる光を発動する。
『それではお願いします。』
「分かった。それでは、鉄の輪にも聖なる光を与えるぞ。」
『はい。』
「どうだ。身動きは出来ないだろう。」
『はい。全然動けません。』
「よし、それなら問題ない。後はゼクスの意志に語りかければいい。」
『分かりました。』
こうして、僕はゼクス・ウィンザーの意思と対話する事になったんだ。
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(15歳)
『……』
僕は、何も考えられないでいた。まさか、父さんと戦う事になるのか。そして、至宝の戦士団であるイーグル・スピリットの2人の意志を引き継いでいる事を見ると、やはりこの先に待っている事は悲劇以外の何物でもないだろう。2人目の意志を僕は確認していない。なぜ、確認しないのか。僕自身がそれを否定したがっているからなのだろう。師匠…
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(8歳)
温かい…大いなる力を感じる。僕は必死に語りかけた。
『ゼクス・ウィンザーさんでしょうか。』
「……お前は誰だ。」
『アルフォード・ウィンザーです。』
「ウィンザー…お前の父はフェリックスなのか。」
『はい。私の父はフェリックス・ウィンザーです。』
「そうか。追われていかだが、何とか生き延びたか。」
『はい。』
「あの時は、ローラのお腹の中に子供がいた。それがお前なのか…」
『違うと思います。』
「違う?」
『はい。多分ですが、マックス兄さんだと思います。』
「そうか。兄弟は何人いるのだ。」
『はい。マックス兄さん、キスリング兄さん、僕がいて、その下に妹のエミリーがいました。』
「いました?どういう事だ。」
『天使の目という組織に…』
「殺されたのか…」
『はい。母さんとマックス兄さん、そしてエミリーが殺されました。マックス兄さんは僕とキスリング兄さんを強制転移で助けてくれました。』
「フェリックスはどうした。」
『父さんは、家族を守ろとして、その時は意識を失った状況でした。生死は不明です。』
「そうか…それで、キスリングという孫はどうしている。生きているのか…」
『……分かりません。あの後に生き別れてしまいました。多分、住んでいた処が火事になってしまっていたから…』
「そうか。お前も随分と苦労しているようだな。」
『……今は、エリシオさんとエリックさんと一緒に生活をしています。』
「エリシオとエリックと暮らしているのか。」
『はい。』
「エリシオは、お前に俺の意志を受け継ぐように言ったか。」
『戦う事を決意したのは自分自身です。エリシオさんもグラディさんも僕には普通の生活を望んだと思っています。ですが、僕は戦いを選びました。家族や友を守れなかった自分が許せないのです。』
「そうか。戦う事を決意したから、エリシオもグラディも俺の意志を継がせようとしたのだな。」
『そうだと思います。僕が自分自身の力に目覚めるまで待っていました。』
「それで、お前は俺の意志を継いで戦うというのだな。」
『正直な話をすれば、僕自身はあまり強くないと思います。今は下級魔人を相手にするのが精一杯なので…エリックさんは言っていました。敵の基地が分かったという事です。そこで戦うには僕が強くなる必要があるという事でした。僕は、天使の目がどうしても許せません。僕の家族を奪ったあの男が…』
「お前は、リーガル・ルーセントという人物に会ったのか。」
『その男に、母さんと兄さんたちは殺されたのです。僕は、どうしても強くなりたい。僕に力を貸して貰えませんか。お願いします。』
「……少し、考えさせてくれ。俺は、イーグル・スピリット戦士団を結成したのは、孫の世代までに戦いを終わらせる為に戦ってきたのだ。志半ばで夢は潰えてしまったが、俺はあの時の戦いを後悔していない。多くの魔人に追いかけられたよ。研究者は、殆どがクリスタルを持っていても能力はそんなに高くない者が多かった。それに、俺にとっては初孫だったしな。それらの者を守るために全力を出したのだ。孫の顔は拝めなかったが…」
『……魔人には敵わないのでしょうか。』
「いや、そんな事はない。作戦を立てて戦えば勝てる。私が敗れたのは実力ではない。物量の差だったよ。個人の力では負けてはいなかったと思っている。負け犬の遠吠えかもしれないがね。」
『物量ですか。』
「残念だが、魔人と冒険者には決定的な違いがある。酷似していても、時間制限が有る者と時間制限が無い者だ。これはなかなか覆せるものではない。1時間10分という時間制限は、冒険者の心理を狂わせるのだ。そこで考えられた技がクリスタルの融合と限界突破だ。」
『クリスタルの融合は聞いた事はあります。限界突破とは何なのですか。』
「そう、慌てるな。まずは、融合から説明する。クリスタルの融合は、2本までは融合が出来るとグラディは言っていた。それ以上は、元のクリスタルが融合に耐えなれないという事だった。それは分かるな。」
「分かります。」




