第107話 記憶の間(その19:密談)
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(8歳)
「ふう。なんとか間に合ったわい。危なく暴走するところだったの。流石に、ゼクスを抑えるのは骨が折れるからの…とりあえずは、電撃でも放って、意識を無くすしかあるまい。」
そうして、エリシオさん、エリックさん、ガレオンさんに取り押さえられて、僕は意識を手放した。
「アルフォードが気絶している間に話さなければならない事がある。」
「なんだよ。親父、急に改まってよ。」「そうですよ。何だか怖いな…」
「アルフォードから家族の事は聞いているな。」
「ああ。」「聞いています。可哀想に…」
「ああ。可哀想なのは、むしろこれからになりそうだ。」
「これから…」「どういう事ですか。」
「フェリックスは生きている可能性が高い。この聖域にクリスタルが戻って来ていない。」
「それは聞いている。でも、敵はクリスタルの回収をしているようだった。それなら、クリスタルが戻る場所を変えても不思議ではない筈だ。」
「確かに、お前の言いたい事は分かる。何かの目的があるのかもしれない。」
「ああ。敵の目的がこちらのクリスタルだとすると聖域に保管している物は魔人では近づけない。そうなると冒険者が必要になるだろう。もし、フェリックスが仲間を装って近づいてくる可能性もある。」
「…」「どうするのですか。そうなったら…」
「倒すしかあるまい。」
「親父、俺はフェリックスさんと戦える自信はないぞ。」「俺も同じです。」
「気にするな。フェリックスと戦えるのは、俺かゼクスだけだろう。まあ、お前たちに融合しているアレックスに、アルスの意志なら戦える。お前たちの気持ちに問題がなければだが…」
「まさか、アルフォードの中のゼクスさんとフェリックスさんを戦わせる事はないですよね。」
「ガレオンよ。その心配は無用じゃ。儂が戦うよ。グラディからもそう頼まれた。」
「…そうですか。」
「ああ。これは、イーグル・スピリット戦士団の仲間としてのケジメを付けなければいけない事だからな。生きているのは儂だけだ。」
「親父…」
「心配するな。もし、私に何かあれば、儂の意思はアルフォードへ引き継いでほしい。儂とゼクスの意志を受ければ、アルフォードは更に強くなるだろう。そうなれば、儂が中継してゼクスの意思もコントロール出来る様に協力するつもりだ。」
「親父…すまない。俺が身勝手に他の人間の意思を継いでしまったから、親父の意思を継げなくて…」
「もう済んだ事だ。クリスタルの強化には融合が一番手っ取り早い。若い時に壁に当たれば、そういう事もあるさ。バイアスは私の弟子の中でも優秀だった。お前が、バリアスとアルスの意思を継いでくれたのは嬉しい事だったよ。」
「親父…」
「まあ、先の事を気にしても始まらない。我々は嘗てない程の危機的な状況を迎えるのは間違いないのだ。それには、アルフォードの力が鍵となる。アルフォード自身には言わないが儂は彼奴が強戦士になる事を期待しているのだ。まあ、そうなって貰わねば困るがな。」
「親父、今日はアルフォードにわざと暴走させたな。」
「分かるか。本人には言えない事もあるのでな。」
「ああ。俺もそれには同意する。」「同じくそう思います。」
「何時までもアルフォードを寝かせておくのも可哀相だ。起こしてやるとするか。」
「そうだな。」「よく言いますよ。わざと暴走させたのに…」
「ハハハ。それは失敬…」
そうして、アルフォードに水属性の魔法を空中に出して、アルフォードに浴びせた。
『うぅう…』
「起きろ…起きるのだ。アルフォード。」
『うぅ。あ…すいません。如何したのでしょうか。』
「なに、力の調整に失敗しただけだ。暴走されては、敵わないから拘束具で予め抑制できるようにしたまでよ。そのための鉄の輪なのだ。それには、月光の力と同じ効果がある。まあ、力に目覚めれば、この程度では抑えられないが、今のお前なら十分と思ってな。」
『そうですね。まったくと言っていいほど動けませんでした。』
「そうだろう。」
『はい。それで、このブレスレットにも何かの効果があるのですか。』
「ああ。力の抑制が難しいだろ。その力の抑制を手伝ってくれる装備だ。」
『それなら、早く言ってくれても…』
「そう怒るな。今の暴走した感覚を良く覚えてほしいのだ。クリスタルを同調するのに、自分のクリスタルの躍動とゼクスのクリスタルの躍動と同じに調整する必要がある。ゼクスならお前の力を調整出来るが、今のお前ではゼクスの総ての力を引き出す事は出来ないだろう。」
『はい。そんな感じでした。それに、何というかこの力をなぜお前の様な者が受け継いだのかという感じです。』
「そうか。ゼクスらしい。それとも本気なのかもしれん。お前はゼクスの顔は知るまい。」
『はい。お父さんから名前は聞いていますが、逃亡生活の中で逃げる人たちを庇ったと聞いています。だから僕が生まれる前なので…』
「そうだな。天使の目の研究員や家族を守るために犠牲になった。でも、お前の心の中でこれからは生き続ける。そうだ、今夜にでもお前の意志を伝えたらどうだ。ゼクスもお前の事は孫だと知らないからな。それが分かれば協力的になるかもしれない。まあ、力を見せろ位は言われるだろう。」
『分かりました。それでは、今夜寝る時に力を使います。』
「分かった。ただし、その鉄の輪をつけて、力を発動させるからな。暴走されでもしたら敵わないからの。」
『分かりました。』
「今日は此れくらいにしておくか。」
『うーん。ただ、気絶しただけなのですが…』
「なに、力の抑制は簡単には出来ない。これは儂も、エリックもガレオンも通った道だ。だから気にするな。」
『はい。』




