第104話 記憶の間(その16:敵として現れたら…)
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト シャロン家 アルフォード・ウィンザー
うーん。寝た寝た。昨日の戦勝祝賀会は盛大に行われた。今日、僕はクリスタニアの町にマリーさんと一緒に戻る事になった。エストニア大陸へ行こうかと思ったけど、何も聖域に行かなくても魔人を復活させない方法があった。灰色クリスタルを暴走させれば問題ないと思ったからだ。クリスタニア大陸に魔人はいない。さしあたって、この暴走したクリスタルを必要としている魔人がいる訳でもない。
それに、よくよく考えれば、僕たちは、クリスタニアの覇者に赤いクリスタルを使った爆発に巻き込まれた。魔法で暴走したクリスタルを壊せるはずだ。魔人に向けて使う事も可能かもしれない。あ…それは止めよう。下手に使って相手を暴走させても意味が無い。クリスタニアの町に戻って、自分の部屋でゆっくりとしよう。そして、過去の記憶に干渉しよう。
そして、僕とマリーさんはクリスタニアに向けて出発する準備をすると、オスカルさんに声を掛けられた。
「随分と世話になってしまった。ロックハルトに来る時は遠慮はいらないからこの家を訪ねて来てほしい。私も、マリアも君を歓迎する。」
『分かりました。こちらこそ、お世話になりました。』
「そうだ。君の過去で有力な情報が分かったら教えてほしい。魔人との戦いは、これからも続くかもしれない。知らないより、知っていた方が良い事もあるからね。」
『分かりました。』
そして、オスカルさんとマリアさんはマリーさんと別れを惜しむ様に何かを話していた。そうすると、ビクター将軍とロックス将軍、ガルシア将軍、セレーナ将軍、ダグラスさんが僕を訪ねて来てくれた。そして、各々が別れをした後、僕とマリーさんは長距離移動でクリスタニアの町に帰った。皆さんは僕の事を戦友と言っていた。そうだ…命を懸けて共に戦ったのだから、僕も決して忘れる事はないだろう。
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 学園寮 アルフォード・ウィンザー
クリスタニアの町に入ると、マリーさんは学園に行くということだった。チームの様子を見るという事だった。僕は、何もないので、学園寮に戻ると言って、マリーさんと門で別れた。
さっそくだけど、休むか…僕は気まぐれの女神にホーリーを使って、記憶の干渉を依頼した。
「分かったわ。それとアルフォード…今度から私の事はメフィアでいいから…」
『メフィア…?』
「それが、あたしの名前だから覚えておいて…」
『名前があったのですね。』
「そうよ。でも、私は強いと認めない坊やには名前を教えないのよ。」
『という事は、少しは認めてくれたという事ですね。』
「うーん。ちょっと違うわ。あなたは、まだまだよ。でも、ゼクスからこれからはアルフォードを全力でサポートしてほしいと言われたからそうするだけよ。」
『分かりました。認められるように頑張ります。』
「それが良いわね。取りあえず私はアルフォード何て長い名前は呼びづらいから坊やと呼ぶわよ。」
『はいはい。』
「はいは一回で言いは筈よ。」
『はい。』
「良い返事ね。フフフ」
それでは、早速行ってくるか。僕は深呼吸して気持ちを楽にした。今度の過去には何が待っているのだろうか。僕自身で乗り越えなければいけない壁か…そして、連敗した理由は実力では無いという事だけど…そして、クリスタルの継承している3人の素性は、ゼクス・ウィンザー、そしてもう一人は、イーグル・スピリットのメンバーだった。だが、可笑しい…ガレオンさんもアレックスさんの意志を継いでいるし、エリックはアルスさんのクリスタルを継承しているはずだ。5―3=2か。
どっちを取っても僕の過去は悲惨な事になるだろう。それとも、エリックさんやガレオンさんの意志という事も有り得るかもしれない。やれやれ、受け入れなければならない事に一抹の不安を感じる。だが、もう過ぎ去りし過去なのだ。僕はそれらの総てを受け入れて、平和の為に戦わなくてはいけない。そろそろ眠くなってきた。
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(15歳)
記憶の中の僕も聖域の中で眠っていた。そして、グラディさんとエリシオさんが会話をしている。そして、僕はその会話に驚いていたというより、やはりと思わずにはいられなかった。
「エリシオよ。アルフォードには話していないが、ローラが死に、マックスが死んだ。そして、エミリーが死んだという。エミリーはクリスタルを入れていなかったから、儂らでは生死は不明だったが、アルフォードの情報だとどうやら死んだようじゃ。かわいそうに…」
「これも運命なのだ。我々は、そういう犠牲をもう出さないと決めたのだ。だから、魔人を倒し、元凶である天使の目を根絶する。そして、平和な世界にするのだ。」
「それは、我々も承知している。しかし、儂は怖いのだ。アルフォードを失う事だけは避けたい。このまま、大人しくここで生活してくれればと思っておったが…」
「もう言うな。グラディよ。我々も最初はそう思っていた。平和に暮らす事を優先させていたが、戦うと言ったのはアルフォード自身が決めた事だ。彼は、家族を友を救えなかった事を悔やんでいる。そして、守れるだけの力がほしいと言った。その時の目は男の目だった。だからもう言うまい。」
「ああ。だが、エリシオよ。彼の前に、あいつが現れたら守ってやってくれ。そして、戦わせないでくれ。頼む。」
「儂も分かっているつもりだ。エリックやガレオンにも話そう。フェリックスが目の前に敵として現れたら、私が彼を倒そう。今はそれしか言えない。」
「ああ。頼む。」
母さんが殺された事や兄さんが殺された事はグラディさんは知っている。でも、気絶した父の存在は話さなかった。多分、死んではいない。死んでいればここにクリスタルが返ってきているはずだ。そして、敵が回収した1個とは父のクリスタルなのだろう。そして、敵に捕らわれて帰ってこないという事は、洗脳されたか、何処かに幽閉されたか…相手は禁術法を使う組織だ…どのみち良い事はないだろう。




