第103話 謁見(その3:調査隊の派遣)
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト 謁見の間 セイリオス・ロックハルト5世
「宰相、謁見は中止じゃ…、文官、武官は会議室を用意して、会議形式をとる。そして、彼の発言を記録するようにしてくれ。その方が有意義になる。」
「分かりました。そのように取計らいます。」
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト 会議室 セイリオス・ロックハルト5世
意見があるものは、氏名を名乗るように…
「それでは、再開しよう。ユーレリア大陸のもう一つのクリスタルについて聞かせてほしい。」
『それには、戦っている敵の事を話さなければなりません。』
「戦っている敵か。例の天使の目という組織なのだろう。」
『そうです。そして、その組織の総帥はリーガル・ルーセントといいます。彼は200年前の人物ですが、この地殻変動が起こった原因を作った人物なのか、それが原因で何かを得たのかそれは分かりませんが、彼が元凶だと思います。』
「元凶…?200年前の人物が元凶と言うが既に死んでいるだろう。」
『それが、そうでもないようなのです。』
「…?」
『クリスタルタワーには先ほど話した聖域があります。その聖域に入ると歳をとらないのです。』
「そんな…バカな…」
『事実です。そして、そのリーガル・ルーセントという人物は、その聖域にいる可能性が高いのです。その聖域の中では、魔人の活動を無効化する力が有るようなのです。そして、その中では冒険者や騎士などはクリスタルを体の外に出しても消耗しない空間なのです。』
「……そんな場所があるのか。」
『そして、天使の目には、設立の歴史がありません。人間には寿命があります。だから研究にしても、歴史にしても、後世に残すために書き残すのですが、この組織にそれが無い。その人物が死なない存在だからと記憶の中の研究者は仮定しております。そして、僕は、このリーガル・ルーセントに過去に会っていました。」
「……会っている。間違いないのか。」
『はい。間違いありません。僕の家族を殺した人物なのですから…そして、その人物は魔人を傀儡として連れていました。だからユーレリア大陸には光のクリスタルの他に何かしらのクリスタルが存在するのではないかと思う理由です。』
「ば…ばかな…魔人を傀儡にしているだと…それは…」
『はい。魔人は、この天使の目という組織が何らかの目的のために作ったものだと…』
「作った…あれは人間の手に負えない代物だ…」
『ですが、魔人と冒険者は酷似しています。魔人も冒険者と同様に体の中にクリスタルとインテリジェンスカードが入っています。』
「宰相のオスカルだ。何のためにそのインテリジェンスカードを入れているのか。」
『何でも、魔人の中に入っている灰色クリスタルは、希望石と魔結晶と何かを混ぜ合わせる事で作る事が出来るという事なのですが、その何かというのは研究者も分かっておりませんでした。そして、天使の目に所属していた人物が作っていたらしいのですが、その人が忽然と姿を消えたという事で、灰色クリスタルを作る事が出来なくなったのです。だから、魔人が倒されると倒された場所や戦闘データを登録された場所に送る事で回収する者が現れるとの事です。今回の魔人を討伐した事で魔人の砦にデータが送られている可能性があります。』
「魔人を構成する核は作れないという事か。」
『そうみたいですね。だから回収に躍起になっているという事です。』
「もう一つ質問していいかい。」
『何でしょう。』
「なぜ、君の過去はそこまで天使の目の内情に詳しいのか。」
『私の母とお祖父さんは、天使の目でクリスタルの研究をしている研究員でした。そして、イーグル・スピリット戦士団は天使の目に所属した冒険者だったのです。』
「…そんな……」
『イーグル・スピリットは魔人を倒して、平和な世を目指しました。それには、魔人に有効な技を持つ組織に属する事が必要と考えたそうです。ですが、倒せど、倒せど魔人は減らなかった。むしろ、魔人は強くなったとの事でした。それは、冒険者に倒されたデータをその組織が回収して、改良したのではないかと…』
「歴史学者のオーベルト・シュタインです。天使の目が行っている研究とは一体なんですか…」
『天使の目には、1つ目の組織として冒険者が持つクリスタルの研究施設がありました。2つ目の組織として技や武器、禁術法の研究施設、そして三つ目として、不死の研究あるいは魔人の研究をする施設があったようです。三つ目の組織の研究は、他の2つの研究者には秘匿されていたそうで、確実にこれだという事は言えないそうです。』
「不死の研究という事だが、その聖域にいれば歳をとらないのでしょう。」
『はい。ですが、そのリーガル・ルーセントは聖域での生活に満足しなかった可能性があります。地上に感心を持ったのではないかと…』
「やはり、アルフォード殿は急いて、過去の記憶を取り戻す努力を優先してくれ。我々は、調査隊を各所に派遣する。そして、君の痕跡を追う事の手伝いもする。その方が解明も速いだろう。」
『お願いします。光のクリスタルには、僕のお祖父さんが研究をしています。グラディ・クライベルという研究者です。場所は、正確には分かりませんが、エリオットという町に川があり、その下流にある遺跡の像が光の聖域に入る扉になっています。』
「分かった。急がせよう。派遣先は、ユーレリア大陸、魔人の砦には、魔人のインテリジェンスカードがある可能性がある。その物的証拠を入手せよ。そして、クリスタルの捜索だ。魔人の砦と竜宝山の2か所だ。それとアルフォード君をエストニア大陸に転移出来る者は連れて行ってくれ。」
そうして、会議はお開きとなり、その後の戦勝祝賀会が開催される事となった。




