第101話 謁見(その1:恩賞)
■クリスタニア大陸 クリスタニア 冒険者ギルド アルフォード・ウィンザー
僕は、マリーさん、オスカルさんと共に冒険者ギルドのライアン支部長の葬儀に参列している。支部長は、人徳者なのだろう多くの人が参列し、多くの人が涙を流している。僕とはそんなに長い付き合いではないが、随分と協力的だった事を思い出す。僕は白い小さな花を棺に入れ、ライアンと最後の別れを済ませた。
その葬儀には、アイオロス教官、グレース先生、フレイヤ理事長、リンツ参事官も参列している。僕の噂はもうこの町にも流れている様で、参列している方の中には僕の方をチラチラ見る人がいた。どうもシックリこない。アイオロス教官には良くやったと肩を叩かれ、激励の言葉をかけられた。そして、グレース先生は落ち着いたら色々教えてほしい事があると言われた。戦闘の事を聞きたいのだろう。フレイヤ理事長は、浮かない顔をしていた。まあ、ライアン支部長とは長い付き合いだったのだろう。僕はそっとしておいた方が良いだろうと思った。
アイオロス教官から何時こっちに帰ってくるのかと言われた。それに対して、国王陛下に拝謁する事になっている事や戦勝祝賀会に誘われている事を話すとそうかと言われた。
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト シャロン家 アルフォード・ウィンザー
王都に戻ってきた。僕は再び、マリーさんの家にお世話になる事になった。なぜ、マリーさんまで王都に帰って来たのだろうか。折角、クリスタニアの町に帰って来たのに…。その事を話すと祝賀会に出席できるのは、戦いに貢献した者と文官、武官やその家族だけなの。だから、アルフォード君が暇にならないように話し相手として残ったのよと言われた。僕は何も言い返せなかった。
「アルフォード君は、国王陛下に拝謁するのよ。礼儀作法とか大丈夫なの。」
『えっと…分かりません。』
「でしょ。私が教えてあげるわ。」
こうして、拝謁する時に、王様がいいと言うまで膝を付いて伏すことや言葉使いの注意を受けた。そして、謁見や戦勝祝賀会の当日が訪れた。その日が来るまでに僕は宰相から頼まれた魔人の戦闘に関する戦闘詳報を提出している事は言うまでもない。
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト 謁見の間 アルフォード・ウィンザー
謁見の間には、武官と文官が両脇に立って並んでいる。その中には、武官側にビクター将軍やロックス将軍など顔なじみの者が並んでいた。僕は、城に入ると武器など持ち込みは出来ないという事で近衛部隊に預けた。そして、謁見の間に案内されて僕は膝を付けて伏している。その背後に近衛兵が付いた。万が一のための備えだろう。
それから5分後に、謁見の間に国王陛下、王妃、それと家族らしい人たちが入室してきた。
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト 謁見の間 セイリオス・ロックハルト5世
セイリオス国王陛下は驚いた顔をした。そして、宰相に指示すると椅子を出して僕に座るように進めてきた。
「英雄殿に膝を付けさせて待たせるなど、ご無礼をお許し下さい。」
『僕は構いません。』
「そうか。それにしてもお若い。失礼な言いようだが、クリスタニアの3魔人には、我々は煮え湯を飲まされたのでな…それをその方が全て倒してくれた事に敬意を表したい。何か、望む事があれば言ってほしい。」
『魔人の討伐は、僕だけの功績では有りません。ここにおられるビクター将軍、ロックス将軍、ガルシア将軍、セレーナ将軍にダグラスさんの6人で戦った成果です。何か望む物と言われても特にありません。』
「そうか。確かにここにおる者も戦いには参加したが、皆がこの功績はアルフォード殿の功績であると言うのだ。本来であれば、武功は争うものなのに、皆が自分の功績である事を否定している。余程の事があったのだろうと思ったのだ。それに、望む物がないか…アルフォード殿は無欲だな。だが、それでは我々の気がすまない。何かあるまいか。」
『…それでは、一つお願いがあります。』
「なんじゃ。言って見るがよい。」
『はい。僕は、クリスタニアの町で孤児院にお世話になりました。その孤児院の待遇を良くしてほしいのです。僕はこの方々にお世話になって、何も返せませんでした。孤児院の方々が不満を言っている訳ではありませんが、話だけでも聞いていただき。何かを求めるようであれば、それを私のお願いの一つにして頂ければと思います。』
「そうか。アルフォード君の事は、宰相にも聞いたが、真っ直ぐな人柄と聞いた。今回、戦いをした者も君の事を悪く言う者は皆無だった。そして、私もこの話を聞いて、爽やかな気持ちにさせて貰った。君の願いは聞き届けた。クリスタニアの町はリンツ参事官が全てを取り仕切っている。町の治安などに良い手腕を発揮していると聞いている。その方の願いはその者に確りと伝えよう。」
『ありがとうございます。』
「宰相とも話し合ったのだが、君が良ければこの王都に住まないか検討して貰いたい。待遇も将軍待遇で迎えたいと考えている。他の将軍もそれは良い考えだと賛同を得ているが、どうだろうか。」
『すいませんが、その申し出は辞退致します。』
「何故か。その理由を聞いても良いか。」
『私は、記憶を探しております。その事で、僕と強い繋がりがある場所はユーレリア大陸であります。僕はそこで、自分自身の過去を探したいと考えています。それが一つ目での理由です。』
「ほう。一つ目の理由か。他にも理由があるのだな。」
『はい。私の体の中には、クリスタルが3個継承されています。その1人は、イーグル・スピリット戦士団のゼクス・ウィンザーという人物で、僕のお祖父さんに当たります。その意志をついで、成し遂げなければならない事があるのです。』
「イーグル・スピリット戦士団の意思か…至宝の戦士団の意思を継ぐ者。それにクリスタルの継承か。残りの継承者について、アルフォード殿は分かっているのか。」
『一人は、イーグル・スピリット戦士団の誰かなのは分かっています。その確認をするために、自分のクリスタルに干渉しようと思います。過去の出来事が分かれば、記憶が断片的に甦ります。もう一人は、分かっておりません。』
「つまり旅をするという事か。」
『そうなると思います。』
そこで、国王陛下は真剣な顔をして、こちらを見ていた。何かあるのだろうか…




