不本意な共闘
高ぶる気持ちを抑え、平静を装って席に着く。残念ながら、先ほどの少女とは席はあまり近くなかった。彼女をチラチラ見ていると、
「よぉ」
隣から腑抜けた声が聞こえた。振り向くと、そこには俗に言うチャラ男のような感じの男が、隣の席にいた。
「あぁ〜あの子見てんのかぁ〜むっちゃ可愛いよなぁ〜」
そう言いながら、その男は肩を組んでくる。初対面の距離感とはとても思えない。人目がなければ腕を吹き飛ばしているところだが、これからは人間として生活しなくてはならないことから、甘んじて受け入れる。「あーそうだよな〜あの子可愛いよな〜僕は傘下兎凪っていうんだけど、お前さんはなんて名前なんよ?」
鬱陶しく思いながらも、テンションを合わせて話すように心掛ける。
「お前兎凪っつうのか?!俺鰻大好きだけどよ〜たまーに喉に骨突っかかるから、マジちょーダルいんよな〜ええっとそれで…なんだっけ…あぁ!俺の名前の話かぁ!あぁー俺はなぁ【釜倉勇天】っつうんだ〜よろぴく〜」
(いちいちねちっこくて、聞いててストレスな話し方だな。)
そう兎凪は思わずにはいられなかった。
(だけどまあ、人間として生活するには、やはり社交性は大切だよな。基本的に一匹狼で行動する異形とは違って、人間は集団で行動することがほとんどだし…やっぱ慣れねぇな)
彼は、慣れないながらも、等身大の男子高校生らしい会話を勇天と交わすこととなる。彼にとっては、その時間は勇天を嫌いになるのには、十分過ぎる時間であった。
ストレスを感じながらもしばらく雑談をしていると、教室の扉が開いた。感じたことのある気配が近づいていたため、まさかとは思っていたが、やはりそうであった。
「えーまず皆さん、ご入学おめでとうございます。私はこのクラスの担任を務めることになった、【神無月 真城】と言います。入試で手合わせをした人も何人かいるでしょう。普通の学校なら、ここから一人一人自己紹介…なんてことになるんでしょうけど、ここは極高。世界最高峰の魔剣士育成学校。うちのクラスは今から体育館で戦闘訓練を行います。全員5分以内に更衣室で体操服に着替え、魔剣を持って体育館に集合して下さい。1秒でも遅れた者は、私と訓練をしてもらいますよ。」
そう言って真城と名乗った教師は教室をあとにした。生徒たちは困惑しながらも、さすが極高に入学できた人間。予想外のことにも迅速に対応し、遅れた者は一人もいなかった。
「では、今から各チーム4人ずつで、団体戦闘訓練を行う。4人一組のチームで行い、メンバーは教室で近くの席だった者同士の4人とする。そして、計10チームで総当たり戦を行う。作戦を立てる時間は10分、1試合を8分とし、相手のチームを全滅させれば勝利。時間内に全滅させれなかった場合、人数が多い方を勝利とする。もちろん、ここの結果も成績に反映されるぞ。」
兎凪は正直乗り気ではなかった。同じチームに勇天がいるからである。
「う〜なぎ!俺たち同じチームだな!全員ボッコボコにしようぜ〜?」
勇天は馴れ馴れしくまた肩を組んできた。
(ほんとに喰い殺してやろうか…コイツ…)
そんなことを思っていたら、ほかのチームメイトらしき人物2人が声をかけてきた。
「あの、あなた達が私たちのチームメイト…ってことでいいんですよね?」
そう声をかけてきたのは、ザ・委員長といった感じの、凛とした雰囲気を纏う少女。そして、その後ろにはザ・委員長を盾にするように隠れ、こちら側を観察している少女。しかし、目が合った途端後ろに隠れられた。照れ屋というやつだろうか。
「おぉ!!君たちがチームメイトかぁ〜2人ともかわうぃいねぇ!!」
二人とも勇天の言葉に顔をしかめる。引いているようだ。
(良かった、二人は勇天を変なやつとして見ることができてる。正常な人間のようだ。異形の僕からみても、異常に見える勇天はなんなんだ。ほんとに。)
「と、とにかく自己紹介しましょうか。私は【京極 空美】。こっちの子は【村本 花咲音】。あなた達は?」
そう、空美と名乗った委員長気質の少女は言う。勇天はウキウキでねちっこい言葉を並べ出す。
「俺ぇ??俺はねぇ〜釜倉勇天っつうんだよ〜。んーで!こいつが兎凪っつうんだよ〜うまそぉな名前だろ〜コイツぅ〜?」
「お前はもう口を閉じろ。もう、一つ一つの言葉がネチネチしてて気色悪い。あと、話が上手く進まん。」
兎凪も、さすがに口を出さずにはいられなかった。そして、大きくため息をつく。しかし、兎凪はそれに気がついてしまった。
(そういえば、真城先生とやらは総当たり戦って言ってたよな。ってことは、あの美味そうな子とも戦うのか…あぁ…あぁ!!…うっかり食べちゃわないように気をつけなくちゃなぁ…)
勇天のせいで、テンションがめちゃくちゃ低くなっていたが、これに気が付くと、内心興奮がとまらなかった。ここでの戦闘は、彼女がどこまでの実力を持つのかを確かめる、いわば"味見"であるから。




