運命の相手
―――絶対に叶えなくてはならない夢がある。―――
この世界には【異形】と呼ばれる生物が存在する。異形は、人間を主食とし、不死身の再生力を持つ。個体によって見た目は様々だが、名前の通りすべて異形の形をしている。
奴らによって、人間が絶滅の危機に瀕したそんなとき、人間は異形を殺す術を生み出した。それは、【魔剣】。魔剣とは、【魔力】が宿った鉱石…【魔鉱石】から作られる剣のことを指す。これには、異形の不死性を抑制する力がある。また、使用者が自身の【魔力】を流し込むことで、その剣に宿っている魔術を発動することができる。
魔剣によって、人々は異形を殺すことが可能となり、人類は急速に成長した。今や異形による被害も年々減っており、大抵の人は平和に暮らせている。
そんな平和ボケした社会で、僕こと【傘下兎凪】は暮らしている。現在、中学3年生。
僕には夢がある。これを達成するためなら、命だって惜しくはない。その夢を達成するためには、この世界で1番の魔剣士育成学校…【極国魔剣高等学校】への進学が必須である。この学校に進学するには、学力試験はもちろんであるが、実技試験…魔剣を使用した戦闘試験もある。そのため、魔剣を持参し、その魔剣の魔術と持ち前の身体能力を駆使して、試験に挑む必要がある。しかし、兎凪は魔力を持たないそうだ。そのため、彼は持ち前の身体能力だけで試験に挑むこととなる。
そして訪れた試験当日。学力試験はおそらく合格であろう。兎凪にとっては楽勝であった。しかし、問題となってくるのは実技試験。極国の教師と模擬戦闘を行い、その戦闘の記録から合否を決定する。兎凪の番が回ってきた。教師と対面するやいなや、兎凪は警告される。
「君、魔力が全く感じられないね。魔力を抑えている実力者ならまだしも、魔力がないのに挑もうってなら辞退を勧めるよ。」
教師は真剣な眼差しであった。しかし、兎凪は少し笑みを浮かべる。
「確かに僕は魔力がないけど〜、実力には自身があるんすよ〜。」
兎凪の表情は穏やかであり、対して教師の顔は真剣そのものであった。しかし、教師は"それ"を感じ取る。
(へらへらしてるように見えるが、意外と隙がない。本人の言う通り、なかなか実力はありそうだな。)
そうして戦闘が開始される。兎凪は戦闘には負けたが、教師相手にいい戦いをした。彼は帰り道、今日の戦闘を振り返って…
(手加減上手くできたな…あれぐらいやれば合格だろ)
そう笑みをこぼしながら帰路につく。
後日、彼の家に届いた合否通知書は、予想通り合格と示されていた。彼はスマホを取り出し、どこかに電話をかける。
「もしも〜し、あーそうそう、ちょうどそのことについて連絡しようと思ってな。計画は問題なく進行中だぞ〜」
そこから、なにやら通話相手と雑談をして、彼は電話を切った。彼は不敵な笑顔を浮かべ、自身の愛用している魔剣に目をやる。
入学式当日、極高の制服に身を包んだ兎凪はワクワクした気持ちで極高の正門をくぐった。桜は満開から少し過ぎた程度であり、桜の花は散ってしまっているものもある。世界最高峰の魔剣士育成学校といえど、所詮は高校。入学式からのクラスへ行くまでの流れは、テンプレートのままで実に退屈であった。しかし、彼が入学式を終えて教室に入ったとき、
「?!」
一人の女子生徒が視界に入った。一目見て気がついた。彼女から目が離せない。彼女への想いが湧き上がってくる。これを運命とさえ感じてしまう。彼が彼女に抱いた想い、それは
―――彼女を喰いたい―――
その願望は、彼のココロを鎖のように強く縛り付ける。そして、心中で考える。
(彼女の気配、仕草、魔力…全て一級品だなぁ…人間は強いやつほど自信を持つらしいし、あの子のその自信を地に叩き落として、絶望させまくれば…その肉は、血は、骨は…めっちゃクソ美味いんだろうなぁ。あぁ…食べたい…喰い殺したい…)
そう…彼、傘下兎凪は…人間に擬態した【異形】であった。




