第二話 カノジョの秘密のセフレたち。
「じゃ、じゃあ、入れるぞ……?」
俺は、先ほどまでの野々花の発言を上書きしようと、覚悟を決める。
「うんっ──!」
嬉しそうな野々花の顔。
両足を左右に大きく開くと、露わになった陰部には、陰毛が生え揃っている。
テラテラと光る秘所。
俺は硬くなったモノにゴムを被せると、その割れ目にゆっくりと先端をあてがう。その瞬間。
するっ──。
「──ッ!」
何の抵抗もなく、ゆで卵の殻がツルっと剥けたときのようにあっさりと、俺のモノはカノジョのナカに呑み込まれた。
その充足感に浸るよりも先に、俺の思考は目の前の事実に翻弄されていた。この状況に至るまでの経緯。その理由を問いただす前に、野々花は取り繕うようにして言葉を紡ぎ始めた。
「じ、じつはさ……さっきまで、セフレとエッチしてて……アハハ……。
──あ! で、でも、海杜くんに呼ばれたから、急いで、そのまま飛んできたんだよ……??」
野々花は視線を泳がせながら、乾いた笑みを浮かべる。
俺の胸中に渦巻くのは困惑と、それ以上に抗いがたい焦燥感だった。ふと、脱ぎ捨てられたばかりの野々花の淡いブルーのショーツが、床に転がっているのが視界に入る。
その布地の中央、そこにはまだ乾ききっていない、ドロリとした白い液体がべっとりと付着していた。
「……あれって」
俺の視線を追い、野々花は自身のショーツを見つめ、頬を朱に染める。
「う……うん。セフレの精子……。なんか付いちゃってたみたい……あ、でも言っておくけど、一応、三十秒でシャワーを浴びて、セフレの家で急いで身支度だけはして来たから! 体自体は清潔ではあるはず、だよ……?」
その言い訳にもならない言葉を聞き、俺は思わず失笑してしまった。なんだよ、その某・宮〇アニメの名言を彷彿とさせるような、あまりに安直な言い方は。
俺はそんな思考の波をすべて忘却しようと、腰を激しく振りはじめる。
「あっ、あっ、あっ! か、海杜、くん……! は、激しい……っ 気持ちいいよぉ……っ!」
◇
「……で。結局、野々花のそのセフレって、誰なんだよ」
──ゴム越しに精を放った後。
息を整え、裸のままの野々花にたずねた。
もちろん、野々花の下腹部には、処女の証である破瓜の跡などは見られない。
「ご、ごめん……それだけは言えない、の……」
野々花は唇を噛み締め、俯いたまま首を横に振る。
「言えないって、なんでだよ……」
「だ、だって、教えたら、海杜くんと絶対に揉めちゃうでしょ……?」
そりゃそうだ。揉めないはずがない。
「じゃあ……俺の知っているやつなのかだけでも教えてくれよ……」
「…………」
野々花は答えない。ただ、揺れる瞳で俺を見つめ返すだけだ。
「ご、ゴメン……それも、言えないの……」
「どうしてだよ……?」
「だって……もし、海杜くんの知ってる人って言ったら、海杜くんの知ってる男子全員が、あたしのセフレに見えちゃうでしょ……?」
そりゃそうだ。
その言葉は、まるで呪いのように俺の心に深く刺さった。彼女の言う通りだ。これ以降、クラスの男子全員を疑うことしかできなくなる。
「……わかった。もう聞かない」
「よかったぁ……!」
心底ホッとしたような彼女。
まぁ、付き合えるならそれでもいい、のか……??
「あっ、海杜くんも、どんどん、セフレ作っていいからね……? 『お友達』はいっぱいいたほうが人生充実するんだから! あたしたちの結婚式にも呼びたいよね〜」
──セフレを結婚式に呼ぶとか、どんな強メンタルだよ……。
俺はどんなストロング缶より濃密で刺激的な野々花の思考に、ただただ眩暈を覚え、裸のまま天井を仰ぐのだった。




