表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグが見える悪役令嬢は溺愛から逃げられない  作者: 陽炎氷柱
第一本・フラグが見える悪役令嬢

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/6

05.メイン攻略対象

「あの、レオンハルト殿下……?」



 顔をこわばらせて、ミリーはレオンハルトの名前を呼ぶ。縋るような声に、レオンハルトは彼女の存在を今思い出したように顔を上げた。


 明らかに興味がなさそうな様子だが、やはり攻略対象がヒロインに注意を向けるのは怖い。豹変して、私を責め始めたらどうしよう。祈るような気持ちで二人のやり取りを見守るも、レオンハルトはびっくりするくらい顔色を変えなかった。



「君、もうすこし自分の魔力暴走を顧みた方がいいんじゃないか。リリーのおかげで穏便に収まったのに、妙な言いがかりをつけてミスを隠そうとするなんて」



 ちょっとメイン攻略対象がヒロインに向かって言うべきではない言葉が聞こえたような気がして、レオンハルトの顔を見上げる。

 ミリーもぎょっとしたように目を見開き、慌てて言葉を続けた。



「そ、そんな……!わ、わたしの話を聞いてくださいっ」

「この騒動のことか?」

「っ、はい!えっと、もちろん魔法を暴発させたわたしが悪いのですが……リリアーナ様はこっそり復讐しました!みんなが気づかないように、魔法でわたしに攻撃したんです。甘んじて受け入れるべきかとも思ったのですが、リリアーナ様は何もしていないと嘘をついたので……わたし、みんなのためにも負けちゃだめだと思って!」

「私は魔法なんて使ってないわ」



 流れるような嘘にたまらず否定の声を上げる。

 こんなずさんな話、誰も信じないと思いたいが……ミリーの頭上では破滅フラグが輝いているのだ。うっかり流されてしまう可能性は大いにある。

 焦る私を安心させるようにレオンハルトは優しく微笑むと、再び冷たい視線をミリーに向けた。



「おかしな話だな。今日は魔力測定で不正が出ないように、講堂に特別な結界が貼られているんだ。指定されたタイミング以外で魔法を使えば、先生たちがすぐに気づくはず」



 その言葉に、ミリーが初めて動揺を見せた。

 レオンハルトは冷たい目をしたまま口角を上げて、言葉を続ける。



「君は結界に問題があると言いたいのかな?それとも、公爵家が先生たちと繋がっていると?」

「……っ」



 魔力暴走を起こした手前、一流の魔法使いが貼った結界に文句を言ったところで鼻で笑われる。

 だが公爵家と先生の癒着を主張したところで、この場合は意味がない。だって先生を買収しているなら、わざわざこっそり魔法を使うまでもなく、最初から先生に頼ってミリーを処罰すればいい話だ。誰が見ても魔力暴走を起こしたミリーが悪いのだから、そうした方が楽だったはず。


 あらゆる視線が今度はミリーに突き刺さり、講堂が静まり返る。

 上手い言い訳が見つからなかったか、やがてミリーは根負けして頭を深々と下げた。同時に、真っ赤な破滅フラグもさらさらと崩れて空気に溶けていく。フラグが、折れたのだ。



「……ごめんなさい、どうやらわたしの勘違いだったようです。いろいろ起きて、混乱していました」



 絞り出したような言葉で、ミリーの声色から不服が伝わってくる。

 どうみても渋々と言った空気だが、大した被害もない以上、謝罪が出た時点で誰も追及できない。被害者である私が声を上げれば別だろうが、そんなことをしてしまえばまた変なフラグが立つかもしれないのだ。

 せっかく穏便に済みそうなのに、わざわざ自分から悪役令嬢になりたくない。



「きっと緊張していたのでしょう。ミスは誰にでも起きることだから、次は気を付けてね」

「……はい、ありがとうございます」



 あっさり許した私に、レオンハルトが何か言いたげな視線を送ってくる。

 気づかないふりをして、俯くミリーを回収する先生たちを見送った。しばらく視線が突き刺さっていたが、私が折れるつもりないのを察してレオンハルトは困ったように笑う。

 そして息を潜めて成り行きを見守っていた教師に向き直ったかと思えば、にこりと笑みを浮かべて私の肩を抱いた。



「すみません、婚約者の体調が心配なので、今日は先に退席してもよろしいですか?」

「は、はいッ!殿下とヘルナンデス嬢の実力はよく存じ上げておりますので、今はお体を大事になさってください!」

「ありがとうございます。俺たちに気を遣わず、入学式を続け構いませんから」



 魔法学園在学中、誰もが平等で身分は関係ないというが……相手は王太子である。若そうな教師が否を言えるはずもない。

 身分を振りかざすのは悪役令嬢的にどうかと思うが、あんなことがあった後でこの場に居続けるメンタルはなかった。色々あったし、という言い訳を自分にして、私はレオンハルトと共に帰ることを選んだ。


 それに、考えたいこともある。ゲームのヒロインが転生者で、今日の態度をみるに友好的ではない。しばらく様子を見て、ミリーの目的と性格を探った方がよさそうだ。



(向こうは私が転生者って気づいていなさそうだけど、わざわざ言う必要はなさそうね)



 私を極悪な悪役令嬢だと思っているからあの振る舞いとも考えられるけど、情報を開示するのはリスキーだ。原作をしらないと思わせた方がミリーの行動を予測しやすいし、できる限り隠していこう。

 今日は油断して危なかったが、次からはフラグに甘えないでちゃんと対策しよう。



「リリー、他にも何かされた?」



 考え込む私の前に、ふと影がかかる。ハッと顔を上げれば、心配そうに眉を下げたレオンハルトと目が合う。


少しでも面白いと感じていただけたら、評価やブクマをいただけると励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ