## 第五話 # 「王都へ」
# 『親孝行を法律にしたら、世界は少しだけ優しくなると思っていた』
## 第五話
# 「王都へ」
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「ミナト!」
朝早くから、ラグが家の扉を勢いよく開けた。
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「大変だ!」
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「どうしたの?」
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「王都から手紙だ!」
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ミナトは寝ぼけた顔のまま固まった。
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「……王都?」
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「王都」
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「王様のいる?」
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「王様のいる」
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「え?」
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「俺もえ?ってなった」
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ラグも困っていた。
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手紙には王家の紋章が押されている。
どう見ても本物だった。
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ミナトは恐る恐る封を開く。
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すると中には短い文章。
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> 異世界人ミナト・カナエへ
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> 王都議会への出席を命ずる。
>
> なお、親孝行を法律にしようとした件について詳しく説明されたし。
>
> レオンハルト王
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「最後の一文いる?」
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ミナトが真顔で言った。
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ラグは吹き出した。
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「王様も気になったんだろうな!」
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## ■エピソード①
## 「初めての旅」
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数日後。
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ミナトは王都へ向かう馬車に乗っていた。
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隣にはラグ。
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「なんでついてくるの?」
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「心配だからだ」
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「保護者?」
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「違う」
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「お父さん?」
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「違う!」
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ミナトは笑った。
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ラグは最近、よく笑うようになった気がする。
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道中。
二人は様々な街を通った。
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賑やかな市場。
大きな農地。
小さな村。
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そして。
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どこに行っても聞こえてくる。
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「あの異世界人らしいぞ」
「親孝行の人?」
「変な政治家?」
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変な政治家。
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「ひどくない?」
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「わりと事実だ」
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ラグは笑った。
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## ■エピソード②
## 「王都」
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数日後。
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巨大な城壁が見えてきた。
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ミナトは思わず立ち上がる。
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「うわぁ……」
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王都。
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それは村とはまるで違う世界だった。
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大通りには人が溢れ、
馬車が走り、
魔法の灯りが輝いている。
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「すごい……」
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思わず言葉を失う。
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ラグも少し誇らしそうだった。
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「王国一の街だからな」
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ミナトは目を輝かせる。
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しかし次の瞬間。
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屋台を発見した。
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「ラグ」
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「なんだ」
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「お腹空いた」
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「今かよ」
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政治家になる前に食欲だった。
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## ■エピソード③
## 「若き王」
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翌日。
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王城。
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大理石の廊下。
赤い絨毯。
巨大な扉。
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緊張する。
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ラグも緊張している。
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「帰りたい」
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「今さらだ」
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扉が開く。
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その先にいたのは――
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若い王だった。
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レオンハルト王。
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金色の髪。
穏やかな目。
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まだ二十五歳ほどに見える。
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「君がミナトか」
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優しい声だった。
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「はい」
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「親孝行を法律にしたいそうだな」
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やっぱりそこだった。
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ミナトは少し笑う。
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「はい」
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王も少し笑った。
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「面白い」
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周囲の貴族たちがざわつく。
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「面白いですか?」
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「久しぶりだ」
王は言った。
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「国のためではなく、人のための話をする者は」
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その言葉にミナトは少し驚いた。
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王は続ける。
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「だが理想だけでは国は動かない」
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「分かっています」
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「本当に?」
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ミナトは少しだけ考えた。
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そして答えた。
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「まだ分かってないと思います」
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王は目を丸くした。
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やがて笑う。
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「正直だな」
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## ■エピソード④
## 「最大のライバル」
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会議室へ案内されたときだった。
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一人の男が立っていた。
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銀髪。
鋭い瞳。
整った顔。
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ヴァルター・クロイツ。
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以前、議会で対立した若き貴族議員。
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彼はミナトを見る。
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そして一言。
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「また会ったな」
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ミナトも答える。
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「うん」
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「君の考えは変わったか?」
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「変わらないよ」
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「そうか」
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ヴァルターは静かに言う。
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「なら私は反対し続ける」
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空気が少し張り詰める。
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しかしミナトは笑った。
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「ありがとう」
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「何?」
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「反対してくれる人がいると考えやすいから」
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ヴァルターは初めて少しだけ困った顔をした。
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どうやらこの異世界人は、
思った以上に変わっているらしい。
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## ラスト
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その夜。
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王都の宿。
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窓の外には無数の灯り。
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ミナトは一人で街を見下ろしていた。
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村より大きい。
人も多い。
問題も多い。
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でも。
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だからこそ。
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「変えられることも多い」
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そう呟いた。
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その頃。
王城の一室では。
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レオンハルト王が静かに言う。
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「面白い娘だ」
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ヴァルターが答える。
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「危険な娘です」
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王は笑った。
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「それは否定しない」
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こうして。
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ミナトの本当の戦いが始まろうとしていた。
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## 次回予告
### 第六話
# 「議会の天才」
王都議会デビュー。
貴族たちからの集中攻撃。
次々と飛んでくる反論。
追い詰められるミナト。
しかしそのとき――
> 「じゃあ質問なんだけど」
異世界人の反撃が始まる。
優しさと理屈がぶつかる、初の本格議会バトル!




