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## 第三話 # 「初めての友達」

# 『親孝行を法律にしたら、世界は少しだけ優しくなると思っていた』


## 第三話


# 「初めての友達」


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「……で、泊まる場所は?」


ラグが聞いた。


議会を出た帰り道だった。


夕焼けが街を赤く染めている。


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ミナトは笑顔で答えた。


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「ない」


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「は?」


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「お金もない」


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「は?」


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「知り合いもいない」


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「はぁ!?」


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ラグは頭を抱えた。


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「お前どうやって生きてきたんだ!」


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「なんとかなる精神で」


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「ならねぇよ!」


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通行人が振り返るほど大きな声だった。


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ミナトは少しだけ笑った。


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「ラグさん面白いね」


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「面白くねぇ!」


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結局。


ミナトはラグの家に泊まることになった。


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## ■エピソード①


## 「ラグの家」


村は街から少し離れた場所にあった。


広い畑。


小さな家々。


ゆっくり流れる川。


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「おーい!帰ったぞー!」


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ラグが叫ぶ。


すると家の中から女性が出てきた。


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「おかえり」


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栗色の髪。


優しそうな笑顔。


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ラグの妹。


サラだった。


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「その人は?」


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「異世界人」


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「え?」


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「異世界人」


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「え?」


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会話が進まない。


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ミナトは頭を下げた。


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「ミナトです」


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サラは数秒固まったあと笑った。


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「まあいいや!」


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順応力が高かった。


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## ■エピソード②


## 「村の子どもたち」


翌朝。


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「お姉ちゃーん!」


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気が付くと子どもたちに囲まれていた。


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「異世界人なんでしょ!?」


「魔法使える!?」


「ドラゴン倒した!?」


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ミナトは首を振る。


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「全部違う」


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「えー!」


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子どもたちが露骨にがっかりした。


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「でも大学なら行ってた」


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「だいがく?」


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「勉強する場所」


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「つまんなそう!」


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全員一致だった。


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ミナトは少し傷ついた。


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「大学って人気ないんだな……」


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## ■エピソード③


## 「優しいおばあちゃん」


昼頃。


ラグの畑を手伝っていると、一人のおばあちゃんが歩いてきた。


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「ラグや」


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「おう、ばあちゃん」


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かなり高齢らしい。


杖をついている。


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「最近どうじゃ?」


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「元気だ」


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「そうかそうか」


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短い会話。


でもどこか温かい。


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ミナトはそれを見ていた。


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ラグが言う。


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「昔から世話になってんだ」


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「家族?」


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「違う」


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ラグは少し笑った。


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「でも家族みたいなもんだ」


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その言葉がミナトの胸に残った。


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## ■エピソード④


## 「政治より大切なもの」


夜。


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食卓にはスープとパン。


豪華ではない。


でも温かかった。


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「いただきます」


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自然と言葉が出る。


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サラが驚いた。


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「変な言葉だね」


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「私の故郷の言葉」


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「いい言葉」


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ミナトは少し笑った。


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そのときだった。


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ラグがぽつりと言う。


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「親父が生きてたらな」


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空気が少し静かになる。


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「働きすぎで倒れたんだ」


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ミナトは何も言わなかった。


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ラグは笑う。


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「親孝行なんて、一回もできなかった」


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その言葉に嘘はなかった。


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ただ後悔だけがあった。


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ミナトはゆっくり答える。


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「今からでもできると思う」


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「は?」


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「感謝することとか」


「忘れないこととか」


「ちゃんと生きることとか」


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ラグは黙った。


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しばらくして笑う。


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「変なやつだな」


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「よく言われる」


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二人は少し笑った。


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## ■ラスト


夜。


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外に出る。


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空には二つの月。


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ミナトは村を見渡した。


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今日一日で分かったことがある。


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議会だけじゃない。


法律だけじゃない。


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人が笑うこと。


ご飯を食べること。


誰かを心配すること。


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そういうものが集まって国になる。


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ミナトは小さく呟いた。


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「政治って、人の暮らしなんだな」


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風が吹く。


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その言葉を聞く人はいなかった。


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でも。


その考えが、後に王国を変える最初の一歩になる。


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## 次回予告


### 第四話


# 「泣いている少女」


村で出会った一人の少女。


彼女はなぜか学校へ行っていなかった。


笑わない。


話さない。


誰とも目を合わせない。


そしてミナトは知る。


この国には、見捨てられた子どもたちがいることを――。


優しさだけでは救えない現実が、ミナトの前に現れる。


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