表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クビになった冴えないおじさんがダンジョン配信を始めたら、なぜか登録者100万人超えてしまった件〜俺、実は最強だったらしい〜  作者: あっかんべー
第1章:異世界と配信とおじさん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/48

第9話 政府の機密資料を見た。おじさん、自分の正体にようやく向き合う

 場所は内閣府の会議室だった。


 窓のない部屋。長テーブルの両側に椅子。壁には大きなモニターが一枚。


 黒沢と早川が向かいに座っていた。


 俺の隣にはリオが座っていた。


ヒナとサクラは「なんで私たちは入れないんですか!」と入口で言っていたが、黒沢に「機密事項です。」と止められた。ヒナは「田中さんがいるのにうちがいないのはおかしいっ!」と主張していたが、最終的にサクラに引っ張られて外の廊下で待っている。


 「リオさんの同席は?」


 俺が言うと黒沢が頷いた。


 「神崎リオさんについては、父上の件もあり、当室でも把握しています。同席を許可します」


 リオが小さく息をのんだ。


 父上の件、という言葉に反応したのだろう。


 俺は黒沢を見た。


 「お父上の件、というのは?」


 「それも含めてお話します。まず——」


 早川がモニターを操作した。


 画面に、文書が映し出された。


内閣府ダンジョン対策室 機密指定 AA 級 【帰還者記録】

■ 確認済み帰還者数:国内 3 名 / 全世界 11 名(2024年時点)

■ 共通特性:異次元エネルギー保有 / 異世界言語の部分的理解 / 記憶の断片的保持

■ 最初の帰還者(国内):神崎誠一 享年 —— 失踪:2019年

■ 備考:神崎誠一は自発的に第十層深部へ向かい、以降消息不明


■ 新規帰還者(最新):田中武志

■ 異次元エネルギー保有量:測定不能(スケール超過)

■ 碑文解読精度:100%(既存帰還者の最高値は約30%)

■ 推定分類:《上位帰還者》——該当者は田中武志が初


 リオがモニターを見ていた。


 「神崎誠一」という名前のところで、目が止まっていた。


 動かなかった。


 俺は黒沢を見た。


 「…神崎誠一さんと言う方は、リオさんの父上ですか?」


 「…そうです」


 「失踪、とありますが?」


 「2019年、第十層の深部へ向かったまま戻りませんでした。捜索を行いましたが、痕跡も発見できませんでした」


 「…死亡した可能性は?」


 「……わかりません。ただ」


 黒沢が少し間を置いた。


 「第十層の深部からは、今も定期的にエネルギー反応が検知されます。生命反応に近い波形です。ただし、確認する手段がない」


 「第十層に誰も到達できないからですか?」


 「…はい」


 リオは、下を向きずっと黙っていた。


 俺はリオを見た。


 横顔が、固かった。


 泣いていないし、泣きそうでもなかった。ただ、何かを堪えているような顔だった。


 「…リオさん」


 「……大丈夫です」


 「大丈夫じゃなくていいですよ」


 リオが俺を見た。


 一瞬だけ、目が揺れた。


 「……父は、生きていると思っています。ずっとっ!」


 「そうですね」


 「向こうにいる、と…っ!」


 「そうかもしれません」


 リオが小さく頷いた。それだけだった。


 黒沢が咳払いをした。


 「…続けていいですか?」


 「どうぞ」



 早川がモニターを切り替えた。


 次に映し出されたのは、渋谷ダンジョンの断面図だった。


 地下に伸びる縦の構造。第一層から第十層まで、それぞれの深さと規模が示されている。


 そして第十層の下に点線で描かれた、さらに深い空間があった。


 「これは?」


 「第十一層です。公式には存在しないことになっています」


 「存在しないことになっている?」


 「観測データ上は存在が示唆されます。しかし第十層より下への到達記録がないため、公式記録には載せていない」


 早川が第十一層を指した。


 「そしてここに我々は《門》があると推定しています」


 俺はモニターを見た。


 点線の空間。その中心に、小さく「推定位置:門」と書かれていた。


 「第十一層は、第十層を通過しないと到達できません。そして第十層には——」


 「…ボスがいる?」


 「はい。我々はこれを《深淵の番人》と呼称しています。これまで挑戦した冒険者は全員、第十層に入った時点で撤退しています」


 「全員撤退、というのは?」


 「戦闘を続行できる状態ではなかった、ということです。詳細は言えません」


 早川の目が少しだけ暗くなった。


 何かを見たのだろう、と思った。直接か、報告書越しかはわからないが。


 「田中さん」


 黒沢が言った。


 「我々の情報は以上です。あなたにお聞きしたいのは、第五層の扉で見た映像の詳細と、《王の器》についてあなた自身が感じていることです」


 俺は少し考えた。


 「玉座の間で大勢が跪いていました。俺が中心にいて金色の衣を着ており、胸に紋章がありました」


 早川がメモを走らせた。


 「その映像は、記憶として感じましたか。それとも幻覚として?」


 「……記憶、だと思います。幻覚なら懐かしくありません」


 「懐かしかった?」


 「ええ。当たり前のことを思い出した、という感じに近い」


 早川が手を止め、黒沢が言った。


 「…田中さん、あなたは異世界の王族だったと、現時点でどの程度確信していますか?」


 俺は窓のない壁を見た。


 「……五割くらいです。」


 「五割?…残りは?」


 「残り五割は、ただの四十二歳の元経理です」


 黒沢が目を細めた。


 「それは謙遜ですか?」


 「本気です。スーツのクリーニング代が気になる人間が、王様だったとは思えないでしょう?」


 沈黙。


 早川が小さく噴き出した。


 すぐに顔を引き締めたが、肩が少し揺れていた。


 「……失礼しました」


 「いえ」


 黒沢がため息をついた。


 三回目だった。この会議に入ってから。


廊下 ——— ヒナ・サクラ 待機中


ヒナ(サクラに):何話してるんだろ?

サクラ(ヒナに):すごく大事な話だと思うわよ?

ヒナ:なんでうちじゃなくてリオさんなんだろ?

サクラ:リオさんのお父さんが関係してるんじゃないかな?

ヒナ:……そっか。

サクラ:ヒナ、素直じゃん!

ヒナ:うるさいっ!!



 会議が終わって、廊下に出た。


 ヒナがすぐに立ち上がった。


 「田中さん、何の話をしてたんですかっ?」


 「色々と」


 「色々って何ですか?」


 「第十一層のこと。それから俺の記憶のこととか」


 ヒナが目を丸くした。


 「第十一層って……そんなの存在するんですか?」


 「公式にはしないことになっているらしいです」


 「なってるって何ですか政府?」


 サクラが手帳を開いた。


 「第十一層に門がある、ということですか?」


 「おそらくは」


 「第十層のボスを倒さないと行けない、と?」


 「そうなりますね」


 「…田中さん、倒せますか?」


 「わかりません。まだ見ていないので」


 ヒナが腕を組んだ。


 「……倒せる気がします、田中さんなら!」


 「…根拠は?」


 「今まで全部倒してきたから!」


 「論理が甘い」


 「でも外れてないでしょ?」


 俺は少し考えた。


 「……外れていないですね」


 ヒナが少し得意げな顔をした。


 サクラが「ヒナが珍しく正論言った…」と小声で言った。


 「…聞こえてるよ?」とヒナが言った。


 リオはずっと静かだった。


 廊下を歩きながら、俺はリオの横顔を見た。


 「リオさん」


 「……はい」


 「第十層に行きます。そして、第十一層まで」


 リオが俺を見た。


 「……約束できますか?」


 「約束はできません。でも、行くつもりはあります」


 リオがしばらく俺を見ていた。


 「……それで、十分です」


 小さな声だった。


 だが、確かに届いた。



 その夜。


 配信を始めた。


 今日は珍しく、ダンジョンではなく自宅からの配信だった。


 カメラに向かって、ただ座っていた。


 コメントがすぐに流れ始めた。


自宅配信 — 同接:312,004


ガチ勢777:今日は家からか 珍しい!

エトウ:部屋が思ったより普通すぎる 六畳一間じゃん!

匿名A:壁に何も飾ってない 生活感ゼロ!?

ヒナ推し最前線:田中さん何か話してくれるのかな?

匿名B:スーツ着てる 家でもスーツなの?

新規:大丈夫ですか何かあった?



 俺はコメントを眺めながら、少し考えた。


 何を話そうか、正直決めていなかった。


 ただ、話したかった。


 誰かに。


 「……今日、色々と知りました」


 コメントが止まった。


 「詳しいことは言えません。機密が含まれているので」


 「ただ——」


 俺は右手を見た。


 「俺は、どうやらここではない場所から来たらしい、ということが、少しだけはっきりしてきました」


 コメントが一瞬止まって、そして溢れ出した。


同接:489,221 — 急上昇中


全員:自分で言った!!!!

ガチ勢777:「ここではない場所から来た」をご本人が認めた

エトウ:さらっと言ったけどとんでもない発言じゃん

プロ冒険者X:配信者が自分の正体を自分で言及するの初めて見た

匿名C:なんか泣きそうになった わからないけど

新規大量:今何が起きてるの?まとめどこ?



 コメントが流れるのを見ながら、俺は続けた。


 「ただ、それが何を意味するのかは、まだよくわかっていません。俺は今でも田中武志で、元経理で、無職で、スーツが好きで、コーヒーが薄いのが嫌いです」


 少し間があった。


 「それは変わらないと思います。何を思い出しても」


同接:601,882


ガチ勢777:「コーヒーが薄いのが嫌い」で笑った後に泣いた

エトウ:「それは変わらない」がなんか刺さった

匿名D:このおじさん、ずっとおじさんでいてくれ お願い

ヒナ推し最前線:ヒナちゃんこれ見てたら泣くやつ

匿名E:かっこつけないとこが一番かっこいい

プロ冒険者X:王様だったとしてもおじさんはおじさんのまま それが最高だよ

新規大量:登録した。全話見る。



 配信を終えて、スマホを置いた。


 登録者数:7,441,002


 七百万人を超えていた。


 自宅からしゃべっただけで、こんなに増えるのか。


 ネットというのはよくわからないな。


 俺は布団に横になり、目を閉じた。


 今夜は、なぜか夢を見る気がした。


 玉座の間の続きが、見える気がした。


 ——田中武志で、元経理で、現無職で。


 それが変わるわけじゃない。


 ただ、それに何かが加わるだけだ。


 どんな「何か」なのかは、まだわからない。


 でも——悪くない気がした。


 久しぶりに、そう思った。



【感動】田中武志の自宅配信が予想外に刺さりすぎた件 泣いた人↓


1 名無しさん : 「コーヒーが薄いのが嫌い」で笑って「それは変わらない」で泣くの感情の忙しさよ


2 名無しさん : 異世界の王様候補が六畳一間から配信してるのよく考えたら相当おかしい


3 名無しさん : 「ここではない場所から来た」を自分で言ったの、覚悟が決まってきた感じがした


4 名無しさん : 第十一層の存在が公式で否定されてるのに政府が知ってるって普通に怖い


5 名無しさん : リオちゃんの「それで十分です」が一番刺さった。お父さん……


6 名無しさん : 廊下でのヒナとサクラの会話、配信されてないのになんで知ってるんだよって思ったら作者視点だった


7 名無しさん : 登録者740万って一週間でどういうペースなんだよ 化け物


8 名無しさん : 10話が楽しみすぎて眠れない 次は何が起きるんだ

面白いと思ったら、コメント、フォロー、評価をお願いいたします!

とても、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ