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クビになった冴えないおじさんがダンジョン配信を始めたら、なぜか登録者100万人超えてしまった件〜俺、実は最強だったらしい〜  作者: あっかんべー
第1章:異世界と配信とおじさん

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第7話 おじさんは第五層で、何かが目覚めた

 第五層への階段を下り始めたとき、ヒナが足を止めた。


 「……田中さん」


 「はい?」


 「…その…この先は、ダンジョン管理局が立入禁止にしてるエリアです…。」


 「知ってます?」


 「知ってて来たんですかっ!?」


 「来てしまいましたね」


 ヒナが俺を見て、階段を見て、もう一度俺を見た。


 「……うち、田中さんと一緒だと判断力が狂う気がしますっ!」


 「それは困りますね」


 「困ってるのはうちの方ですよっ!」


 リオが先に階段を下り始めていた。


 「行きますよ~」


 サクラがカメラを構えて続いた。


 ヒナがため息をついて、俺の隣を歩き始めた。


 「……絶対に守ってくださいね?」


 小声だった。


 「…わかりました」


 俺も小声で返した。


 ヒナの耳がまた少し赤くなっていた。


配信開始 — 同接:502,117


ガチ勢777:立入禁止エリアに普通に入っていくの草

エトウ:「来てしまいましたね」って他人事みたいに言うなw

ヒナ推し最前線:小声で「守ってください」は卑怯すぎる

匿名A:ヒナちゃんの耳また赤い

匿名B:リオちゃんが一番乗りで階段下りてるの目的ある感じがする

プロ冒険者X:第五層、管理局が立入禁止にした理由が「深部から異常なエネルギー反応」だったはず やばい

新規:同接50万超えてるじゃん もう一般人の配信じゃない



 第五層は、今までと違った。


 壁の素材が変わっていた。

石畳ではなく、黒に近い暗灰色の岩。

表面がわずかに光沢を持っていて、光苔ではない発光をしていた。

青でも白でもない、金色に近い、淡い光が、壁の内側からにじんでいた。


 俺の右手が、反応して温かくなってきた。


 「……田中さん、右手が…!」


 リオが言った。


 見ると、かすかに光っていた。

壁と同じ色。金に近い、白い光。


 「…共鳴しているんですかね?」


 リオが静かに言った。


 「この壁の素材、父の資料に記述があります、《冥界石》。異世界側からのみ産出される鉱物で、《王の器》を持つ者に反応するとされているそうです…。」


 「君のお父さんは、詳しかったんですね」


 「……ええ」


 リオの声が一瞬だけ揺れた。


 俺は何も聞かなかった。


 そして、壁に手を触れてみた。


壁は冷たかった。石の冷たさのまま。

だが触れた瞬間、右手から光が広がって——壁の内側で何かが動いた気がした。


 脈動、のような。


 心臓の鼓動に似た、規則的なリズム。


 「……生きてるみたいだ」


 思わず口から出た。


 「田中さん、今なんて?」


 「…いえ。行きましょう。」


同接:641,009


エトウ:壁が右手に共鳴してるじゃん ここまで来ると完全に主人公的な力が覚醒しかけてる

ガチ勢777:冥界石ってなんだよ 設定が深すぎる

プロ冒険者X:「生きてるみたいだ」を流したおじさん 感性がおかしい

匿名C:リオちゃんの声が揺れた瞬間気になった 父親の話まだ全部してないよね

匿名D:サクラちゃんが全部カメラに収めてるのプロすぎる

新規大量:リアルタイムで見てるの震える



 奥へ進むにつれ、壁の光が強くなった。


 そして——魔物がいなかった。


 第一層から第四層まで、どの層にも何かしらの魔物がいた。だが第五層は静かだった。静かすぎた。


 「……モンスターがいませんね」


 ヒナが警戒しながら言った。


 「気配が全く感じません…。」


 「逃げたんじゃないですか?」


 「…何からですか?」


 俺は答えなかった。


 通路の奥に、扉が見えた。


 第三層のボス部屋と同じ鉄扉ではなかった。


 石造りの、巨大なアーチ。

高さは五メートルを超えており、左右の柱に文字が刻まれていた。


 俺は立ち止まって確認した。


 …読める。


 《此処より先は、帰還者の領域なり。器なき者、踏み込むことまかりならぬ》


 「……田中さん、読めますか?」


 リオが隣に来た。


 「…読めます」


 「何とっ!?」


 俺は読んだ。


 三人が静かになった。


 「帰還者の領域……」


 ヒナが呟いた。


 サクラがカメラを構えたまま言った。


 「…田中さん、これ、扉ですよね?」


 「そうなりますね」


 「開けますか?」


 俺はアーチを見上げた。


 右手が光っていた。


 壁の脈動と同じリズムで、右手が光の明滅を繰り返していた。


 ——思い出す時、すべてが始まる。


 碑文の言葉が頭の中に浮かんだ。


 まだ、思い出せていない。


 だが、扉の前に立ったとき、俺の体が知っていた。


 この場所を。


 このアーチを。


 何度もくぐったことがある、という感覚。


 「……開けてみます」


 俺は右手をアーチの中央に当てた。


 光が走った。


 柱の文字が全部、一斉に光り始めた。金色の光が通路を満たした。


 ヒナが目を細め、サクラがカメラを向けたまま後退した。リオは微動だにしなかった。


 そして——


 扉の向こうから、風が来た。


 ダンジョンの中に、風などなかった。


 だが確かに風だった。


 温かく、草木の匂いがした。


 花の匂いがした。


 知らないはずの匂いが——とても…とても懐かしかった。


『 速報 — ダンジョン管理局より緊急通知:渋谷ダンジョン第五層において異常エネルギー反応を検知。全層立入禁止を発令。現在当該エリアに滞在中の配信者グループとの連絡を試みています。』


同接:1,204,880 — 国内トレンド全席独占


全員:扉が開いた!!!!!!!!!

ガチ勢777:同接100万超えたじゃん どうなってんだ

エトウ:草の匂い 花の匂い これ異世界の風が来てるってこと??

プロ冒険者X:管理局が緊急通知出した 政府がリアルタイムで動いてる

匿名E:配信が歴史的瞬間になりつつある 震えてる

ヒナ推し最前線:ヒナちゃんたちの安全が心配すぎる

匿名F:リオちゃんだけ全然動じてないのなんか知ってるからだよな絶対

新規大量:ニュース見てきた テレビでも速報出てる



 風が止まった。


 扉の向こうは、暗かった。


 扉は開いてはいなかった。

 アーチに光が走っただけで、石の壁はそのままだった。


 まだ、開き切っていない。


 そういう感覚があった。


 「…田中さん」


 リオが言った。


 「これは予兆です。完全に開くには、もっと器が満ちる必要がありますっ!」


 「…満ちる、というのは?」


 「思い出すこと、だと思います。父が言っていました。帰還者は、記憶が戻るにつれて力が顕現していく。田中さんはまだ、何も思い出せていませんよね?」


 「……ほとんど」


 「それでもここまで開けれた!完全な記憶が戻ったとき、扉は——」


 リオが扉を見た。


 「——本当に開く、と思いますっ!」


 静かだった。


 ヒナが俺の袖を少しだけ引いた。


 「……田中さん、記憶って、戻りそうですか?」


 俺は右手を見た。


 光は消えていた。


 だが、右手はまだ温かかった。


 「……わかりません。でも…」


 「でも?」


 「この匂い、知っている気がします」


 「草と花の?」


 「ええ」


 俺は目を閉じた。


 草原。広い空。


 青とは少し違う色の空。


 「……俺は、あそこにいたことがあります」


 確信があった。


 記憶ではなかった。


 体が、知っていた。



【速報】渋谷ダンジョン第五層で扉が光った件 政府が動き始めた【テレビでも速報】


1 名無しさん : 今NHKのニュース速報にも出た 「渋谷ダンジョン深部で異常エネルギー反応」


2 名無しさん : 同接120万て何なんだよ 一個人の配信じゃないだろもう


3 名無しさん : 「体が知っていた」って言い方が鳥肌すぎる


4 名無しさん : 扉がまだ完全に開いてないってことは続きがあるじゃん 早く記憶を取り戻してくれ


5 名無しさん : リオちゃんが「父が言っていました」って言うたびに父親の話が気になりすぎる どこ行ったんだよその人


6 名無しさん : ヒナちゃんが袖引いたの可愛すぎて一時停止した


7 名無しさん : 黒沢と早川が今頃どんな顔してるか見たい 「ふーんと言った男が扉を光らせた」


8 名無しさん : 登録者580万突破 日本のダンジョン配信史上最速記録らしい

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