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クビになった冴えないおじさんがダンジョン配信を始めたら、なぜか登録者100万人超えてしまった件〜俺、実は最強だったらしい〜  作者: あっかんべー
第1章:異世界と配信とおじさん

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第6話 内閣府の人間と会った。おじさん、国家機密を『ふーん』で流してしまう

約束した通り、午後三時に内閣府の担当者が来た。


今度は喫茶店だった。俺が指定した。

自宅に上げるのは気が引けたし、向こうのオフィスに行くのも面倒だった。


 担当者は二人で、前回玄関の前にいた男たちと同じだった。


 片方が名刺を出した。


《内閣府ダンジョン対策室 主任研究員 黒沢健一》


 もう片方も名刺を出した。


《同 調査官 早川美咲》


 早川の方は、三十代くらいの女性だった。

眼鏡をかけて、髪をきっちりまとめている。表情が固い。

仕事ができそうな雰囲気がした。


 俺はコーヒーを頼んだ。


 「田中さん、単刀直入に伺います」


 黒沢が言った。


 「渋谷ダンジョン第二層の碑文が、あなたが入るたびに変化しています。これについて、何かご存知ですか?」


 「碑文の文字が読めました。」


 黒沢と早川が目を見開き顔を見合わせた。


 「……読める、とは?」


 「意味がわかります。翻訳するなら——帰還者よ、門はまだ開いている。汝が思い出す時、すべてが始まる。鍵は汝の血の中にある。器が満ちる時、門は開く、と書いてありました」


 沈黙が落ちた。


 早川がノートに何かを書き始めた。速かった。


 黒沢が前のめりになった。


 「田中さん、その文字を読める人間は、五年間の調査で一人も確認できていません。あなたはなぜ読めるんですか?」


 「わかりません」


 「わ、わからない、というのは?」


 「見たら読めたんです。なぜかは自分でも説明できません」


 黒沢がため息をついた。


 早川が俺を見た。


 「田中さん、もう一点確認させてください。あなたの戦闘映像を解析しました。右手から放出されているエネルギーの種類ですが、既知の魔力パターンとは完全に異なります。むしろ、ダンジョン内で観測される異次元エネルギーと酷似しています」


 「そうなんですか?」


 「そうなんですか、ではなくて——」


 「ふーん」


 早川が止まった。


 「……い、今、ふーんと言いましたか?」


 「あ、失礼しました。どうぞ、続けてください」


 早川が黒沢を見た。黒沢が小さく首を振った。


⚠ 内閣府ダンジョン対策室 機密指定A級資料より抜粋(非公開)

「田中武志 異次元エネルギー保有量:測定不能 碑文解読能力:確認 推定分類:《帰還者》 危険度評価:——未定義——」


 黒沢が資料を一枚、テーブルに置いた。


 「…田中さん、ここだけの話をさせてください」


 「どうぞ?」


 「ダンジョンの奥、第十層より深部には、私たちがまだ到達できていないエリアがあります。そこにあると推測される——ある構造物の存在が、各国の研究機関で議論されています」


 「構造物というのは?」


 「門、です」


 俺はコーヒーを一口飲んだ。


 「…碑文に書いてあったやつですね」


 「……はい。そしてその門を開けられる可能性がある人間が、この五年間、日本国内に一人もいなかった。田中さん…あなたが、その初めての候補者です」


 静かだった。


 BGMがかすかに流れていた。さっきとは別の、少し明るい曲。


 俺はカップを置いた。


 「…それで、俺に何をしてほしいんですか?」


 「協力をお願いしたい。国家プロジェクトとして、あなたの調査を——」


 「お断りします」


 黒沢が止まった。


 「……え」


 「国家プロジェクトとかは、あまり興味がないので」


 「田中さん、これは国の問題なんです!場合によっては世界規模の——」


 「…ダンジョンには自分のペースで入りたいので」


 「じ、自分のペース……」


 「…配信もありすし」


 早川が眼鏡を押し上げた。


 「…田中さん、もしかして配信と国家安全保障を同列に置いていますか?」


 「置いていませんよ?配信の方が今のところ大事です」


 早川が固まった。


 黒沢がため息をついた。長い、深いため息だった。


 「……田中さん、少し考えていただけますか?」


 「わかりました。考えておきます」


 「…本当に考えてくれますか?」


 「多分…?」


 黒沢の目が疲れていた。


 俺は少し薄いコーヒーを飲み終えた。



 翌朝の配信前、ヒナが開口一番に言った。


 「内閣府に国家プロジェクトを断ったって本当ですかっ?」


 「本当ですね」


 「なんで!?」


 「…面倒くさかったので」


 「面倒くさい!? 国家案件ですよっ!?」


 「配信の方が楽しいので」


 ヒナが俺を見た。信じられないという顔だった。


 サクラが横で静かに言った。


 「田中さん、ちなみに担当者がどれだけ困惑したか、早川さんが愚痴を書いた内部メモが漏れてます」


 「見たくないです」


 「『ふーんと言われた』と書いてありました」


 ヒナが噴き出した。


 リオが珍しく、小さく笑った。


 「田中さん、一つだけ聞いていいですか?」


 リオが言った。


 「門のこと、気になりませんか?」


 俺は少し考えた。


 「気にはなっていますよ?」


 「なのに断ったんですか?」


 「国に管理されながら動く気はないというだけで、門を探す気がないわけじゃないです」


 リオが目を細めた。


 「……自分で行くつもりですか?」


 「そのうちに」


 「そのうち…。」


 「配信しながら、自分のペースで」


 リオがしばらく俺を見ていた。


 それから、真剣な顔で言った。


 「……私も、連れて行ってください」


 「う、うちもっ!」


 ヒナがすかさず言った。


 「では、私も」


 サクラも言った。


 俺は三人を順番に見た。


 断る理由が特になかった。


 「……わかりました」


 「よしっ!」


 ヒナが小さくガッツポーズをした。


 なぜそこでガッツポーズなのかは、よくわからなかった。


配信開始 — 同接:428,341

ガチ勢777:国家プロジェクトを「面倒くさい」で断ったおじさん

エトウ:「ふーんと言われた」が内部メモに残ってるの草すぎる

匿名A:配信の方が国家安全保障より大事なおじさん好きすぎる

プロ冒険者X:でも「自分で行く」って言ったのは熱い 国に頼らず門を目指すルートじゃん

ヒナ推し最前線:ヒナちゃんのガッツポーズ可愛すぎた

匿名B:リオちゃんが「連れて行って」って言ったの何か裏がありそう

匿名C:サクラちゃん情報収集能力高すぎて怖い どこから漏らしてもらってるんだ

新規:三人が全員「連れて行って」って言う流れ良すぎた



 その日の夜。


 珍しく夢を見なかった。


 代わりに、天井を見ながらぼんやり考えていた。


 門。


 第十層より深部。


 俺がまだ行ったことのない場所。


 黒沢が言っていた、門を開けられる候補者が、五年間一人もいなかった、と。


 なぜ俺が開けられると思われているのか。


 王の器。帰還者。血の鍵。


 言葉が並ぶ。その意味はわかる。


 だが、まだ繋がらない。


 俺は目を閉じた。


 眠ろうとしたとき、右手がかすかに温かくなった。


 光ってはいない。ただ、温かいだけ。


 まるで——何かを思い出しかけているような。


 そのまま、俺は眠りに落ちた。


 夢は見なかった。


 ただ、眠りの底で、誰かの声がした。


 遠い。


 言葉がわからない。


 でも、その声を——知っていた。



【草】内閣府が田中武志の協力を取り付けようとして返り討ちにあったらしい


1 名無しさん : 「ふーんと言われた」が公式内部メモに記録されてるのヤバい 歴史に残る


2 名無しさん : 配信の方が国家安全保障より大事って言い切るおじさん ある意味最強


3 名無しさん : でも「自分で行く」発言でちゃんと目的持ってるのわかったから好感度上がった


4 名無しさん : 早川調査官がどんな顔してたか見たかった


5 名無しさん : 三人が全員「連れて行って」って言ったの良すぎる パーティー結成じゃん


6 名無しさん : リオちゃんの目的って結局なんなんだ 父親の件もまだ全部話してないよな


7 名無しさん : 眠りの底で聞こえた声 これ絶対異世界側の誰かだろ


8 名無しさん : 登録者今確認したら510万超えてた 化け物すぎる

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