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クビになった冴えないおじさんがダンジョン配信を始めたら、なぜか登録者100万人超えてしまった件〜俺、実は最強だったらしい〜  作者: あっかんべー
第2章:陰陽師とおじさん

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第43話 つきのとおじさんは、裏日本で大物と出会った。

 朝五時に、つきのからメッセージが来た。


 《田中さん、緊急です!起きていますか?》


 起きていた。コーヒーを作っていた。


 《起きていますよ》


 《今すぐ来られますか?裏日本に大きな妖怪が出ました。師匠が封じようとしましたが、一人では無理とのことで……。》


 《今から行きます》


 《……田中さん、今回は状況が違います。今まで出た妖怪とは、格が違う》


 《どのくらい違いますか?》


 《師匠が「五十年に一度の大妖だ」と言っています》


 《わかりました。神社に行きます》


 《ありがとうございます。田中さん——怖くなったら、言ってください》


 俺は少し考えた。


 《怖くないと思いますが、言います》


 《……やっぱりそう言うと思いました》


 コーヒーを飲んだ。薄かった。ヒナに連絡した。


 《今日、裏日本に行きます。つきのさんから緊急の連絡があって》


 しばらく間があった。


 《うちも行きます》


 《今回は危ないかもしれないので》


 《だから行きます》


 《……わかりました。神社に来てください》


 《よし》



 渋谷の神社に着いたとき、つきのと月峰師匠がいた。月峰師匠の顔が、今まで見た中で一番険しかった。


 「来たか」


 「来ました。状況を教えてください」


 「…《大禍津日》だ」


 月峰がその名を言った。


 つきのが続けた。


 「古い妖怪の中でも、最上位に近い存在です。怨念ではなく、もっと原始的な、破壊の衝動で動くものです」


 「鬼火とは違うんですか?」


 「根本的に違います。鬼火は成仏させることができる。でも、大禍津日は、成仏では対処できない。封じるか、浄化するかしかない」


 「浄化、とは?」


 「怨念ではなく破壊衝動なので、感情を受け取っても消えません。力で押さえ込んで、完全に浄化する必要があります」


 月峰が言った。


 「わしとつきのの術では、封じることはできる。だが、浄化するには、田中武志、お前の器が必要になる」


 「俺の器で浄化できますか?」


 「試したことがない。だが、三つの世界の力を持つ器であれば、可能なはずだ」


 「試したことがない、ですか……。」


 「それでも来てくれるか?」


 「行きます」


 月峰が少し目を細めた。


 「……度胸があるな」


 「度胸ではなく、放っておけないので」


 「同じことだ」


■《大禍津日》について(月峰師匠談)

裏日本に五十年に一度現れる上位の存在。高さ十メートルを超える黒い柱状の形をしており、触れたものを腐らせる力を持つ。普通の妖怪と違い、怨念を持たない。ただ破壊するために在る。陰陽師最大の難敵の一つ。


緊急配信開始 — 同接:2,114,004

ガチ勢777:大禍津日!!五十年に一度の大妖か

エトウ:「怖くなったら言って」にも「怖くないと思いますが言います」の田中さん

匿名A:試したことがないと言われても来た田中さん これが「放っておけない」

ヒナ推し最前線:お前が行ってどうにかなるのなら、行ってこい!



 裏日本に入った。

今日は、俺、つきの、月峰師匠、そしてヒナとサクラの五人だった。


 入った瞬間、空気が違った。


 赤い空が、いつもより暗く血の色から、炭の色に近かった。


 「……空が、いつもと違います」とヒナが上を見た。


 「大禍津日が近いからです。裏日本全体が、その影響を受けています」


 「……怖いですか?」


 「怖いです」


 「……正直ですね」


 「田中さんが怖くないので、うちが怖がっておかないとバランスが取れないので」


 つきのが少し笑った。


 「……ヒナさんらしいですね」


 「そうですよ。それがうちですから」


 「よかったです。怖くない人だけで来るより、怖がれる人がいた方が、緊張感が保てます」


 「陰陽師的な考え方ですか?」


 「そうです。怖いという感覚は、危機を正確に認識できているということ。それが術の精度を上げます」


 「……つきのさんは怖くないんですか?」


 「怖いです。でも、田中さんが来てくれたので、大丈夫だと思っています」


 ヒナが俺を見た。


 「……みんながそう言いますね」


 「そうなりますね」


 「田中さんって、本当に皆を安心させる何かがありますよ」


 「よくわかりません」


 「いつかわかります」



 黒い木々の間を抜けると、開けた場所に出た。そこにいた。《大禍津日》が。


 黒く柱のような形をしていた。高さは十メートルを超えていた。


 音がしなかった。


 揺れていなかった。


 ただ——在った。


 在ることで、周囲の木が枯れて、地面が黒く染まっていた。


 ヒナが息をのんだ。


 サクラがカメラを向けたまま、一歩下がった。


 月峰師匠が印を結ぶ。


 「田中武志、動くな。まず、わしとつきのが封じを始める。封じが完成したら——お前が浄化する。わかったか?」


 「わかりました」


 「……一つ言っておく。浄化のとき、お前の右手に今まで以上の力が集まる。それを制御できるかどうかが鍵だ」


 「…制御の仕方は?」


 「力ではなく、意思で制御する。どこに向けるか、何のために使うかを——はっきり思いながら放出しろ」


 「意思で制御するとは?」


 「お前なら、できる。今まで何度も、意思で動いてきた男なんだろ?」


 月峰がつきのを見て言った。


 「つきの、始めるぞ!」


 「はい、師匠!」


 つきのが前に出て呪符を複数、指の間に挟んだ。


 「《伏せよ、動くな、留まれ——大封の印》!」


 呪符が飛んだ。


 大禍津日の周囲に、光の輪が広がった。


 黄金色の光。これが陰陽師の術の色なのだろう。


 大禍津日が、初めて動いた。


 柱が揺れ地面が震えた。


 「……動いた」つきのが少し押されぎみに言う。


 月峰師匠が即座に補った。


 「《天地の柱よ、繋ぎ止めろ》!」


 大きな印を結んだようで、光の輪が強くなった。


 大禍津日が、また揺れ今度は、腕らしきものが伸びた。


 黒い、太い腕がつきのに向かってくる。


 だから、俺は前に出た。


 「つきのさん、下がってください」


 「田中さん、まだ封じが——」


 「下がってください」


 つきのが下がった。


 俺は大禍津日の腕を右手で受けた。三色の光が爆発した。


 白。金。橙。


 黒い腕が、光に弾かれた。


 消えなかった、だが——動きが止まった。


 「……力を持っている?」


 「…今のが「破壊」ですか?」


 「そうだ。感情がないだろう?ただ触れて、弾こうとした」


 「……怨念の成仏とは、確かに違いますね」


 「だから、感情に訴えても意味がない。力を正面からぶつけて、浄化するしかない」


 「封じが完成するまで、俺が受けます」


 「…一人でか?」


 「この腕なら、受けられます」


 月峰がしばらく俺を見た。


 「……つきの、急げ。田中武志の時間を無駄にするな」


 「はい!」


裏日本 — 同接:4,882,004

全員:大禍津日の腕を素手で止めた!!!

ガチ勢777:「つきのさん下がって」が1話のヒナへの「ちょっとすみません通りますね」と同じ構造

エトウ:ヒナちゃんの「怖がっておかないとバランスが取れない」が面白すぎて笑った

プロ冒険者X:意思で制御する浄化 田中さんの「放っておけない」という意思がそのまま武器になる

つきの推し:月峰師匠が「つきの、急げ」と言ったの師匠の信頼が詰まってる



 三分間、俺は大禍津日の前に立ち続けた。


 腕が来るたびに、右手で受けた。


 弾いた。


 三色の光が、何度も出た。


 大禍津日は感情がなく、俺が受け続けても、怯えなかった。


 疲れなかった。


 ただ——来る、弾かれる、来るの繰り返し、そして、また腕が来る。


 「……田中さん!」


 「封じ、完成しました!」


 光の輪が、完全になった。


 大禍津日の動きが、止まった。


 封じられた。


 だが——消えてはいなかった。


 「田中武志! 今だ!」


月峰が叫ぶ。


 「浄化しろ! 意思を持て! 何のために、どこに向けるかを明確に!」


 俺は右手を前に出し、三色の光が集まった。


 どんどん大きくなった。


 今まで出した中で、一番大きかった。


 「——何のために」


 俺は思った。


 「裏日本が静かであれば、表の世界が穏やかでいられる。表が穏やかであれば、向こうの世界への境界も安定する。全部が繋がっている——だから」


 「放っておけないんだ」


 右手の三色が、一つになった。


 白と金と橙が混ざって——新しい色になった。


 見たことのない色だった。


 強いて言えば——暁の色。


 まるで、夜明けの空の色だった。


 「……《浄化》」


 ただそれだけ言った。


 光が、大禍津日に向かって放たれ光が大禍津日を包んだ。


 黒い柱が、白くなり白から、金になって金から、橙になった。


 そして——消えた。


 黒い染みだった地面が、元の土に戻っていく。


 枯れていた木が、すぐには戻らなかったが原因は取り除けたようだ。


 静寂。


 「……消えた?」とつきのが呟いた。


 「浄化されたんですね」


 「そうだ」と月峰師匠が静かに言った。


 「田中武志、大禍津日を浄化した陰陽師は、記録に残っている限り——五百年で三人だ」


 「そうなんですか?」


 「お前も記録に付け加えてやる」


 「元経理で入れてもらえますか?」


 「……「元経理の田中武志」で入れるやる」


 月峰が、珍しく声を出して笑った。


同接:7,114,882 — 歴代最多更新

全員:浄化した!!!!!!大禍津日を!!!!!!!!!

ガチ勢777:三色が混ざって暁の色になった瞬間 新しいフェーズが始まった感じがした

エトウ:「放っておけない」を意思として浄化に込めた これが田中さんの本質的な強さ

匿名A:「元経理の田中武志で入れる」で月峰師匠が笑った このシリーズで師匠が声出して笑ったの初めてでは

プロ冒険者X:五百年で三人の記録に入った 田中武志の名前が陰陽師の歴史に刻まれた

ヒナ推し最前線:ヒナちゃんが後ろからずっと見てた 田中の背中が好きそうな顔してたな…。



 帰り道、つきのが俺の隣を歩いた。


 「田中さん、今日の光——あれは何でしたか?」


 「また、新しい色が出ました」


 「暁の色でした。三色が混ざって……」


 「そうなりましたね」


 「師匠が「暁の器」と言っていましたよ。後ろで」


 「暁の器?」


 「夜明けを作る器。三つの力が一つになったとき、新しい何かが生まれる——その器だ、と。師匠もよくわからないと言っていました。記録にない現象だと」


 「……記録にないことが多いですね」


 「田中さんは記録を更新し続けていくからですよ?」


 つきのが少し間を置いた。


 「……今日、ありがとうございました。師匠が封じを完成させるまでの間、一人で受け続けてくれた」


 「つきのさんの封じが完成したから、浄化できました。つきのさんこそ、ありがとうございます」


 「……二人でできました、ということですね」


 「そうです」


 「……うれしいです。師匠ではなく、田中さんと二人で戦えたことが」


 「俺も、心強かったです。つきのさんの封じがなければ、俺の浄化は当てられませんでした。チームワークです」


 つきのが少し目を細めた。


 「……田中さん、「チームワーク」という言葉を使ったのは初めてですね。いつもは「みなさんがいたから」とか「全員のおかげ」という言い方をします」


 「それは全員のときの言い方です。今日は二人だったので」


 つきのが笑った。


 「……使い分けているんですね」


 「自然にそうなっていました」


 「それは、つきのちゃんへの特別な言葉ですよ?」


 後ろからヒナが言った。


 「……ヒナさん、聞いていましたか」


 「聞いていました。でも、それがうちの感想です」


 「…………そうですか」


 つきのの耳が、少し赤かった。


 「……ヒナさんって、時々こういうことを言いますね」


 「そういう人です」


 「……ライバルとして、強敵です」


 「そうですね」とヒナが少し得意そうにした。



 表の世界に戻った。

 渋谷の朝だった。朝の光が、建物の間から差し込んでいた。


 「……朝になっていました」とヒナが空を見た。


 「裏日本にいた間に、夜が明けた」


 「そうですね」


 「朝の空、きれいですね。……今日の光の色と、少し似ています。田中さんが出した暁の色と」


 「そうかもしれません」


 「田中さんの中に、夜明けがある、ということですかね」


 「詩的ですね」


 「たまには言います」


 月峰師匠が俺を振り返った。


 「田中武志、一つ、礼を言っておく。五十年に一度の大妖を、お前が浄化した。これが記録に残る日が来るとは、わしも思っていなかった」


 「試したことがない、とおっしゃっていましたよね」


 「そうだ。だが、お前は、初めてを怖がらない男ようだがな」


 「……知らなかったので」


 「知らなかったから、できた、か。だが、お前は成したんだ。」


 月峰が頷いた。


 「……また来い」


 「来ます」


 「次に来るときは、もっと大きい仕事がある。裏日本の根に眠っているものを——起こす仕事だ」


 「それは、記憶の鍵に関係しますか?」


 「関係する。むしろ——それが鍵になると考えていいだろう」


 月峰が歩いていった。


 つきのが俺を見た。


 「……師匠が先に言ってしまいましたが」


 「構いません。楽しみにしています」


 「楽しみ、ですか?」


 「次が、見えてきたので」


 つきのが微笑んだ。


 「……田中さんと一緒に戦えて、よかったです」


 「こちらこそ。いいチームワークでした」


 「いいチームワークでしたね!」


 ヒナが俺の隣に来た。


 「田中さん、コーヒー飲みに行きませんか?あのお店に」


 「あの美味しいコーヒーのお店ですか?」


 「そうです。朝から開いてるので。つきのさんも来ますか?」


 ヒナがつきのに聞いて、つきのが少し驚いた顔をしていた。


 「……いいんですか?」


 「もちろんです。ライバルとして、仲良くするのは大事ですよ!」


 つきのが笑った。


 「……はい。よろこんで」


 三人で、朝の渋谷を歩いた。


 空がオレンジだった。


 それは、暁の色。


 今日の戦いで出した光と、同じ色だった。



【神回】「元経理の田中武志」が陰陽師の五百年の記録に入った件と暁の色が生まれた件

1 名無しさん : 三色が混ざって「暁の器」になった瞬間 王の器・天の器の次の段階が来た


2 名無しさん : 「放っておけない」を意思として浄化に込めた 田中さんの言葉が本当に力だった


3 名無しさん : 「チームワーク」という言葉をつきのちゃんにだけ使った ヒナちゃんが「特別な言葉」と解説してくれた


4 名無しさん : 五百年で三人の記録に「元経理の田中武志」で入る 月峰師匠が声出して笑った


5 名無しさん : ヒナちゃんがつきのちゃんをコーヒーに誘った ライバルとして仲良くするの強い


6 名無しさん : 「知らなかったから、できた。それが一番の力」という月峰師匠の言葉が田中さんへの最高の評価


7 名無しさん : 次が「裏日本の根を起こす仕事」と師匠が示した 三つ目の記憶の鍵への前振りが完璧


8 名無しさん : 登録者3600万突破 暁の器の誕生に世界が反応してる

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