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クビになった冴えないおじさんがダンジョン配信を始めたら、なぜか登録者100万人超えてしまった件〜俺、実は最強だったらしい〜  作者: あっかんべー
第2章:陰陽師とおじさん

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第41話 おじさんは夢で見た。右手が三色にまた光った

 三色の夢を、また見た。


 白。金。橙。


 三つの光が混ざって、渦を巻いていた。


 その中に——扉があった。


 今まで見たどの扉とも違った。


 大きくなかった。


 むしろ、小さかった。


 人が一人通れるくらいの扉。


 だが、その向こうから来る気配が、今まで感じたどれとも違った。


 これまでよりも古く重かった。


 ダンジョンの深部でも、異世界の草原でも、裏日本の赤い空の下でも感じなかった、もっと根本的な何かだった。


 夢の中の声が言った。


 「——全ての根に触れた者よ、汝が三つを繋ぐとき、第四の扉が開く」


 また、同じ声だった。


 「……誰なんですか?」


 俺は夢の中で聞いた。


 「——汝が思い出す時、がくる」


 「…また思い出す系ですか?」


 「——そういうものだ」


 「そういうものじゃないですか、というのは俺の言い方なのですが?」


 「——知っている。汝から学んだのだから」



 そこで目が覚めた。


 既に日が昇り朝になっていた。


 夢の中で見た光を思い出し、自分の右手を見た。


 三色がゆっくりと消えていくところだった。


 「……夢の中の声と会話できるようになっていた」


 独り言を言った。


 それが一番の驚きだった。



 コーヒーを作りながら、先程の夢のことを考えた。


 「汝から学んだ」という声。


 俺から学んだ、ということは——俺のことを知っている何かが、向こうにいる。


 ダンジョンを設計したのは二十年前の俺だ。


 異世界への扉も、第十二層の扉も、俺が作った。


 だとすれば——第四の扉も、俺が作ったのかもしれない。


 あるいは、もっと前から存在していたものに、俺が気づくのを待っていたのかもしれない。


 コーヒーを飲んだ。


 …薄い。


 「……神崎さんを呼ぼう」


 俺は言った。


 《今日、来られますか。第四の扉について話したいことがあります》


 三分で返信が来た。


 《すぐ行きます》


 《今何時だと思っていますか?》


 《六時です。起きていましたよ?》


 《…早くないですか?》


 《昨日の考察が気になって眠れませんでした》


 《……研究者ですね》


 《リオに同じことを言われました》



 一時間後、俺の家に神崎誠一が来た。


 腕の中には、ノートを四冊抱えていた。


 「…なんか、昨日より一冊増えました?」


 「昨夜考察を追加したので」


 「六畳一間に二人なら、余裕がありますね。どうぞ、入ってください。」


 「そうですね、失礼します。」


 神崎誠一が座ったので、コーヒーを渡した。


 神崎誠一がコーヒーに口をつける。


 「……やっぱり薄いですね」


 「薄いですよ」


 「でも美味しい」


 「日本のインスタントコーヒーですから」


 「…そうですね」


 六畳一間男二人で薄いコーヒーをすするのは、これはこれで風情を感じるものがる。一息ついたところで俺が話を始める。


 「…本題に入らせてもらいますね。まず、第四の扉の話をします」


 「お願いします」


 俺は昨夜の夢を話した。


 声の内容。三色の光。小さな扉。「汝から学んだ」という言葉。


 神崎誠一が聞きながら、書き続けた。


 「……「汝から学んだ」か」


 「気になりましたか?」


 「非常に。田中さん、一つ仮説を聞いてもらえますか?」


 「どうぞ」


 「向こうの世界で、月峰師匠が言っていた「三つの根が一つ」という話——もしその根の先に、もう一つ上の層があるとしたら?」


 「もう一つ上の層ですか?」


 「ダンジョン、異世界、裏日本、その全ての源になっているもの。「根の根」というか、大元の力」


 「それが第四の扉の向こうにある、ということですか?」


 「そうです。そして、その大元の力が、田中さんから「学んだ」と言っているんですよね?」


 「大元の力が俺から学ぶ、とはどういうことなんですか?」


 「……田中さんが三つの世界を繋いできた。その過程を見ていた。あるいは、田中さんが三つの扉を開けるたびに、大元の力も変化してきた」


 「影響を与えていた、ということですか。俺が?」


 「そうかもしれません。田中さんが「放っておけない」から動いてきた結果が、大元の力にも届いていた、とか」


 「……それはどういう意味ですか?」


 「王の器は、力を受け取るだけでなく、力に影響を与えることもできる。双方向の器、ということかもしれません」


 俺はしばらく考えた。


 「……難しいですね」


 「難しいです。でも、田中さんは難しいことを難しく考えない人なので」


 「そうですか?」


 「どう感じましたか、夢を見て」


 「……また、思い出す系か、と思いました」


 神崎誠一が笑った。


 「それが田中さんです」


後日公開 — 再生数:6,441,004

ガチ勢777:「夢の声と会話できるようになってた」の驚き方が田中さんらしい

エトウ:「双方向の器」という概念 王の器がただ受け取るだけでなく影響を与える存在だった

匿名A:神崎誠一がノート四冊持ってきた 一冊増えた理由が「眠れなかったから」

プロ冒険者X:「三つの根の根」という第四の層の概念 

ヒナ推し最前線:田中が神崎誠一を朝六時に呼んだの 研究者魂への理解があるだな

匿名B:「また思い出す系か」という感想が全て 田中さんは何があっても田中さん



 午後、月峰師匠から連絡が来た。


 つきののスマホを使って。


 《田中武志よ、昨夜、裏日本で異変が起きた。鬼火の類いではなく——もっと深いところからの揺れだ。お前に関係があると思う。会えるか?》


 俺はすぐ返した。


 《会えます。どこに行けばいいですか?》


 《渋谷の神社がある。わかるか?》


 《行けば見つかると思います》


 少し間があった。


 《……つきのが「田中さんらしい返事だ」と言っている》


 《つきのさんがいるんですか?》


 《おる。一緒に来い、と言ってある》


 《わかりました》


 ヒナに連絡した。


 《今日、渋谷に集まれますか。陰陽師から呼ばれました》


 《行きます。全員呼びますか?》


 《つきのさんに確認してから》


 《つきのさん!? もう連絡取れるんですか!?》


 《昨日からメッセージのやり取りをしています》


 少し間があった。


 《そうですか》


 《何かありましたか?》


 《なんでもないです》


 「なんでもない」のトーンが、少し硬かった。


 俺はつきのに連絡した。


 《全員連れて行っていいですか?》


 《師匠は大丈夫と言っています。陰陽師の世界に関わる人たちは、もう繋がっている、と》


 《ありがとうございます。一つ聞いてもいいですか?》


 《どうぞ》


 《ヒナさんが、少し硬い気がしたのですが、気がしたのですが、なんででしょうか?》


 少し間があった。


 《…気のせいではないと思います》


 《なぜですか?》


 《田中さんが「つきのさんと連絡を取っている」と知ったからだと思いますよ。女の子というのは、そういうものです!》


 「そういうものですか?」


 《そういうものです》


 《つきのさんは気にしませんか?》


 少し間があった。


 《……私は、田中さんにとって大切な人がいることを、知っています。昨日、田中さんがいると言ってくれたので》


 《そうですか》


 《私はそれで、十分です》


 《そうなんですか?》


 《はい。……でも、ヒナさんには、田中さんから一言あった方がいいかもしれません》


 《どんな一言ですか?》


 《…それは、田中さんが考えてください》


 《わかりました》


 つきのが「考えてください」と言った。


 記憶の混濁のせいか人の感情の機微が分からなくなってしまってるな。


 やはり練習しかないのか、と考える田中。



 ヒナにメッセージを送った。


 《ヒナさん》


 《はい》


 《つきのさんとメッセージのやり取りをしているのが、気になりましたか?》


 少し間があった。


 《……なんでわかったんですか?》


 《つきのさんが教えてくれました》


 《つきのさんが!?》


 《「ヒナさんに一言あった方がいい」と》


 また間があった。


 《……その人、なんか好きかも》


 《そうなんですか?》


 《それで、一言って何ですか?》


 俺は少し考えた。


 これも「練習」だと思った。


 受け取る練習と、伝える練習。


 俺は今、両方が試されていた。


 《つきのさんは、俺にとって信用できる仲間です。でもヒナさんは、別の種類で大切な人です》


 送ってから、少し心臓が速くなった。


 こういうことを言い慣れていない、と改めて思った。


 長い間があり、ヒナの方から声を掛けてくる。


 《……田中さん》


 《はい》


 《それ、ちゃんと言えましたね》


 《…言えましたか?》


 《言えましたね》


 《…よかった》


 《…ずっとその言葉を…待ってましたから》


 今回は「よし」では、なかった。


 でも、ちゃんと届いたとそう思えた。


後日公開 — 再生数:7,114,004

ガチ勢777:つきのちゃんが「ヒナさんに一言あった方がいい」とアドバイスしてくれた この二人好きすぎる

エトウ:「別の種類で大切な人」という言い方が田中さんにしては精一杯だったと思う

匿名A:つきのちゃんが「私は十分です」と言えたのが強い 強くて好き

プロ冒険者X:月峰師匠から呼ばれた 裏日本の異変が第四の扉と繋がりそう

つきの推し:つきのちゃんがヒナちゃんの気持ちを理解した上でアドバイスしてる 大人すぎる

シルヴィア推し:シルヴィアとヒナのライバル関係に今度はつきのちゃんも 全員が田中さんを推してる

匿名B:「行けば見つかる」が月峰師匠にも届いてる どこでも田中さんは田中さん



 渋谷に、小さな神社があった。


 ビルとビルの間に、気づかなければ通り過ぎてしまいそうな場所に。


 でも、俺の右手が反応した。


 「……ここです」


 俺が立ち止まった。


 「ここ?」


 ヒナが周囲を見た。


 「こんなところに神社があったんですか?」


 「知りませんでした」


 「私も」


 神社の前に、人が立っていた。


 白い着物。黒い長い髪。切れ長の目。


 つきのだった。


 昼間の渋谷の雑踏の中に、着物で立っていた。


 全員が一瞬止まった。


 「……目立ちますね」


 キリソウが小声で言った。


 「そうですね」


 「でも、似合ってます」


 つきのが俺たちを見つけた。


 頭を下げた。


 「……田中さん、お待ちしていました。みなさんも」


 ヒナがつきのを見て、つきのもヒナを見た。


 「…白川ヒナさん、ですよね。配信で見ていました」


 「そうです。朔野つきのさん、ですよね。サクラに調べてもらいました」


 「……調べてもらっていたんですね」


 「…確認したかったので」


 二人が向き合った。


 場は静かだった。


 誰も何もしゃべらず、その場から一歩離れた場所にたっており、神社にいるはずなのに北極にでもいる感覚がする。


 俺も少し距離を置いて見ていた。


 「……昨日、田中さんに一言あった方がいいとアドバイスしてくれましたよね」


 「はい」


 「ありがとうございます。……田中さんが、ちゃんと言ってくれました」


 「…はい。」


 「それで——」


 ヒナが少し間を置いた。


 「……つきのさんのこと、田中さんがお世話になります。よろしくお願いします」


 「こちらこそ、よろしくお願いします」


 つきのが頭を下げた。


 ヒナも頭を下げた。


 「……いい感じですね」


 サクラが俺の隣で小声で言った。


 「…そうですか?」


 「記録します」


 「…記録しちゃだめですよ?」


 「…そうですか。」



 神社の中に入った。


 月峰師匠が奥に座っていた。


 「来たか」


 「来ました」


 「全員連れてきたな」


 「全員で行動するのが、このパーティーの流儀なので」


 月峰が全員を見回した。


 「……賑やかだ」


 「よく言われます」


 「悪くない」


 月峰が俺を見た。


 「昨夜、夢を見たか?」


 「見ました。同じ声でした。今回は会話ができました」


 月峰が目を細めた。


 「……会話ができたか。それは進んでいるな」


 「「汝から学んだ」とも言っていました」


 「そうか。つまり——その声の主は、お前のことをずっと見ていた存在だな」


 「そうなりますね」


 「田中武志、一つ聞く。お前は、この世界がどこから来たと思うか?」


 「……わかりません」


 「正直な答えだ。わしも、完全にはわからない。だが——」


 月峰が神社の奥を見た。


 「古文書に、こういう記述がある。「世界は最初、一つだった。それが割れて、複数になった。ダンジョンは割れ目の痕跡。異世界は割れた欠片。裏日本は影。そして、割れる前の、一つだったものが、根の先にある」


 静寂。


 「……割れる前の、一つだったもの?」


 神崎誠一が呟いた。


 「それが第四の扉の向こうにある、と?」


 「そうだ。そして、お前が三つを繋いだとき、その一つだったものも、動き始めようとした。昨夜の裏日本の揺れは、その動きだ」


 「俺が三つを繋いだから?」


 「三つの欠片が近づくと、一つだったものが目を覚ます。ずっと眠っていたものが」


 「……その「一つだったもの」が、俺に「汝から学んだ」と言っている」


 「そうなる。お前が扉を開けるたびに、一つだったものは、より完全に近づいていた。お前の動きが、それを動かしていた」


 ヒナが俺の隣で言った。


 「……田中さんが、世界の復元に関わっている、ということですか?」


 月峰が頷いた。


 「その通りだ。王の器、天の器、それは、欠片を繋いで、一つに戻す器だ」


 「……俺が、世界を一つに戻す?」


 「そうだ。だが——」


 月峰がしっかりと俺を見た。


 「…強制ではない。お前が選ぶことだ。ただ、お前が今まで動いてきた理由、「放っておけない」という言葉がこの先も変わらないなら、自然とその方向に向かうと思うぞ」


 俺は少し考えた。


 「……放っておけない、ですね」


 「何がだ?」


 「眠っているものが、起きようとしているなら。待っているものが、待ち続けているなら。それは、放っておけません」


 月峰が目を細めた。


 つきのが小さく笑った。


 ヒナが俺の隣で、静かに「よし」と言った。


 今回の「よし」は——田中さんだ、という意味だった。


 どこまでも田中武志だ、という「よし」だった。



【感想】「割れる前の一つだったもの」という世界観の大開示と、ヒナ・つきのの初対面が両方来て全員の処理能力が限界

1 名無しさん : 「世界は最初一つだった、ダンジョンは割れ目の痕跡、異世界は欠片、裏日本は影」 積み上げたものが一つに収束した


2 名無しさん : 「別の種類で大切な人」という田中さんの一言で「よし」が来た この「よし」が今まで全部の中で一番重かった


3 名無しさん : ヒナとつきのの「お世話になります・こちらこそよろしく」が思ったよりあっさりしてて笑った 二人とも強い


4 名無しさん : 「夢の声と会話できた、それが一番の驚き」という田中さんの感性が全ての根底にある


5 名無しさん : 「放っておけない」という言葉が世界の復元の動力になってた 田中さんの行動原理が世界の理だった


6 名無しさん : 「どこまでも田中武志だ」という「よし」 ヒナちゃんがずっと守ってきたものへの肯定


7 名無しさん : 神崎誠一がノート四冊持ってきてたの、今話では全部使ったはず


8 名無しさん : 登録者3400万突破 ここからさらに加速してる

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