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クビになった冴えないおじさんがダンジョン配信を始めたら、なぜか登録者100万人超えてしまった件〜俺、実は最強だったらしい〜  作者: あっかんべー
第2章:陰陽師とおじさん

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第39話 おじさんは、表の世界に戻った。ヒナが待っていた

 渋谷の歩道に、俺は立っていた。


 落ちる前と同じで夜だった。


 街灯が点いていた。


 人が歩いていた。


 車が走っていた。


 渋谷の、いつもの普通の夜だった。


 「田中さん!!!!」


 背中の方から声が聞こえてくる。


 振り向く間もなく、ヒナが走ってきた。


 止まらなかった。


 俺の方に、まっすぐ走ってきた。


 「ヒナさ…」


 言いかけた。


 ヒナが、俺の腕を両手で掴んだ。


 ぎゅっと、強く握ってくる。


 止まった。


 走ってきた勢いが、そこで止まった。


 ヒナが俺を見た。


 目が、少し赤かった。


 「……見つけたっ…!」


 小さく言った。


 「ここにいますよ」


 「どこに行ってたのっ…!」


 「裏から帰ってきました」


 ヒナがしばらく俺の腕を掴んだまま、俺を見ていた。


 何も言わなかったが、でも、目に全部書いてあった。


 「……心配しましたか?」


 「しましたよ…!」


 「…すみません」


 「…謝らなくていいです。」


 「…なぜですか?」


 「無事に帰ってきてくれたから…!」


 ヒナが腕を離し、それからようやく、少し笑った。


 「……でもまあ、必ず帰ってくると思ってましたよ?」


 「そうなんですか?」


 「サクラが「田中さんは約束を守る人だから帰ってくる」と言ったので」


 「…サクラさんが?」


 「うちも信じてました。でも——」


 ヒナが少し間を置いた。


 「待ってる時間が、とても長かったです…!」


 「何時間が経ちましたか?」


 「三時間くらいです」


 「三時間、ここにいたんですか?」


 「みんなで。ここを離れたら田中さんが戻ったとき誰もいないかもしれないから」


 俺は周囲を見渡したら、そこには全員がいた。

 サクラ、リオ、キリソウ、早川、神崎誠一、岩田陸。


 全員が、少し離れた場所に立っていた。


 俺が戻ったのを見て、それぞれが表情を緩めているようだった。


 「……全員で待っていたんですか?」


 「当然です!」


 「だって、うち達は田中さんのパーティーなんですよ?」


後日公開 — 再生数:9,114,004

ガチ勢777:ヒナちゃんが走ってきて腕を掴んだのが今話ベストシーン

エトウ:「待ってる時間が長かった」が三時間全員で待ってたという事実と合わさって泣ける

匿名A:「田中さんのパーティーなので当然です」でまた泣いた

プロ冒険者X:全員が離れずに待ってた 最初の頃から考えると全員の絆が見える

匿名B:「帰ってきてくれたから謝らなくていい」のヒナちゃんの一言が一番好き

キリソウ実況:俺も待ってました。報告します。

岩田陸:帰ってきた人が今度は帰ってくるのを待つ立場になった なんか感慨深かった



 全員が集まった。


 「……何があったんですか?」


 サクラが聞いた。


 「…落ちました」


 「…どこに?」


 「裏日本、というところに」


 全員が黙った。


 「裏日本?」とキリソウが繰り返した。


 「日本の裏側にある世界のことらしいです。妖怪が住んでいるそうです」


 「……妖怪?」


 「そこで、鬼火という妖怪に遭遇しまして、倒しましたが」


 「ダンジョンの次は妖怪ですか…」


 キリソウが力が抜けた顔をした。


 「そして、陰陽師と出会いました」


 「陰陽師!?」


 「裏日本と表日本の境界を守っている人たちです。秘密の組織で、一般には知られていないようですね」


 「…その組織の話、してよかったですか…?」


 早川が言った。


 確かに政府関係者の早川さんや一般人の皆には効かせてはいけない内容だが…


 「みなさんには話しても大丈夫だと判断しました」


 「田中さんの「大丈夫」は信用していますよ」


 「ありがとうございます」


 神崎誠一がメモを取り始めていた。


 やはり、研究者なだけあって裏日本に興味があるのだろうか?


 「……裏日本の存在は、向こうでも聞いたことがあります。異世界と裏日本が繋がっているという説があって」


 「裏日本にいた月峰師匠もそれに近いことを言っていました。ダンジョン、異世界、裏日本——三つは根が同じだと」


 「根が同じ!?」


 神崎誠一の手が止まった。


 「……田中さん、その言葉、もう少し詳しく聞かせてもらえますか?」


 「今夜は疲れたので…」


 「あ、そうですね。すみません」


 「明日でいいですか?」


 「わかりました。明日、必ず…!」


 「はい」


 目を爛々とさせる父親をリオが抑え込む。


 「お父さん、落ち着いて!」


 「落ち着いてるよ!」


 「目が輝きすぎてる!」


 「……研究者なので。」



 解散して、ヒナと二人で少し歩いた。


 夜の渋谷。


 「……スーツに煤がついてますよ?」


 ヒナが言ってきて、自分のスーツを見渡すと、確かに煤汚れがあった。


 「鬼火の炎の煤です」


 「クリーニングに出さないと?」


 「そうですね」


 「革靴は?」


 「裏日本の土が少しついていますが、大丈夫です」


 「異世界でも裏日本でも、気にするのはスーツと革靴ですね」


 「これが普段着なので」


 ヒナが笑った。


 「……田中さん、裏日本で会った人、どんな人でしたか?」


 「陰陽師の女の子と、その師匠の老人です」


 「オンナノコ?」


 「着物を着た、真面目な人でした」


 「マジメナ?」


 「切れ長の目で、静かに話す。大和撫子、という言葉が思い浮かびました」


 ヒナが少し間を置いた。


 「……何歳くらいですか?」


 「十代後半か、二十前後くらいです」


 「田中さんより若い」


 「そうですね」


 「名前は」


 「朔野つきの、と言っていました」


 「つきのさん」


 「はい」


 ヒナがしばらく黙った。


 歩きながら、前を見ていた。


 「……また会うんですか?」


 「会うかもしれません。陰陽師とは協力関係になりそうなので」


 「そうですか。」


 「何かありますか?」


 「…なんでもないです」


 「…本当に?」


 「本当になんでもないです!」


 ヒナが少し早く歩いた。


 半歩、俺より前に出た。


 「……次に会うとき、うちも連れて行ってくださいね?」


 「裏日本に?」


 「そうです」


 「…危ないですよ」


 「ダンジョンも異世界も危なかったですが、行きましたよ?」


 「そうですね」


 「だから、行きます。どこへでも、と言いました」


 「言いましたね」


 「約束は守ります」


 俺は少し考えた。


 「……わかりました。連れて行きます」


 ヒナが少し頷いた。


 「よし!」


 「今回の「よし」は?」


 「……内緒です」


 また内緒だった。


 だが、今回の内緒は——前回と少し違う気がした。


 少し、強い「よし」だった気がする。



 翌朝。


 スマホに、知らない番号からメッセージが来ていた。


 《田中武志さん。昨日は助けていただきありがとうございました。朔野つきのです。師匠が番号を調べました。失礼をお許しください》


 続けて、


 《師匠からの伝言です。「ダンジョンと裏日本の関係について、話したいことがある。時間があれば来てほしい」とのことです》


 さらに続けて、


 《私からも、一つ。昨日のこと、配信されないとのことで、安心しました。でも——田中さんの配信は、ずっと見ています。これからも見ます》


 最後に、


 《追伸:師匠が番号を調べた方法は聞かないでください。陰陽師なので》


 「……陰陽師なので?」


 俺は繰り返した。


 そのまま返信した。


 《わかりました。近いうちに伺います。配信も引き続きよろしくお願いします》


 送ってから、少し考えて、追加した。


 《昨日助けられたのはつきのさんでしたが、俺も助けてもらいました。成仏の術を教えてもらったので。ありがとうございました》


 少し経って返信が来た。


 《田中さんが「ありがとうございました」と言ってくれたので、少し驚きました》


 《なんでですか?》


 《配信で見ていた田中さんは、あまり自分からお礼を言わない印象でした。この短期間に少し変わりましたか?》


 《練習中です》


 《練習?》


 《受け取る練習、大事にされる練習と一緒に、伝える練習もしています》


 少し間があった。


 《……誰かが、教えてくれているんですか、それ?》


 《そうです》


 《大切な人ですか?》


 《そうです》


 また間があった。


 《……そうですか》


 そのあと、しばらく返信がなかった。


 俺はスマホを置いて、コーヒーを飲んだ。


 薄かった。


 でも——今日も、悪くなかった。


後日公開 — 再生数:8,441,004

ガチ勢777:つきのちゃんからメッセージが来た 「陰陽師なので」で番号の入手方法を封じる

エトウ:「大切な人が教えてくれている」→「そうですか」のつきのちゃんの間が全部語ってる

匿名A:ヒナちゃんが「何歳ですか」「また会いますか」と聞いた流れが全部筒抜けだった

プロ冒険者X:神崎誠一の目が輝きすぎてリオちゃんに止められてるのが好き

ヒナ推し最前線:ヒナちゃん、自分で言った言葉を武器にしてるだね!

シルヴィア推し:ライバル確定 でもつきのちゃんも好きになってきてる

つきの推し(新):「ずっと見ています、これからも見ます」 つきのちゃんが好きになった

匿名B:ヒナちゃんの「強い「よし」」が今話で一番好きだった



 その日の午後、ヒナからメッセージが来た。


 《田中さん、裏日本について調べました》


 《どうやって?》


 《サクラが調べてくれました。陰陽庁という組織が政府の一部にあること、早川さんに聞いたら「知っています」と言われたんですよ》


 《早川さんが知っていたんですか?》


 《「内閣府ダンジョン対策室は、裏日本との関係についても情報を持っている」とのことでした》


 「……やっぱり」


 俺は思った。


 黒沢が早い段階で俺に接触してきたのは、ダンジョンだけが理由ではなかったのかもしれなかった。


 《篠原室長に相談してみます》


 《わかりました。それと——》


 《それと?》


 《つきのさんのこと、サクラがもう調べてました》


 《…早い》


 《「朔野家は陰陽師の古い家系。月読家とも呼ばれる。現当主は朔野月峰。孫娘の朔野つきのは現在最年少クラスの術師」だそうです》


 《…よくそこまで。》


 《サクラは何でも調べます。それより》


 《それより?》


 少し間があった。


 《……つきのさんって、強い人ですか?》


 「強い人ですか?」という質問を、ヒナがするのは珍しかった。


 俺は少し考えた。


 《強いです。真剣で、信念がある》


 《そうですか…。》


 《ヒナさんも強いですよ?》


 《唐突ですね》


 《思ったので》


 また間があった。


 《……田中さんって、本当にたまにずるいです…。》


 《よく言われます》


 《わかってて言ってますよね?》


 《少しずつ、わかってきました》


 《成長したんですね!あの唐変木おじさんが…!》


 《練習の成果です》


 《誰との練習ですか?》


 《二人の、です》


 長い間があった。


 最後に、《よし》だけが来た。


 俺はその「よし」の意味を考えた。


 今回は——全部わかった上での「よし」だと思った。


 田中さんがわかってやっているのがわかった、という「よし」だった。


 進んだ、という意味の「よし」だった。


 コーヒーをもう一口飲んだ。


 相変わらず薄かった。


 でも、今日は特に気にならなかった。



【感想】「二人の練習」という田中さんの一言でヒナちゃんが「全部わかった上でのよし」を送った件

1 名無しさん : ヒナが走ってきて腕を掴んで「いた」「帰ってきた」だけで全部言い切ったの今話最高のシーン


2 名無しさん : 「二人の練習」という答えを田中さんが出した 受け取る練習と伝える練習が両方揃った


3 名無しさん : つきのちゃんの「そうですか」の間が全部語ってた 大切な人がいると知った瞬間


4 名無しさん : 早川さんが陰陽庁を知ってた 内閣府ダンジョン対策室は全部把握してたのか


5 名無しさん : 「ヒナさんも強いですよ」を唐突に言った田中さん 少しずつわかってやってるのが好き


6 名無しさん : 神崎誠一の「目が輝きすぎてる」リオちゃんのツッコミシリーズ好きすぎる


7 名無しさん : 「どこへでも、と言いました」をヒナちゃんが使った 大分前の田中さんの言葉を返した!


8 名無しさん : 登録者3200万突破!!!

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― 新着の感想 ―
新ヒロインの狐娘、おそらく九尾の狐、定番なら、玉藻か葛の葉辺りかな、が裏日本で待ってるからまた呼ばれそう、エルフと魔族のヒロインはいたけど獣人は男性で、獣人ヒロインはいなかったから楽しみです
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