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クビになった冴えないおじさんがダンジョン配信を始めたら、なぜか登録者100万人超えてしまった件〜俺、実は最強だったらしい〜  作者: あっかんべー
第2章:陰陽師とおじさん

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第37話 次元の割れ目に落ちた。おじさん、また別の世界に行ってしまう

秘密にしてください。からの、2チャンネルはおかしいだろ!って思うかもしれませんが、振り返り的な感じなので無視して頂きたいです。。。

 地面に、亀裂が入っていた。


 俺の足元に。


 気づいたときには、もう遅かった。


 ——また、か。


 そう思いながら、亀裂に落ちていく。



 少し時間を戻す。


 ファミレスから出て、全員でぞろぞろと夜の渋谷を歩いていた。


 神崎誠一が岩田陸に向こうのファミレス構想を語っていた。


 岩田陸が「ちょっと待ってください!」と言いながらメモを取っていた。


 ヒナが「その親子、研究者の血が濃いなぁ」と小声で言った。


 「そうですね」と俺は言った。


 賑やかだった。


 良かった。


 そう思った瞬間だった。


 俺の右手が、急に熱くなった。


 光ではなかった。


 熱だった。


 それも、今まで感じたどの熱とも違う種類の熱だった。


 ダンジョンの冥界石が反応するときの温かさでもなく、異世界の扉に触れたときの白い光とも違う。


 もっと古い。


 もっと、根の深いところから来る熱だった。


 「田中さん?」


 ヒナが気づいた。


 俺が立ち止まったから。


 「……ちょっと、」


 言いかけた瞬間。


 足元の歩道に、黒い亀裂が走った。


 音はなく、ただ、地面が割れた。


 「え、」


 ヒナの声が聞こえてくる。


 そして、俺は落ちた。


【⚠ 渋谷区内・歩道にて次元亀裂の発生を確認——陰陽庁第三監視局 緊急記録】



 落ちた、という感覚は一瞬だった。


 次の瞬間、地面があり、俺は立っていた。


 革靴の底に、土の感触があった。


 渋谷の歩道ではなかった。


 周囲を見た。


 空が、赤かった。


 夕焼けではないと思う。


 赤というより、血の色に近かった。


 地面は土で、木が生えていたが、葉が黒かった。


 音がする。


 風の音ではなかった。


 それは、何かが——うごめく音だった。


 俺は周囲を見回した。


 建物はなかった。


 人もいなかった。


 ただ、雰囲気があった。


 見られている、という感覚。


 ダンジョンの深層で感じるそれとは違う。


 もっと古くて、もっと重い視線。


 「……また別の場所ですね」


 俺は言った。


 誰もいなかったが、つい声に出た。


 スマホを取り出し確認すると…圏外だった。


 「……圏外か」


 異世界では電波が届かなかった。


 こちらも同じような所なんだうか。


 右手を見る。


 白い光は出ていない。


 だが、熱はまだあった。


 しかも、今は右手だけでなく、体全体に広がっていた。


 「……ここはどこだろうか…。」


 独り言が増えていた。


 一人のときは独り言が出る癖が、どうやらまだ直っていなかった。


■ 《裏日本》について(後にヒナが調べた情報)

日本列島の「裏側」に存在する次元層。表の世界と重なるように存在しているが、通常人間には見えない。古来より妖怪、物の怪、怨霊の類いが住まう領域。陰陽師はこの裏日本と表日本の境界を守る役割を担っている。



 歩き始めた。


 方向はわからなかったが、立っているよりはましだと思って。


 黒い木々の間を歩いていく。


 …足音が、やけに響く。


 革靴の音が、静寂の中に広がった。


 しばらく歩くと、光が見えた。


 赤い空の下、さらに赤い光が揺れていた。


 炎だった。


 誰かが何かを燃やしているのか——いや違う。


 炎が、動いていた。


 生き物のように、うねりながら動いていた。


 近づいていく。


 木々の間から覗いた。


 そこに、いたのは…


 女の子だった。


 白い着物を着ており、黒い長い髪が、風に揺れていた。


 手に呪符のようなものが貼られた細い棒を持っていた。


 目が切れ長で、黒くて、鋭い。


 年齢は十代後半か、二十代前半か。


 大和撫子、という言葉が、頭の中に浮かぶ。


 きっと、こういう人を言うのだろう、と思った。


 そして、その女の子の前に——


 《鬼火》がいた。


 炎の塊が、人型をしていた。


 高さは三メートルほど。


 顔らしきものがあり、目が二つ、口が一つ。


 ぐるぐると渦を巻く炎が、その輪郭を作っていた。


 ゆらゆらと揺れながら、女の子に向かって迫っていた。


 女の子が呪符を投げた。


 「封じよ——《伏火の印》!」


 凛とした声だった。


 呪符が炎に触れた。


 一瞬、炎が小さくなった。


 だが、すぐに戻ってしまう。


 それどころか、元の大きさよりも大きくなった。


 女の子が少し後退した。


 「…まだ、封じられないっ!…器が足りないの?」


 呟きが聞こえた。


 鬼火が、腕らしきものを伸ばした。


 炎の腕が、女の子に向かって——


 俺は、前に出た。


後日サクラが配信で公開(状況証拠と田中さんの証言より再構成)

ガチ勢777:また女の子がピンチのところに田中さんが来た 前と同じ構図じゃん

エトウ:裏日本の存在が明かされた 陰陽師が秘密裏に守ってたのか

匿名A:「また別の場所ですね」って言いながら独り言してる田中さんが好き

プロ冒険者X:鬼火 妖怪の中でも上位クラスのはず それを前に単身で出る田中さん

ヒナ推し最前線:白い着物の大和撫子系美少女だと?なぜ美形ばかり集まるんだ!

匿名B:陰陽庁なる組織の記録が出てきた 秘密の組織があったのか

新規大量:異世界の次は妖怪の世界!? 田中さんどこへでも行くな



 「……ちょっとすみません。通りますね」


 俺は言った。


 前と同じ言葉だった。


 自分でも気づいていなかった。


 女の子が俺を見て目が丸くしていた。


 「……え、なんで、人間がっ!?」


 「通りかかりました」


 「通りかかったって、ここ裏日本ですよ!」


 「そうなんですか?」


 「知らないんですか!?」


 「今初めて聞きました」


 女の子が絶句した。


 鬼火が動く。


 炎の腕が、俺に向かって来た。


 俺は右手を前に出した。


 体が、知っていた。


 炎は、前に何度も吸収してきた。


 第四層のフレイムリザードとか。


 第五層の扉の前での練習。


 炎を吸収する感触を、右手が覚えていた。


 …だが、今回は少し違ったようだ。


 鬼火の炎は、ただの炎ではなかった。


 念が、込められていた。


 怨念、とでも言うべきものが。


 俺の右手が、それを知っているようだった。


 そして、反応する。


 はじめは白い光が出てくる。


 だが、今まで見た白い光とは、少し色が違った。


 黄色い?…いや、金に近かった。


 王の器が、炎と怨念を同時に吸い込んだようだった。


 鬼火が小さくなっていく。


 俺は一歩踏み出した。


 縮んだ鬼火の中心に、右の掌底を当てた。


 軽く、当てただけ。


 それで十分だった。


 鬼火が、消えたていった。


 炎が散って、黒い煙になって、空気に溶けていった。


 静寂。


 赤い空の下、黒い木々の間に、俺と女の子だけが残った。


 俺は手を払った。


 「……スーツに煤がついてしまいました」


 女の子が、固まったまま俺を見ていた。


 口が、少し開いていた。


 「……今の、なんですか?」


 「手で払いました」


 「手で払ったって——鬼火を!? 素手で!?」


 「吸収してから払いました」


 「吸収!?」


 女の子がさらに固まった。


 「……あなた、何者ですかっ…!」


 「田中武志です。元経理です」


 「元経理って、なんでここに……」


 「歩いていたら落ちました」


 「落ちた……?」


 女の子がしばらく俺を見て、鬼火が消えた場所を見て、また俺を見た。


 「……怪我はありませんか?」


 俺が聞いた。


 「え、私ですか?」


 「さっき後退していたので」


 「……大丈夫です。あなたの方こそ」


 「大丈夫です」


 「鬼火に炎を吐かれたのに?」


 「吸収したので」


 「……なんなんですか、あなた?」


 「田中武志です。元経理です。今は配信者です」


 「配信者!?」


 女の子が声を上げた。


 「……も、もしかして、あのダンジョン配信の?」


 「…そうですね」


 「田中さん!?」


 「そうです」


 女の子の目が丸くなった。


 「……うちの師匠が、田中さんの配信を見てました。向こうの世界から。ゼナ様が繋げてくれた映像で」


 「師匠が?」


 「向こうの世界でもこちらでも、あなたの配信は届いていたんです。陰陽師の間でも有名でした。「裏日本の気配に反応出来る可能性がある人間が現れた」と」


 「そうでしたか」


 「……よもや本人が来るとは思いませんでしたが」


 女の子がようやく落ち着いた顔になった。


 白い着物が、赤い空の下で揺れていた。


 「……失礼しました。改めて」


 女の子が丁寧に頭を下げた。


 「陰陽師・月読家が末裔、朔野つきのです。今日は……助けていただきありがとうございました」


 「どういたしまして」


 「……「どういたしまして」って言えるんですね、すぐに」


 「習慣です」


 「良い習慣ですね」


 つきのが少し笑った。


 和の空気をまとった、静かな笑いだった。


 「田中さん、裏日本から出る方法は、わかりますか?」


 「…わかりませんね」


 「……では、私が案内します。表に戻る方法を」


 「それは、助かりますね」


 「ただ…」


 つきのが俺を見た。


 「このことは、秘密にしてもらえますか?陰陽師の存在は、一般には知られていないので」


 「わかりました」


 「……即答ですね」


 「信用できると思ったので」


 つきのが少し目を細めた。


 「……師匠が言っていました。「すぐに信用してくるようなバカは、絶対に裏切るな」と」


 「…よく似たようなこと言われます」


 「でも…今日は助けてもらいました。信用していただいてよかったです」


 「こちらこそ」


 二人で、赤い空の下を歩き始めた。


 黒い木々が、風に揺れていた。


 「田中さん」


 「はい?」


 「スーツで来る方とは思いませんでした」


 「普段着なので」


 「裏日本に普段着で来る人は、初めてです」


 「そうですか?」


 「よく言われますか?」


 「よく言われます」


 つきのが、また静かに笑った。



【速報】田中武志、今度は裏日本に落ちた件。陰陽師登場で新展開

1 名無しさん : 「また別の場所ですね」って独り言しながら落ち着いてる田中さん もう慣れてる


2 名無しさん : 「ちょっとすみません、通りますね」が前と完全に同じ 田中さんの鉄板


3 名無しさん : 朔野つきのちゃん登場 大和撫子系の陰陽師 白い着物に黒髪 既に好き


4 名無しさん : 鬼火をワンパンで倒した後「スーツに煤がついた」が最初の「革靴に傷が入った」と全く同じ構造で笑う


5 名無しさん : 陰陽師の間でも田中さんの配信が有名だったのか ゼナちゃんの回線が繋いでた


6 名無しさん : 「元経理です」「配信者です」の自己紹介変わってない このおじさんはずっとこのままだ


7 名無しさん : ヒナちゃんがどんな顔してるか気になりすぎる また別の世界に消えた田中さん


8 名無しさん : ダンジョン・異世界・裏日本 田中さんの行く場所が増えすぎてる 登録者もっと増えそう


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