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クビになった冴えないおじさんがダンジョン配信を始めたら、なぜか登録者100万人超えてしまった件〜俺、実は最強だったらしい〜  作者: あっかんべー
第1章:異世界と配信とおじさん

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第32話 エリナ、日本を体験する。向こうの世界の人が見た、こちらの世界

 政府が用意した施設は、渋谷から電車で二十分ほどの場所にある、静かな一軒家だった。


 「……おおきい」


 エリナが玄関に立って言った。


 「四部屋あります。しばらくここで過ごしてもらえますか?」


 「はい。ありがとうございます」


 日本語が少しずつ増えていた。


 昨日一日でヒナとサクラに教わった言葉が、今朝からちゃんと出てきているようだな。


 飲み込みが早い。


 流石は、シルヴィアの妹だけはあるな。


 「田中さん」


 エリナが俺を見た。


 「このへやに……すむのは、わたしだけですか?」


 「そうなりますが、ヒナさんたちがよく来ると思いますよ?」


 「ヒナさんたちが。……うれしいです」


 「日本語が上手くなってきましたね」


 「むずかしいです。でも、たのしいです」


 「何が楽しいですか?」


 エリナが少し考えた。


 「ことばが……ひとつずつ、わかるとき。むこうのことばとちがって、むずかしいけど——わかったとき、うれしい」


 「それは良かったです」


 エリナが部屋の中を見回した。


 「田中さん、これは……なんですか?」


 冷蔵庫を指していた。


 「食べ物を冷たく保存する箱です」


 「…冷たく、なぜ?」


 「腐らないようにするためですね」


 「……むこうにもにたものがあります。でも、箱ではなかった、です」


 「向こうではどうやっていましたか?」


 「魔法で、冷やす、です」


 「こちらでは電気でやっています」


 「でんき、ですか?」


 「……説明が難しいですね」


 「むずかしい、ですか?」


 「今日は使い方だけ覚えてください」


 「はい」


 エリナが真剣な顔で冷蔵庫の開け方を学んでいた。


 後ろで早川が小さくメモしていた。


 「……向こうの方への文明説明、系統立てて資料を作った方がいいかもしれませんね」


 「そうですね。お願いできますか?」


 「有給の範囲でなら。」


 「…またですか?」


 「室長に今日は事前に言ってありますよ?」


 「…成長しましたね」


 「田中さんの影響ですかね?」


日常配信 — 同接:2,114,004

ガチ勢777:エリナちゃんが冷蔵庫に真剣に向き合ってる…!

エトウ:「魔法で冷やす→電気で冷やす」の説明のむずかしさよ

匿名A:早川さんが「有給の範囲で」を使いこなしてる?

ヒナ推し最前線:エリナちゃんの日本語が一日でこんなに増えてる…! 天才か? 是非うちに来てくれ

匿名B:「田中さんの影響です」が増えてきてる みんなが少しずつ田中さんに似てきてる

新規:ほのぼのしてて好き 異世界の人の日本体験配信



 昼になって、全員でコンビニに行った。


 エリナがコンビニの入口で固まった。


 「……なに、ここ」


 「なんでも売っている店です」


 「なんでも!?」


 「食べ物、飲み物、日用品、ある程度のものは」


 「むこうでも……いろんなものを売る店はあります。でも——」


 エリナが中を見た。


 目が丸くなった。


 「ひかってる…!?」


 「明るいですよね」


 「むこうより、ずっとあかるい…!」


 「電気の光です」


 「でんき……これも、でんき…?」


 「そうです」


 エリナが中に入った。


 一歩一歩、確かめるように。


 棚を見た。


 「これは……たべもの?」


 「そうです。おにぎりといいます」


 「おにぎり?」


 「ご飯を握ったものです。中に具が入っています」


 「……おいしい、ですか?」


 「おいしいですね」


 エリナが一つ手に取った。


 三角形の形をじっと見た。


 「……かたちがおもしろい、ですね」


 「そうですかね?」


 「むこうにも、にたものはあります。でも、まるい」


 「なぜ三角か、というのは俺もわかりません」


 「しらないんですか?」


 「日本で生まれた形なので」


 「……でんきも、おにぎりも、日本でうまれた?」


 「でんきは日本だけではないですが、おにぎりは日本のものに近いですね」


 エリナが真剣な顔でメモを取り始めた。


 「エリナ、メモ取るんですね」


 ヒナが言った。


 「シルヴィア姉様にほうこくするので」


 「お姉さんへの報告書ですか?」


 「姉が……むこうで、たくさん聞いてきて、と言ってました。」


 「シルヴィアさんも興味があるんですね、こちらの世界に」


 「あります。姉は……来たかった。でも、まず私を」


 「安全確認のために?」


 「はい」


 エリナがもう一度おにぎりを見た。


 「……かえったら、このかたちを姉に見せます」


 「おにぎりを持ち帰りますか?」


 「かたちだけでも。えに書いて」


 ヒナが「可愛い」と小声でボソッと呟いていた。



 コンビニで昼食を買って、近くの公園に行った。


 エリナが空を見上げた。


 「……そらが、あおい」


 「そうですね」


 「むこうとちがう、ますね?」


 「向こうは紫がかっていますよね」


 「田中さんは……むこうのそらを、どう思いますか?」


 「両方好きです」


 エリナが少し驚いた顔をした。


 「……りょうほう?」


 「こちらの青い空も、向こうの紫の空も。どちらも知っているので、どちらも好きです」


 エリナがしばらく考えた。


 「……わたしは、むこうのそらしかしらない。でも、きょうはじめて、こちらのそらをみて——」


 「どうでしたか?」


 「きれいでした。むこうとはちがう。でも、きれい」


 「それでいいと思います」


 「りょうほう、きれい、です!」


 「そうです」


 エリナが空を見ながら、おにぎりを食べた。


 「……おいしいです」


 「よかったです」


 「むこうのたべものとちがう。でも、おいしい」


 「向こうのパンも美味しいですよ?」


 「しっていますか、むこうのパンを?」


 「知っています。記憶が戻ったので」


 エリナが少し笑った。


 「田中さんは……りょうほうをしっている。それが、うらやましいです」


 「エリナさんも、これからこちらを知ることができます」


 「はい。でも田中さんは、はじめからりょうほうを持っていた。そういう人は、つよい、と姉が言っていました」


 「シルヴィアが?」


 「はい。二十年前の田中さんも、りょうほうを持っていた。むこうを知りながら、こちらを想像していた。だから、扉をつくれた、と」


 俺は少し間を置いた。


 「……シルヴィアは、よく分析していますね。」


 「姉は、田中さんのことを、ずっと考えてきたので」


 「二十年間?」


 「はい」


 エリナがメモ帳を開いた。


 「……田中さん、一つきいていいですか?」


 「どうぞ」


 「しごとは、どうするんですか?」


 「仕事?」


 「田中さんは……むこうのはいしんしゃ。でも、こちらでも……しごとは、いりませんか?」


 「…配信が仕事になっています」


 「はいしんが、しごと?」


 「…登録者が多いので、広告収入があります」


 「こうこくしゅうにゅう……むずかしいことばです」


 「簡単に言うと、配信を見てくれる人が多いと、お金がもらえる仕組みです」


 エリナがメモした。


 「……みんながみてくれるから、お金になる?」


 「そうです」


 「むこうにはない、しくみ。おもしろい、です」


 「向こうでも配信が見られているんですよね?」


 「はい。ゼナ様が……とどける方法を見つけた。むこうのみんなが、みています」


 「…向こうでも登録者がいるかもしれませんね」


 エリナが少し考えた。


 「……むこうのひとも、とうろくできますか?」


 「技術的には難しいかもしれませんが——」


 「できたら……すごいです?」


 後ろでサクラが「…研究してみます」と言った。


 「向こうからも登録できたら、田中さんの登録者数が一気に増えますね!」


 「……ふーん」


 俺は言った。


 全員が笑った。


 エリナが「ふーん、ということばはどういういみですか?」と聞いた。


 「……説明が難しいです」


 「むずかしい?」


 「田中さんだけが使う言葉だと思ってくださいね」


 ヒナが言った。


 「田中さんのことば?」


 「はい。田中さんが何かに驚いたけど感情を出さないときに言う言葉です」


 「……おもしろい」


 エリナがメモした。


 「田中さんのことば:ふーん」


 と書いていた。


 俺はそれを見て、少し笑った。


 「田中さん……いまわらいましたね?」


 「そうですか?」


 「はじめてみました。田中さんがわらうかおっ!」


 「笑っていませんでしたか、今まで?」


 「ちいさくは。でも、はっきりわらったのは、はじめてです!」


 「そうですかね?」


 「……うれしいです!田中さんがわらってくれると」


 「エリナさんが面白いことを書いていたので」


 「また、かきます!」


 「よろしくお願いします」


公園配信 — 同接:3,114,004

ガチ勢777:エリナちゃんが「ふーん:田中さんだけが使う言葉」をメモしたの尊すぎる

エトウ:おにぎりのかたちをシルヴィアへの報告書に書いて帰るエリナちゃん

匿名A:「両方きれい」を公園で言えた田中さん エリナちゃんに伝えられてる

プロ冒険者X:向こうからも登録できたら登録者数どうなるんだ!?

ヒナ推し最前線:田中が「はっきり笑った」のエリナちゃんが初めて見たって言ったの泣きそうだ。

シルヴィア推し:シルヴィアが二十年間田中さんを分析してた話が続いてる 会いたいね

匿名B:「両方を持っている人は強い」というシルヴィアの言葉ってどーゆーこと?



 夕方、施設に戻った。


 エリナが疲れた顔をしていた。


 「……つかれましたか?」


 「はい。でも、いいつかれです」


 「いい疲れ、という言葉を知っているんですね」


 「ヒナさんにおしえてもらいました。きのう」


 「一日でよく覚えましたね」


 「つかいたかったので」


 エリナが施設のソファに座った。


 「田中さん」


 「はい」


 「きょうみたもの、ぜんぶ、姉にはなしたいです!」


 「何が一番印象に残りましたか?」


 エリナがしばらく考えた。


 「……そら。あおいそら」


 「空ですか?」


 「むこうのそらもすきです。でも、こちらのそらをみたとき、姉がどんな顔をするか、みたくなりました」


 「シルヴィアに見せたい、と?」


 「はい。姉は……むこうのそらしかしらない。こちらのそらをみたら、どう思うか。わたしも……りょうほうをしっているひとになりたいです。田中さんのように」


 「なれますよ」


 「なれますか?」


 「今日から、こちらを知っている。向こうもすでに知っている。両方持っています」


 エリナが目を丸くした。


 「……もう、りょうほう?」


 「そうです」


 「きょうだけで?」


 「知ることに時間は関係ない。一日でも、二十年でも——両方を知っていれば、両方持っています」


 エリナがしばらく黙った。


 それから、静かに言った。


 「……姉が、田中さんを好きな理由が、すこしわかりました」


 「そうですか?」


 「こういうひとだから、と」


 「どういう人ですか?」


 「……ことばで、ひとを、つよくする人」


 俺は何も言わなかった。


 言葉が見つからなかった。


 ヒナが後ろで静かに「よし」と言っていた。


 小声だった。


 俺に向けて言ったのか、自分に言ったのか、わからなかった。


 どちらでも、良かった。



 夜、帰り際にエリナが俺を呼んだ。


 「田中さん、もう一つ、つたえることがありました」


 「何ですか?」


 「姉から。……いちばんたいせつなつたえごとを、わすれていました」


 「どんな言葉ですか?」


 エリナが少し姿勢を正した。


 「姉が言いました。「田中さんに伝えてほしい。こちらに来るのを急がなくていいです。でも、来てくれるのを楽しみにしています。来てくれたとき、今度は笑って迎えられると思うから」と」


 俺は少し間を置いた。


 「……笑って迎えられる、というのは?」


 「最初に会ったとき、姉は泣いてしまった、と。今度は泣かないで笑って迎えたいと言っていました」


 「……シルヴィアらしいですね」


 「そうです。姉は……めんどうくさいひとです。」


 エリナが少し笑った。


 「でも、だいすきです!」


 「そうですね」


 「田中さんも、すきですか。姉が」


 俺は少し考えた。


 「好きですよ。大切な人です」


 「…よかった」


 「なぜよかったんですか?」


 「姉が、よろこぶので」


 「そうですか。」


 「では、つたえます。田中さんも、すき、と」


 「よろしくお願いしますね」


 エリナが頷いた。


 「……田中さん、また、あした来てくれますか?」


 「来ますよ」


 「うれしいです!」


 「おやすみなさい、エリナさん」


 「おやすみなさい、田中さん」


 エリナが扉を閉めた。


 俺は施設の前に立った。


 夜だった。


 星が見えた。


 こっちの空は星々が輝いている。


 向こうの星とは違う。


 でも、きれいだった。


 ヒナが隣に来た。


 「田中さん」


 「はい?」


 「シルヴィアさんのこと、好きって言えましたね」


 「言えましたね」


 「大切な人とも」


 「そうです」


 「……うちのことも、そう思ってますか?」


 俺は少し間を置いた。


 「思っています」


 「…はっきり言えましたね」


 「言えましたね」


 ヒナが星を見た。


 「……エリナちゃんが来てから、田中さん、なんかすこし変わりましたよ」


 「変わりましたか?」


 「笑ったし、はっきり言えるし」


 「エリナさんが面白い人なので」


 「そういうことにしておきます」


 ヒナが笑った。


 「……よし!」


 「今回の「よし」は何の意味ですか?」


 「内緒です」


 「内緒にするんですか?」


 「たまにはいいでしょう?」


 「そうですね」


 夜の道を、二人で歩いた。


 星が、点々と光っていた。



【感想】エリナちゃん「ことばでひとをつよくするひと」でシルヴィアちゃんが田中さんを好きな理由が全部わかった件

1 名無しさん : 「今日だけでもう両方を持っている」という田中さんの言葉でエリナちゃんが変わった瞬間 これが王の器


2 名無しさん : 「ふーん:田中さんだけが使う言葉」をメモするエリナちゃんが今話MVP


3 名無しさん : シルヴィアの「次は笑って迎える」という伝言が田中さんへの二十年分の想いの続き


4 名無しさん : 「好きですよ、大切な人です」をはっきり言えた田中さん これをヒナちゃんに言える日が来るといい


5 名無しさん : 「よし」の意味が「内緒」になったの ヒナちゃんがカードを持ち始めてる


6 名無しさん : おにぎりのかたちをシルヴィアへの報告書に書いて帰るエリナちゃんの純粋さが好き


7 名無しさん : 田中さんが「はっきり笑った」のをエリナちゃんが初めて見たと言ったのにヒナちゃんが何も言わなかったのが逆に泣けた


8 名無しさん : 登録者2700万突破 エリナちゃんが来てから勢いが増してる


色々と分かりづらい所があると思いますが、今後制作する番外編(100話位?)で分かるように書きます。

予告をすると、田中の異世界についての話になります。

※100%異世界生活で配信は関係ありません。おじさんでもない予定です。

内容は、ある程度は決まってはいるのですが、タイトルが思い浮かびませんので、タイトル名を募集します!

一番私に響いたものを採用したいと考えています!

(自分でも考えますが)


良かったら、考えてみてください!

でわでわ~

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