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クビになった冴えないおじさんがダンジョン配信を始めたら、なぜか登録者100万人超えてしまった件〜俺、実は最強だったらしい〜  作者: あっかんべー
第1章:異世界と配信とおじさん

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第22話 シルヴィアが、ヒナに話しかけた

 三日目の昼過ぎ、シルヴィアがヒナを城の中庭に呼んでいた。


 俺は知らなかった。


 知ったのは、サクラが「配信に乗せました」と報告してきたからだった。


 中庭は城の中ほどにある、四角い庭だった。石畳の床に、小さな噴水があり、その周りに白い花が咲いていた。


 シルヴィアがヒナを呼んだのは、この中庭だった。


 二人が向き合って立った。


 シルヴィアが先に口を開いた。


 「……白川ヒナさん」


 「はい」


 「少し、お話してもいいですか?」


 「…大丈夫です」


 シルヴィアが噴水の縁に手を置いた。


 「単刀直入に聞きます。陛下のことを、好きですか?」


 ヒナが止まった。


 「……聞きますか、それ?」


 「聞かせてください」


 「なんで急に?」


 「急ではありません。来てから三日間、ずっとあなたを見ていました」


 ヒナが少し間を置いた。


 「…シルヴィアさん、二十年待ってたんですよね」


 「そうです」


 「それで……私に聞くんですか?」


 「だから聞くんです」


 「…どういう意味ですか?」


 シルヴィアが噴水から手を離した。


 「二十年間、陛下のことを考えてきました。どんな人がいても、どんな状況でも、陛下を待つと決めていた。ただ——」


 「ただ?」


 「陛下が向こうの世界でどんな人たちと出会ったか、今この目で見ている。あなたが陛下のそばにいてくれた。それは……私には、できないことでした。二十年間、ここで待っていたから」


 ヒナが黙った。


 「だから聞きたかった。あなたが陛下のことをどう思っているか。向こうの世界で、どんな存在だったか」


 ヒナがしばらく黙った。


 噴水の水音だけが、静かに聞こえていた。


 「……好きです」


 ヒナが言った。


 「最初は変なおじさんだと思ってました。スーツ姿に革靴でダンジョン入って、魔物倒して、クリーニング代を心配してる人。なんだこれって思ってました」


 「そうなんですか?」


 「でも……気づいたら、田中さんがいれば大丈夫だと思うようになってた。どこでも。怖い場所でも、知らない世界でも。田中さんがいれば、うちは怖くない」


 シルヴィアが静かに聞いていた。


 「それって……好きってことなんだと思う。うちが感じてる気持ちは」


 「そうですね」


 「…シルヴィアさんは?」


 シルヴィアが答えた。


 「私も、好きです」


 「…そう、ですよね」


 「少なくとも、二十年、待てるくらいには」


 「……それはうちには負けますよ?」


 「期間で測るものではないと思いますよ?」


 ヒナが少し笑った。


 「……シルヴィアさんって、ずっと真剣ですね」


 「真剣にならないと、言えないことがあるので」


 「そうですか……」


 ヒナが噴水を見た。


 「一つ聞いていいですか?」


 「どうぞ」


 「田中さんって……陛下って、どんな人でしたか?二十年前」


 シルヴィアが少し目を細めた。


 「……今とほとんど同じです。礼儀を気にしない。名前で呼ぶ。跪かれるのが嫌い。誰かが傷つく前に自分が動く」


 「そういうところ、変わってないんですね」


 「変わっていません。ただ」


 「ただ?」


 「向こうで生きた二十年で、重さが加わりました。それが今の陛下です。私は、今の陛下の方が好きです」


 ヒナが驚いた顔をした。


 「二十年待ってたのに、今の方が好きっていえるんですか」


 「待っていた理由が、今の陛下を作ったから。あなたたちと出会ったことも含めて。それが嬉しいんです」


 ヒナがしばらく黙った。


 それから、言った。


 「……シルヴィアさんって、すごいですね」


 「そうですか?」


 「うちだったら……複雑になると思う。でもシルヴィアさんはそれを嬉しいって言える」


 「複雑になることもあります。あなたが来たとき、正直、一瞬だけ」


 「一瞬だけ?」


 「……羨ましかった。陛下のそばにいた時間を」


 ヒナが黙った。


 「でも、感謝の方が大きかった。あなたがそばにいてくれたから、陛下は孤独ではなかった。それが何より大事だった」


 「……シルヴィアさんって、本当に陛下が好きなんですね」


 「そうです」


 「うちも、田中さんが好きです!」


 「知っています」


 「じゃあ」


 ヒナが噴水の縁に手を置いた。


 「……ライバルとして、よろしくお願いします」


 シルヴィアが少し間を置いた。


 それから、笑った。


 泣きながら笑う、あの笑い方だった。


 「……よろしくお願いします」


 二人が噴水の前で向き合っていた。


 白い花が風に揺れていた。



 サクラが配信に全部載せていた。


 俺はそれを後から知った。


 「……なぜ載せたんですか?」


 「重要な記録と判断しました」


 「俺に黙って?」


 「田中さんがいると、二人が話しにくそうでした。私も最初は離れようとしたんですが、あまりにも重要な会話だったので」


 「はあ?」


 「コメント欄が爆発していました」


 「そうですか。」


 「田中さんはどう思いますか?」


 俺は少し考えた。


 「二人が話してくれたことが、嬉しいです」


 「それだけですか?」


 「ライバルとして、と言ってくれたことも」


 「どう思いましたか?」


 「……重いです」


 「重い?」


 「二人から大切にされているということが、重さとして伝わっています。どう返せばいいかはわかりませんが、受け取りました」


 サクラが手帳を開いた。


 「記録します」


 「記録しなくていいです」


 「重要です」


 「どこが?」


 「田中さんが初めて自分が大切にされていることを言語化した記録です」


 俺は少し黙った。


 「……記録してください」


 「します」


 サクラが丁寧にメモした。


 「田中さん、一つ聞いていいですか?」


 「どうぞ」


 「ヒナとシルヴィアさん、両方大切ですか?」


 「大切です」


 「選ぶ気はないですか?」


 「今は、ないです。選ぶことが正しいとも思っていない」


 「それを二人に言えますか?」


 「言います。…機会があれば」


 「機会は自分で作るものですよ?」


 「……そうですね」


 サクラが手帳を閉じた。


 「田中さん、私も応援しています」


 「何をですか?」


 「田中さんが田中さんらしく生きることを」


 「……ありがとうございます」


 「はい。では次の配信の準備をします」


 サクラが歩いていった。


 相変わらず、仕事が速かった。


中庭配信 — 同接:5,441,882

全員:ライバル宣言!!!!!!!!シルヴィアちゃんとヒナちゃん!!!!!!!

ガチ勢777:「羨ましかった、でも感謝の方が大きかった」このシルヴィアちゃんの言葉が全部

エトウ:ヒナちゃんが「シルヴィアさんすごい」って言えたの ちゃんと認めてる

匿名A:「今の陛下の方が好き、待った理由があなたたちを作ったから」 こんな言葉言える人になりたい

シルヴィア推し:シルヴィアちゃんが泣きながら笑った あれが全て

ヒナ推し最前線:ヒナちゃんが「よろしくお願いします」って言えた 強くなったよ

匿名B:サクラちゃんが確信犯で全部配信乗せてたの笑うけど助かった

田中武志ファン:「重さとして受け取りました」田中さんがちゃんと受け取れるようになってきてる



【神回】シルヴィアとヒナの「ライバル宣言」で全世界が泣いた件

1 名無しさん : 二人とも「好きです」を認め合った上でライバル宣言 こんな展開ある? 最高すぎる


2 名無しさん : 「待った二十年があなたたちを作ったから嬉しい」 シルヴィアちゃんが今話MVPだよ


3 名無しさん : 田中さんが「重さとして受け取りました」って言ったの ちゃんと言語化できるようになってる成長


4 名無しさん : サクラちゃんの「機会は自分で作るもの」は今後の田中さんへの宿題


5 名無しさん : 「どう返せばいいかわからないが受け取った」 これが田中さんの精一杯で、でも十分すぎる


6 名無しさん : 噴水の前で二人が向き合ってた場面 絵画みたいだった


7 名無しさん : 登録者2000万突破してた!!!!


8 名無しさん : この後で記憶全回収が来る予感がする 早く見たい

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