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五色玲瓏のフィリグラン  作者: るーく
8/22

親切

初ブックマークありがとうございます!

突然だが俺は商店街に来ていた。


というのも、晩御飯の準備をしようとしていたところ冷蔵庫の中がかなり寂しいことになっていたことに気づいた母さんが買い物に行こうとしたところを俺が変わったからだ。


(野菜はどこで売ってるんだ?デパートとかなら天井に案内板みたいなのがあるけど、商店街は無いから自分で探すしかないか)


近くにデパートもあるにはあるらしいが、こっちで買った方が色々安いらしい。


魚や肉だけでなく、コロッケも売っているようで見ているだけでお腹が空いてくる。さらに、客寄せのためか匂いも周りに広がるようにしているのだ。嗅覚にも訴えかけてくるのは少し反則ではなかろうか。


(帰りに1つ買って帰るか。だったら、母さんの分も合わせて2つか)


そんなふうに呑気に考え事をしながら歩いていると何やら俺は視線を集めているらしい。


(ん?俺なんかしたっけ?)


思い当たるところは無いかと頭を悩ませていると、ゲームでの設定を思い出した。


(あー、確か乙黒家ってあんまりいい噂がなかったはず。それでか)


乙黒家は代々黒い噂が絶えない家系であり、町中では人身売買やら薬物売買に関わっているため必要以上に近寄るべきでは無いなんてことが噂されている。


ではなぜ、乙黒家が警察やらに家宅捜査をされないのかと言えば一重に血筋によるものとされている。以前言った、家格の高さというのはこの国を治める帝の血が流れているかという部分によって決まる。それも初代に近いほど尊い血として扱われる訳だが、うちの乙黒家は初代帝と兄弟の関係に当たる。そのため、そこら辺の家よりもずっと地位としては高いところにあるのだ。しかし、法律的には四民平等が歌われており何でもわがままが言える訳では無い。


とはいえ、初代帝の兄弟の血を引くというのはかなりのアドバンテージとなっており、あらゆるところに顔をきくのだ。


これが乙黒家が今なお続いている理由らしい。


(で、乙黒の血を引く俺は民衆からしたらあんまり関わりたくない相手なんだろうな)


腫れ物のような扱いをされるのは本意では無く、他の人も俺には関わりたくないだろうと言うことでさっさと買い物をして帰ろうかと思った時、


「···わ!」

「おっと」


買ってもらったばかりのおもちゃを手に持ちながら走る少女が突然飛び出してきて俺にぶつかり尻もちをつく。


大丈夫?と手を差し伸べようとしたところ、その子の母らしき人が目の前に出てきて頭を下げる。


「す、すみません!よく言い聞かせるので許していただけないでしょうかっ!?汚れてならばその分のお金も支払います!なのでどうかどうかこの子を許して貰えないでしょうか!」

「ままぁ?」


状況が分からず焦る母の様子を見て少女は母を呼ぶ。


「ほらあなたも謝りなさい!」


子を守るため母は謝らせようとするが、そのあまりの剣幕に少女はびっくりして瞳に涙をため始める。


このままではいけないと思った俺は慌てて制止する。


「いやいや!そんな畏まらなくていいですって!特にこっちが怪我した訳でもないし、何も要求しませんから!それより、君は怪我はないかな?」


涙目の少女に対して目線を合わせてそう尋ねる。


少女はこくこくと頷いていることから特に怪我はなかったらしい。俺は見覚えのあるおもちゃを指さしながら尋ねる。


「それは何のおもちゃなの?」

「マジックアイドルのアイちゃんのおもちゃ···」

「そっか、アイちゃんはどんなところが好きなの?」

「うん!あのね、とても強くてかっこよくて可愛いから好きなの!お姉ちゃんとよく一緒に見るんだよ!」


どうやら本当に好きなようで先程とは打って変わって楽しそうに喋り出す。


「じゃあ、それは君にとって大事なものなんだね。だけど、今みたいに前を見ずに走ったらコケた拍子に壊れるかもしれないよ?」

「やだ···」

「でしょ?それに今回は何も無かったけど君もぶつかった人も怪我をするかもしれないからね。痛いのは嫌でしょ?」

「うん」

「だったら、次からはお母さんの言うことを聞いて前を見て歩くんだよ?」

「分かった!ごめんなさい、お兄ちゃん」

「よし、いい子だね」


軽く頭を撫でてあげると少女は嬉しそうに笑う。


そして、俺たちの様子を惚けたように見ていた母親の方に声をかける。


「さっきも言った通り本当に何も無いんで気にしないでください」

「あ、あの本当にいいんですか?」

「はい、後ちゃんと反省してるみたいなのであまり怒らないであげてください」

「あ、ありがとうございます!」


俺は買い物の続きをするかと最後に母娘に手を振ってからその場を後にする。


「バイバイ、かっこいいお兄ちゃん!」

「ありがとうございました!」


無邪気に手を振る少女と改めて頭を下げる母親を見送り、八百屋を探し始める。


すると、割と近くに店頭に野菜を並べている店が見つかった。


(買わないといけないのはっと)


ケータイを取り出し、メモを確認する。特に変わったものは無いため、上から書かれている順に野菜を手に取っていく。


(せっかくだし、できるだけ新鮮なやつを選ぶか)


そこまで目利きができる訳では無いが、何となく新鮮そうなものを選んでいると、


「おい」

「はい?」


突然店主から話しかけられた。目つきの悪い俺が人のことを言えたことでは無いが店主はスキンヘッドの強面で何事かと少し構える。


「そっちじゃない。右の方が新鮮だ」

「あ、はい···ありがとうございます」


身構えたもののどうやらただの親切なおじさんだったようだ。俺は店主の言う通りに新鮮な方を手に取ることした。そうして、メモに記された分を全て手に取り、お金を払うため店主の元へと向かう。


「これでお願いします」

「1040円だ」

「はい」


財布からお札と小銭を取りだして店主に手渡す。それを受け取ると興味なさげにまた通りへと視線を向ける。


(どうして教えてくれたんだろうな)


先程の店主の行動を思い出して不思議に思いながらもその場を後にしようとすると、


「親切には親切で返す。それがこの商店街でのルールだ」

「え?」

「坊主はさっきのガキに優しくした。だからだ」

「な、なるほど」

「分かったらさっさと帰りな」


商売の邪魔だと言わんばかりにしっしっと犬を追い払うように手を振る店主を後にした。


なんというか乙黒家ということでいらない視線まで集めることになって少し居ずらく、あまり進んで来たくはないと思ってたのだが、


「···また来るか」


悪くは無いと思った。


読んでくださりありがとうございます。良ければ感想や評価をください。やる気にも繋がりますし、何より嬉しいです。

木曜日のPVが前日の2倍近くになっており、驚きました。それに継続して読んでくださってる方も多く、書いている側としてはめちゃくちゃ嬉しいです。


また、今回はおまけっぽい本編でしたが次からさらに話を進めていきたいと思っていますのでお付き合い下さい。


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