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五色玲瓏のフィリグラン  作者: るーく
7/22

続く出会い

念の為言っておくと、主人公本来の口調は心の中で話している時のものなのですが、現実では負い目のある母親や目上の人間、年下と思われるヒロインたちとしか話さないので柔らかい口調で話すことが多いです。

「···死ぬ」


ボロボロの体を引きずりながら俺は街中を歩いていた。


(いくら学園が始まるまでに色々なところを見ておきたいからって今日はやめとけば良かった)


午前中の訓練でできたアザを擦りながらそんなことを思う。時間は有限ではあるが、今日行くべきでなかったことは確かだ。


(とはいえ、ここまで来たからには引き返す訳にはいかないし。家にいたとしても母さんからは今日一日はこれ以上の訓練を禁止されてるんだよな)


俺が元いた場所と何ら変わりない風景の中を少し見た目の異なる者たちが生きている。違和感が未だに残るが、これがこの世界の普通である。早く慣れなければ、と思いつつまた先に進もうとした時、


「のう、お主」

「ん?」


後ろから声をかけられ、振り向くが誰もいない···なんてお約束をすることも無く、顔を下げ声の出処へと視線を向けた。


「何か用···です、か」


自分に用があるのかと訪ねようとしたが想定外のことに思わず言葉が途切れる。


頭に生える狐耳、肩まで伸びた絹のように艶やかな金髪に整った顔つき。身長は俺の胸ほどだが、紛れもなく俺と同年代だ。さらに、腰には慎重に似合わず馬鹿長い太刀を携えていることから彼女は紛れもなく俺の知る人物だということが分かる。


「どうかしたのか?」


俺の心を読み取れるはずのない彼女は俺の普通では無い様子に疑問を呈する。


(何で声をかけてきた?蓮とこの子が知り合い

なんて描写はなかったよな)


少し警戒しつつも、


「いや···知り合いに似てたから驚いたんだよ」


俺はそう言って誤魔化すが、勘が鋭いのか少し釈然としないまま彼女は自己紹介へと話を進める。


「まあよい、突然話しかけてすまんな。妾は草薙流風(くさなぎるか)というものじゃ」

「俺は乙黒蓮。蓮でいいよ」

「そうか、なら妾も流風でよい」


分かっていたもののこうしてきちんと本人の口から名前を聞くことでやはりかと思いつつ俺も自己紹介を行う。


「実は今年からあそこに見える魔法学園に通うことになったのじゃが、何分初めて来たもので道が分からなくて。お主の様子を見るにここら辺に住んでおるのじゃろ?良ければ案内をしてほしくてのう···」


俺は彼女の言葉を聞き、いつ間にか入っていた肩の力を抜いて返答する。


「まあ、ここら辺に住んでるっちゃ住んでるんだけど、学園までの道は詳しくはないんだよね」

「そうか···」


断られたと勘違いしたのか彼女は少し肩を落とす。


「それでも、流風よりかは知ってるだろうし俺でよければ案内しようか?」

「な!?良いのか!」

「時間はあるから」

「ぜひ頼む!」


目をキラキラさせてそういう彼女は言葉遣いとは反対に幼く見える。


(イレギュラーとはいえメインキャラに恩を売れる機会だ。それに、本編で蓮が取っていた行動とは反対のことをしてれば死ななくて済むかもしれないしな)


純粋な好意ではなくメリットを考えた上での行動に対して想像以上に喜んでいる彼女に申し訳ない気持ちが芽生える。


「家から出てきてずっと一人じゃったから心細かってのう!お主のような相手に会えてよかった妾は幸運じゃ!」

「そ、そっか」

「よろしく頼むぞ、蓮!」

「こちらこそな」


手を差し出してきた流風の手を握り、改めて挨拶を交わした。


詳しい道を知らない以上何となくで道を選びつつ、何気ない会話を行う。


「ここら辺に初めて来たってことはよっぽど遠くから学園に通いに来たの?」

「そうじゃ。サウルという辺境も辺境からな。ここみたいな都会とは違って山や川に囲まれた大自然中で育ったものよ」

「ここは住宅街だから言うほど都会って訳じゃないけどね。学園から見て西、地名としては西区って呼ばれる場所はもっと人が多いよ」


俺はゲーム内の知識も活用しながら話を広げる。


「そうなのか、そっちにも行ってみたいものじゃな。···そうじゃ!お主が良ければでいいんじゃが、時間がある時に西の方も案内してくれんか?」

「俺で良いの?」

「うむ!こっちの知り合いはお主しかおらんからな。よろしくお願いしたい」

「分かったよ、俺もあんまり詳しくないけどそれで良ければ案内するよ」

「それもそれで楽しそうではないか!知ってるものばかり見てもつまらんしな!」

「確かに」


そうして新しく約束を交わした時、妙案が思いついた。


「迷惑じゃなければ俺の友達も連れてきていいかな?」


そう、あの時友達という言葉に蒼桜は反応していた。しかし、別に友達がいらないという訳ではなくどちらかと言えば欲しているようにも見えた。なら、これは良いチャンスだろう。


「蓮の友達か!良いぞ、お主の友ならきっと良い奴に決まっておる!」

「それは言いすぎな気がするけど、悪い奴ではないよ」

「そうかそうか!その友によろしく伝えておいてくれ」

「任せてくれ」


次会う日にちについて話しているうちに気づけば学園はすぐ目の前にあった。


「むぅ、着いてしまったな。お主と会うまでは早く着いて欲しいと思っておったが、こうして仲良くなれた今、もう少し時間が欲しかったと思うのは贅沢じゃろうか」


残念そうに流風はそう言う。


「今度西区に行くのを除いてもまた会うわけだし。まぁ、今年からよろしく」

「今年から?」

「言ってなかったっけ?俺も今年から学園に通うんだよ」

「な!?聞いておらんぞ!」

「それは悪かった」

「うぬぬ、全く反省していなそうなんじゃがまあよい。これからもよろしく頼むぞ」

「あぁ、よろしくな」


ここまで来れば大丈夫と学園の近くで別れ、ぼっーとしながら歩く。


(まさかここで流風に会うとはな。想定外のこともあったが収穫はあったわけだし、良しとするか。とりあえず、家に帰って蒼桜に西区に行くことを伝えなくちゃな)


そんなことを考えながら俺は来た道を引き返した。

読んでくださりありがとうございます。感想や評価をくださると嬉しいです!

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