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五色玲瓏のフィリグラン  作者: るーく
15/22

開幕


青年はにこやかに言葉を続ける。


「いやはや、まさかここがバレるとは思いませんでしたよ。どうやって見つけたんですか?」

「教えるわけないだろ」

「おや?昼間とは話し方が少し異なるようですね?猫でも被ってるんですか?」

「お前には関係ない。昼間ってことは、やっぱりあの時こちらを見てたのはお前だったのか」


ケータイショップにいた時にこちらを睨んでいた青年と目の前にいる青年が重なる。違いと言えば昼間は眼鏡をかけていなかったぐらいだろう。


「昼間はお見苦しいところをお見せしました。こちらとしてもプロットを壊されたことで苛立っておりまして」

「プロット···?」


何を言い出すかと思えば作家のようなことを言い始める。


「そうです。私と彼女が結ばれるラブロマンス。そのプロットです」

「······」


彼の言っていることを理解が出来ない。


「根も花も無い噂により学園で孤立し、悲嘆にくれる彼女。それを見て心を痛めた私があちこちに手回しして噂は彼女に悪意を持った人間が流したものだと突き止める。それらの証拠をもって彼女に声をかけた後、二人でその悪人を追い詰め、学園につきだす。二人で過ごすうちにお互いを意識し始めた私たちは自然と恋仲になる···というのが元々のプロットでした。あぁ、もちろん悪人はテキトーに用意するつもりでしたよ?」

「学園で孤立?」


何の捻りも無い、どこにでもありそうな物語を俺は聞かされる。しかし、その中に聞き流せない部分があった。


(もしかすると、蒼桜が仲良くして欲しいって言ってたのは···)


「聞いてないのですか?今は彼女が一人になるところまで進んでます。割と時間がかかってしまいましたよ」


何でもないように語る彼に怒りが湧く。


(あの子の気持ちは完全に無視かよ)


しかし、この状況を考えれば手を出すことは難しい。感情的になってはダメだと深呼吸してから話しかける。


「そのプロットは壊れたと言ったよな?お前は今何を考えてるんだ?」

「そうですねぇ···言うなれば一度幸せになった彼女をもう一度絶望に落とす、でしょうか?」


顎を指で擦りながらそんなことを言う。


「軌道修正ですよ。絶望に中にいる彼女に私が手を差し伸べるための。そのためにあなたにもぜひ協力してもらいましょう」


蒼桜が黒い煙の中にいる以上こちらからは手が出せない。強く拳を握りながらそれでもなお一言一句聞き逃さないように耳を傾ける。


「実はですね、今私たちがここにいる理由は船を待ってるからなんですよ」

「···船?」

「えぇ。その行先は南国の島などではなく、奴隷市場ですがね?」


こちらの心を読み取ったかのように話を続ける。


「この時代に奴隷市場などあるわけが無いと思ったでしょうが、あるところにはあるのですよ。それでですね、彼女は奴隷市場にて見世物として扱われ、いつ自分が売られるか分からない中であなたが助けに来ると信じて待つ。そんな彼女の前に既に動かない死体と化したあなたが現れる。そこで、完全に希望を失った彼女を助けに私が登場する···これが今のプロットです」

「反吐がでるようなプロットだな」

「凡人には理解出来ませんよ」

「それで?蒼桜を人質にして俺を捕まえる気か?」


さすがにそうなればこちらも一か八かで抵抗させてもらうが、


「いいや?私が手を加えるのは下準備だけで登場キャラクターを自ら害すことはしません」

「蒼桜を攫うのは登場キャラクターを害すことになるんじゃないか?」

「それは物語を始めるためのただの下準備です。ここから先私はもうこのシナリオには手を出しません。このシナリオで次に私が登場するのは彼女を助ける時だけですので」

「俺にこうして話しかけているのは?」

「今はあなたというキャラクターに役割を与えているのですよ。ただの話を面白くするための脇役ですがね。自身の運命を知った上でそれに抗い、力及ばず命果てる青年、それがあなたの役割です」

「···!?」


まるで俺自身のことを見透かしたようなキャスティングに何か知っているのか、と動揺するがそれなら初めから俺の存在を加味したシナリオを作るはずだとその考えを否定して、誤魔化すように憎まれ口を叩く。


「随分と良い配役だな。だけどそれは役不足だと思うぞ」

「正しい意味をご存知で?」

「正しい意味で使ってるんだよ」


俺の言葉に青年はニヤリと笑うと、道化のようにくるりと回り、大袈裟に頭を下げる。


「さあさあ、これ以上の無駄話は観客席も冷めることでしょう。まもなく幕は上がります」


その言葉と共に今度は俺と青年の間に黒い壁が現れ、大男との間の壁が消えるがどこからか青年の声が聞こえる。


「罪なき人々を攫い、奴隷市場で売りさばく。誰が呼んだか、彼を知るものは恐れを込めてこう呼ぶ、岩鬼デニスと。それに対するは自らの運命を知りながらも友人のためにその命を賭ける脇役、乙黒蓮。勝利の女神はどちらに微笑むのか?ナレーターは私、作家(スクリプトル)がお送り致しました」


戦いの幕は上がる。

読んでくださりありがとうございます!


今回も短くはありますが次から念願のバトルシーンを書いていきたいと思います。

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