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投稿エラーしてやり直し…orz
「じゃあな、遼介。明日、学校行くだろ?」
哲哉にポンッと肩を叩かれ、遼介は苦笑して頷いた。
「ああ。出席日数そろそろヤバイしな。じゃあ」
遼介は軽く手を上げると、哲哉と分かれて帰路についた。
他の人とは、既に別れてしまった後である。
のんびりとした足取りで、遼介は歩きだした。
「………一足遅かったみたいだね」
少女が呟くと、大きな獣が喉の奥を鳴らし、それに答える。
「……仕方ないよ、砕牙。人ごみの中で砕牙や翔波にでて来てもらうわけにはいかないし…」
少女は静かに言って、傍らの大きな温もりにそっと手をさしのべた。
少女の掌が、美しい白金色の毛並みにうずもれる。
「でも…変だね…」
少女が地面に膝をつき、しゃがみこむと、大きな虎は少女に体をすり寄せた。
少女は虎の首筋に顔をうずめる。
「…………それに…」
虎と少女の周囲をうろうろとしていた白猫が、鳴き声をあげた。
「…うん。微かに残った気配…」
虎と少女は、白と黒の猫が見上げている家を見やる。
少女と虎は、視線を交わした。
しばらくそのまま微動だにせず、周囲の静けさに耳を澄ます少女。
彼女を見守る虎と、二匹の猫。
その時、虎が少女の背中越しに鋭い視線を投げた。そして優しく少女に注意をうながす。
少女がスッと顔を上げる。同時に、虎の姿は消えていた。
虎の見ていた道の角に、一人の人間が現れた。
少女は無言で猫たちに腕をさしだす。
白猫が喜んで飛び乗り、少女の肩に登った。
黒猫は、動かない。現れた人間に、鳴き声を上げる。
その人物…遼介は歩みを止め、目の前の少女を驚いたように見つめる。
少女はゆっくりとした動作で立ち上がった。
遼介はハッキリと少女の顔を覚えていた。居酒屋で見た、あの少女に間違いない。
肩の上の白猫も、遼介に視線を向けている。
「………………」
少女が静かに振り返った。彼女は無言で、突然の闖入者に視線を浴びせかける。遼介はただ、立ちつくすばかり。
「現…」
先に動いたのは少女。じっと遼介から目を離さない黒猫に、手をさしのべる。
ちらりと少女を見やり、黒猫はその腕に飛び乗り、肩に登る。
スッと腰をのばした少女は、悠々と遼介に背を向け、歩み始めた。
二匹の猫は、遼介から目を離さない。
少女の姿が角を曲がり、視界から消えると、遼介はハッと我に返った。
少女の消えた角まで走り、彼女の消えた方向を確かめる。
何故とはなしに、気になった。
見つめた先の道路には、既に少女の姿はなかった…。
頼りなげな街灯が、微かに闇を照らしている…。
「砕牙、明日もう一度、行ってみよう」
少女が呟いた。応えるものは、ない。
小さな呟きは、闇に溶け込んだ。
住宅地を覆う闇の中、少女はたった一人で歩いて行く。
その肩に、猫の姿はなかった…。
* * *
またひとつ、悲しみが生まれた…。
またひとつ、血が流れた…。
またひとつ、憎しみが生まれた…。
終わらない悲劇の循環。
倍増する、憎しみの輪…。
抜け出せない。
もがき、苦しみながら…。
悲しみながら…。
人間は何故、人間を憎まずにはいられないのだろう…。
* * *
主人公の名前がまだ出てないという…笑