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神宿り  作者:
第1章
9/103

8

投稿エラーしてやり直し…orz

「じゃあな、遼介。明日、学校行くだろ?」

 哲哉にポンッと肩を叩かれ、遼介は苦笑して頷いた。


「ああ。出席日数そろそろヤバイしな。じゃあ」

 遼介は軽く手を上げると、哲哉と分かれて帰路についた。


 他の人とは、既に別れてしまった後である。

 のんびりとした足取りで、遼介は歩きだした。





「………一足遅かったみたいだね」

 少女が呟くと、大きな獣が喉の奥を鳴らし、それに答える。


「……仕方ないよ、砕牙さいが。人ごみの中で砕牙や翔波(しょうは)にでて来てもらうわけにはいかないし…」

 少女は静かに言って、傍らの大きな温もりにそっと手をさしのべた。

 少女の掌が、美しい白金色(プラチナ)の毛並みにうずもれる。


「でも…変だね…」

 少女が地面に膝をつき、しゃがみこむと、大きな虎は少女に体をすり寄せた。

 少女は虎の首筋に顔をうずめる。


「…………それに…」

 虎と少女の周囲をうろうろとしていた白猫が、鳴き声をあげた。


「…うん。微かに残った気配…」

 虎と少女は、白と黒の猫が見上げている家を見やる。

 少女と虎は、視線を交わした。


 しばらくそのまま微動だにせず、周囲の静けさに耳を澄ます少女。

 彼女を見守る虎と、二匹の猫。


 その時、虎が少女の背中越しに鋭い視線を投げた。そして優しく少女に注意をうながす。


 少女がスッと顔を上げる。同時に、虎の姿は消えていた。

 虎の見ていた道の角に、一人の人間が現れた。


 少女は無言で猫たちに腕をさしだす。

 白猫が喜んで飛び乗り、少女の肩に登った。

 黒猫は、動かない。現れた人間に、鳴き声を上げる。


 その人物…遼介は歩みを止め、目の前の少女を驚いたように見つめる。

 少女はゆっくりとした動作で立ち上がった。


 遼介はハッキリと少女の顔を覚えていた。居酒屋で見た、あの少女に間違いない。

 肩の上の白猫も、遼介に視線を向けている。


「………………」

 少女が静かに振り返った。彼女は無言で、突然の闖入者に視線を浴びせかける。遼介はただ、立ちつくすばかり。


うつつ…」

 先に動いたのは少女。じっと遼介から目を離さない黒猫に、手をさしのべる。

 ちらりと少女を見やり、黒猫はその腕に飛び乗り、肩に登る。


 スッと腰をのばした少女は、悠々と遼介に背を向け、歩み始めた。

 二匹の猫は、遼介から目を離さない。


 少女の姿が角を曲がり、視界から消えると、遼介はハッと我に返った。

 少女の消えた角まで走り、彼女の消えた方向を確かめる。


 何故とはなしに、気になった。

 見つめた先の道路には、既に少女の姿はなかった…。






 頼りなげな街灯が、微かに闇を照らしている…。

「砕牙、明日もう一度、行ってみよう」

 少女が呟いた。応えるものは、ない。

 小さな呟きは、闇に溶け込んだ。

 住宅地を覆う闇の中、少女はたった一人で歩いて行く。

 その肩に、猫の姿はなかった…。


*       *       *


 またひとつ、悲しみが生まれた…。

 またひとつ、血が流れた…。

 またひとつ、憎しみが生まれた…。


 終わらない悲劇の循環。

 倍増する、憎しみの輪…。


 抜け出せない。


 もがき、苦しみながら…。

 悲しみながら…。


 人間(ひと)は何故、人間(ヒト)を憎まずにはいられないのだろう…。


*       *       *


主人公の名前がまだ出てないという…笑

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