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今日も3話更新予定です。
丁寧に挨拶してから仲居さんが去ると、食事の時間までもう少しあるので、次は何をしようかと峰春とザットが言い出す。
作戦を練ろうかとシグが言ったが、峰春とザットは嫌がり、そうだ、卓球があったと手を叩く。
結局ため息をつくシグと淡い苦笑を浮かべる創樹を引きつれ、皆は卓球をすることになった。
道具をレンタルし、まずは峰春と創樹が見本を見せることになる。シグとザットは卓球をしたことがなかった。
卓球が得意だという峰春の言葉はウソではなかったらしく、見本だけのはずが勢い余ってスマッシュまで決めて見せる。
大体のルールと道具の使い方をシグとザットが覚え、今度は二人が試してみることになった。
『違うって言ってるでしょ! ラケットの握り方はこう!』
『どうやってんだよ! わかんねぇって!』
やはり峰春とザットはここでも声を上げ合う。
苦笑してシグは見よう見真似でラケットを握ってみる。創樹がそれを手直しした。
『あぁ! もうっ! 握り方なんてどうだっていいだろ! 要は打てればいいんだろが!』
とうとうザットはそう結論付け、ただ、グーでラケットの柄を握った。
『それだったらもうちょっとゆるく握りなさいよ! 打ちにくいわよ!?』
『ゆるくって、こうか?』
『それじゃラケットが落ちるじゃない!』
『どうしろって言うんだよ! 今ゆるくって言ったじゃん!』
『そういう意味じゃないわ!』
『じゃあ、どういう意味だよ』
二人の会話を尻目に、シグは創樹を相手に打ち方の練習をする。呑み込みが早く、シグはすぐに覚えた。次はサーブの練習をしようかという時、とうとうザットがもう峰春に教わるのは嫌だと言い出し、創樹を呼ぶ。
苦笑して教師役が交換された。
シグは峰春を相手にサーブの仕方を尋ね、峰春が見本を見せる。
『梁さんの言ってた、ゆるくって言うのは、こうやって握手するみたいにラケットの柄を持つことです。しっかり握り込んでると、ラケットを自由に動かしにくいので』
創樹はザットに口で教えつつ、実際に自分で持って見せ、それから真似しようとするザットの手を直す。
『違うわよ! 一回こっちのテーブルにボールを当てて、相手側にも当てなきゃいけないの!』
また峰春が声を上げ始めて居た。
『それは解る。だが、ならないんだ』
『なるわよ! もうちょっと気合入れて打ってみなさいよ。こうやってただ、ガッと打てばいいのよ!』
『…頼むから擬音語や雰囲気じゃなく、言葉で教えてくれ』
『ちゃんと言葉で言ってるじゃない。真っ直ぐスパッとやればいいのよ』
結局擬音語で峰春は説明する。
『……わかった。わかったから、もう一回ゆっくりサーブ打って見せろ。お前のは早すぎてわからない』
もう、言葉に頼るのはあきらめ、シグは目で学習することにする。
『…フォンって説明下手だよな。感情的に雰囲気伝えるだけで、初心者の俺たちにわかるか、っての。なぁ?』
その様子を見やったザットにふられ、創樹はクスッと小さな笑みを漏らした。
シグは言葉や理論で理解するので、言葉で説明してもらえない場合、自分で見て、自分の理論を組み立てて学ぶ。一方ザットは、完全に体で覚えるタイプだった。
『創樹、サーブの角度はどれくらいだ? 鈍角・直角・鋭角で言うと?』
峰春の見本を一度見て、シグは軽く創樹に尋ねる。
『ボールに当たる瞬間は鋭角です。その時、台にラケットを押し伏せるようにするとうまく跳ねますよ。緩やかな弧を描くようにラケットを動かすんです』
創樹はそう応えた。すると不思議なほどに、シグはイメージがつかめたらしく、さっきは出来なかったサーブが出来るようになる。
これがザットになると、鋭角だとか弧を描くように、だとか言われても眉根を寄せるので、創樹は説明のしかたを変える。
『自分の体の右脇に大きな本…百科事典くらいの本があると思ってください。今ページは開かれてます』
『? 百科事典ね?』
『それを、体の向きは変えずに、右手で閉じて見てください。視線は動かしている自分の手元です』
言われるままにザットはその動作をする。
『じゃあ、今度はラケットを持って同じことをしてください』
創樹に微笑まれ、首を傾げつつもザットは同じことをする。
『動作を大きくして、乱暴にでいいですから素早くやってみてください』
言われるままにしていると、いつの間にか卓球のサーブらしいフォームになっていた。
後はひたすら実践である。数回の失敗の後、次々と玉にラケットが当たる回数が増え、正確になっていく。
シグもザットもある程度できるようになったら、二人でゆっくりしたラリー。すぐに上達して、ゲームが出来るレベルになるまでに、そう時間は掛からなかった。元々の二人の勘と運動神経の良さが幸いしたのだろう。
バトル前の休息です。
気を張り詰め過ぎてもダメなことをシグは知っているので、無理には止めません。




