表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神宿り  作者:
第5章
PR
82/103

10

ようやく3話目。

『さて、何をする?』

 部屋に戻ると、ザットが言った。

『俺はまず、これを創樹に聞きたい』

 シグは城のパンフレットを取り出した。


『え~…じゃ、私は何しようかなぁ…』

『これ何?』

 ザットが卓上に載せられている菓子を示す。

『サービスで置いてある和菓子です』

 創樹の言葉にザットと峰春が興味津々とそれを見つめる。


『わ~い。ソウジュ、グリーン・ティいれて』

『…お茶は中国の方がうるさいんじゃないか?』

 峰春の言葉にシグが眉根を寄せる。

『そうね。けど、私まず自分でいれないもん。グリーン・ティなんてなおさらよ』

 えっへん、と、自慢げに峰春が言った。


 創樹は淡い笑みにも似た表情を口許に乗せると、四人分お茶を入れる。

 それからようやくシグは、創樹に溜め込んでいた質問を重ねる。創樹が知る限りのことを話す途中にも、時折ザットと峰春が『これ何?』と聞いたりして話の腰を折る。


『城は戦があるから出来るんだろう? 一五〇四年と書いてあるが何時代になるんだ? ムロマチ?』

『ええ。室町時代は前半と後半に分かれていて、前半を南北朝時代、後半を戦国時代と言います』

『その後半の戦国時代に建てられたんだね?』

『ええ』

『ムロマチ時代は文化も発達したんだったね? ノウ・キョーゲンなんか…』

『ええ。他にも水墨画や茶の湯、生け花なんかも』

 シグと創樹の話は日本の歴史にも飛び火する。


『キンカクジとギンカクジを見たことがある。焼失する前に見たかったな』

『へ? 焼失した、って、見たんじゃないのか?』

 シグのつぶやきに、ザットが置いてあった木製のパズルをいじりながら首を傾げる。

『キンカクジは一九五〇年に焼失した。放火じゃなかったかな? 五年後に再建されたがね。……歴史的遺産は失われたらそれまで。だから大切にしなければならないのに…日本は壁画でも管理ミスがあったと騒がれてるだろう?』

 シグが苦笑し、創樹も頷く。


『お前、歴史好きだよな』

『歴史だけじゃなくて、オールマイティに知識習得しようとしてるじゃない。よくソウジュが我慢してると思うわ』

『…我慢してるわけではないですよ。私も好きですし』

 峰春の言葉に創樹は淡い苦笑を浮かべる。


『シグザウエルの場合“好き”を通り越してるわ。知識に対して貪欲だもの。よく付き合ってられるわね。私だったらごめんだわ』

『俺も。疑問に思ったらコイツ、とことん追及するもんなぁ…。とても付き合ってられねぇよ』

『お前らの場合その前に聞いても知識がないだろ』

 肩をすくめる二人にやれやれ、とシグが言った。


『あ! 失礼な! 私だってちょっとは知ってるわよ。日本の中じゃヘイアン時代好きよ! 貴族文化でしょ?』

『俺はカマクラかな』

『ほう…。それならヘイアン時代ってのはどんな時代だ? カマクラは?』

 ニヤリとシグは笑う。

『平和で、優雅な時代』

『んと…パワフルな時代』

『…都は? 当時の都の名は?』

『……都はキョートで…何とかって名前』

『…………………』

 更なるシグの突っ込みにかろうじて半分峰春は答え、ザットは押し黙った。


『ヘイアン時代の場合、そのままヘイアンキョウという名前だ』

 シグが解説をし、峰春とザットが混ぜ返しつつ創樹に確認する。


「浴衣をお持ち致しました」

 そんな時に仲居さんが、浴衣を持って現れた。


『…その頃には唐への依存や模倣しなくても、独自の文化を花開き始めーーあ、唐って、梁の母国のひとつな』

『もちろん知ってる人わよ、そんなこと!!!』

 シグの言葉に峰春が声を上げ、ザットが爆笑している。


『よく言った、シグ』

『だまりなさいよ!』

 けたたましい室内の様子に、仲居さんは入り口のところで立ち止まっている。


「すみません。騒がしくて」

 創樹が出て行き淡い苦笑を浮かべた。

「いえ。こちら特注サイズになります。当館で1番大きなサイズですが…合うといいんですけど…」

「ありがとうございます」

 創樹は礼を言って、室内を振り返り、シグを呼んだ。当のシグを差し置いて言い合いを始めたザットと峰春を割り、シグがやってくる。

 創樹が仲居さんから受けとった浴衣をシグに当ててみる。

「大丈夫みたいですわね。お似合いです」

 仲居さんが微笑んだ。


 その間もザットと峰春の言い合いは激しさを増していた。

『二人とも静かに』

 さすがにたまりかね、シグが注意する。


『でも…フォンが中国語使うんだぜ! 反則!』

『【可哀相に。馬鹿なのね】』

『英語で言え!』

『【嫌よ】』

『だまれよ!』

『毎日毎日、よく口論の種がつきないな…。お騒がせしてすみません』

 シグがため息をつき、創樹が思わずクスッと小さく笑って仲居さんに訳す。

「いいえ。賑やかで楽しそうですわね」

 仲居さんも微笑んだ。


ちなみにこの部屋、他の部屋から少し離れた場所にあり、他のお客さんのことをそこまで気にしなくてもいいらしい。

そこまで長門が手配してくれていた。


「アリガトウ、ゴザイマシタ」

 シグが創樹から受け取った浴衣を示し、日本語で仲居さんに言う。

「いいえ。どういたしまして。またお困りの際には何なりと申してくださいね」

 にこやかに仲居さんは言って、創樹が伝える。


『常識破りなシグザウエルにぴったりのサイズがあったの?』

『よく見つかったなぁ』

 いつの間にか峰春とザットが駆けて来ていた。さっきまでの言い合いはどこへやら、揃ってニヤリと笑った。

 その様子に創樹がクスリと小さく笑い、仲居さんも思わず笑っていた。

私の中では、よく峰春が『OF COURSE I KNOW!!! (そんなこと知ってるわよ!!)』って、叫びまくってるイメージです、笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ