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神宿り  作者:
第5章
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81/103

9

『すっげー。どこもかしこもジャパニーズ・スタイルでカッコイイなぁ』

『みんなスタッフは着物なんだぁ…。いいなぁ…私も着物着たいよぉ!』

 その間ザットと峰春がおとなしくしていたかというと、もちろんそんなはずはなく、賑やかに会話が交わされていた。


ちなみに、荷物は仲居さんが持ってくれようとしたが、シグとザットが、そのまま持つと遠慮した。


『あ! 見て、見て! 卓球が出来るわよ!』

『おい! あっちあっち! 水槽の中! 魚が泳いでる!』

『そりゃ水槽だもの。でもおっきな水槽ね。どうせなら透明の、普通の水槽に入れればいいのに』


『…水槽じゃなくて生簀(いけす)だと思いますが』

『なるほど。観賞用じゃなくて食用の魚か』

 ザットと峰春の会話に遠慮がちに創樹が訂正を入れ、シグが納得する。だが、そんな二人のやり取りは静か過ぎて、ザットと峰春には届かない。


『わぉ。ジャパニーズ・ガーデン! きっれ~!』

『うぉ! すっげージャパニーズ・グッズがいっぱい置いてある!』

 部屋へと向かう道すがら、絶え間なくザットと峰春の声があがる。案内する仲居さんはもとより、他の仲居さんや観光客まで、こちらを見ている。


『きゃ~。水墨画じゃない! 趣味いいわぁ…』

『ヘイ! あれってチョーチンって言うんだよな!?』


『…静かに! 他のお客さんの迷惑も考えろ』

 とうとうたまりかねて、シグがため息共に声をあげた。今度は二人にちゃんと聞こえる声の大きさで。途端、慌ててザットと峰春が口をつぐむ。創樹がクスッと小さく笑った。


 部屋は、ホンマのことも考えて、男女別ではなく、二間続きの部屋を長門が予約してくれた。寝るときなどは、(ふすま)で仕切って、男女別で利用できる。

案内された部屋に、勢いよく峰春とザットが入ってチェックする。純和風の落ち着いた造りに、しきりに落ち着きなく二人は声を上げる。


『いいなぁー、ここ』

 ザットは言うなり荷物を放り出し、畳に寝転んだ。

『“タタミ”っていいよなぁ』

 ごろごろと転がる。


『【いいなぁ…着物…。着てみたいなぁ…】』

 くすくす笑いを堪えるように去っていく仲居さんの背中に、峰春が羨ましげに声を上げる。

『【浴衣と羽織なら置いてあると思いますけど…】』

『【ユカタ!? どこ!】』

 創樹はクローゼットを開け、やはりそこにおいてあった浴衣を出して見せる。旅館の浴衣にしては落ち着いた風合いの、質のいいものだった。

予約で伝えていたので、麻の葉柄の淡い桜色の浴衣と、えんじ色の羽織が2枚ずつ。それから同じ麻の葉柄の、薄浅葱色(うすあさぎいろ)の浴衣と、濃紺の羽織が2枚ずつ用意してある。


『柄のある可愛いのではないんですが…』

『わぉ。渋いじゃない! サイズは大丈夫かしら?』

『えっと…女性用は小が2枚なので、たぶんちょうどいいと思いますけど』

 創樹が浴衣の襟元でサイズを確認してから、峰春に当ててみると、やはりちょうどよかった。


『そんなのあったのか! 俺のは?』

 いつの間に背後にいたのか、ザットが身を乗り出す。

創樹は男性用の浴衣を手にすると、立ち上がったザットに当ててみる。

ちなみに男性用は、大が2枚用意されていた。


『ちょっと短い?』

峰春は首をかしげる。

『ええ。でも、男性は女性より短めに着付けますから、これくらいでちょうどいいと思います』

 創樹はそう告げると、少し困った顔でシグに視線を移す。


創樹の手から浴衣をとり、峰春は遠慮なくシグに当ててみる。

『明らかに短いわね』

 峰春が眉根を寄せた。

『そりゃそうだろう。日本でサイズの合うものなんて滅多にないしな』

 シグが肩をすくめた。


『これじゃ駄目だわ。スタッフに聞いてみましょ? もっと大きいのがないか』

『俺は別にいいよ』

『『駄目!!』』

 手をふるシグに、ザットと峰春の声が重なった。


『皆で浴衣着なきゃ意味ないでしょ!』

『そうだそうだ! 個人行動反対!』

 こんな時ばかりは手を組む二人が、両側からシグの腕を掴む。


『行くわよ、ソウジュ!』

 そして引きずるようにシグを部屋から連れ出し、フロントへ向かう。シグにため息をつかれようが、放せと言われようが聞こえない様子で。


部屋の内線で連絡すれば…と、創樹は思ったが、すごい勢いで峰春とザットが出て行ったので、あえて言わなかった。

何だかんだ、楽しそうに見えるので。


『すみませ~ん。この人に合うサイズの浴衣ってありませんか?』

『特大ないの?』

 途中で会った仲居さんに、峰春とザットが口々に早口の英語で尋ね、困惑させた。

 追いついた創樹が日本語に訳すと、ホッとした笑顔になる仲居さん。


「お部屋でお待ちくださいませ。お持ち致します」

仲居さんはそう伝えると、創樹たちの部屋を確認してから、立ち去った。

 皆はわいわいと部屋に戻ることにした。

峰春とザットは、常に賑やかなイメージです。

普段は口喧嘩してるけど、2人とも好奇心旺盛で、色々やりたい派なので、こんな時はタッグを組んでシグにせまります、笑

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