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『すっげー。どこもかしこもジャパニーズ・スタイルでカッコイイなぁ』
『みんなスタッフは着物なんだぁ…。いいなぁ…私も着物着たいよぉ!』
その間ザットと峰春がおとなしくしていたかというと、もちろんそんなはずはなく、賑やかに会話が交わされていた。
ちなみに、荷物は仲居さんが持ってくれようとしたが、シグとザットが、そのまま持つと遠慮した。
『あ! 見て、見て! 卓球が出来るわよ!』
『おい! あっちあっち! 水槽の中! 魚が泳いでる!』
『そりゃ水槽だもの。でもおっきな水槽ね。どうせなら透明の、普通の水槽に入れればいいのに』
『…水槽じゃなくて生簀だと思いますが』
『なるほど。観賞用じゃなくて食用の魚か』
ザットと峰春の会話に遠慮がちに創樹が訂正を入れ、シグが納得する。だが、そんな二人のやり取りは静か過ぎて、ザットと峰春には届かない。
『わぉ。ジャパニーズ・ガーデン! きっれ~!』
『うぉ! すっげージャパニーズ・グッズがいっぱい置いてある!』
部屋へと向かう道すがら、絶え間なくザットと峰春の声があがる。案内する仲居さんはもとより、他の仲居さんや観光客まで、こちらを見ている。
『きゃ~。水墨画じゃない! 趣味いいわぁ…』
『ヘイ! あれってチョーチンって言うんだよな!?』
『…静かに! 他のお客さんの迷惑も考えろ』
とうとうたまりかねて、シグがため息共に声をあげた。今度は二人にちゃんと聞こえる声の大きさで。途端、慌ててザットと峰春が口をつぐむ。創樹がクスッと小さく笑った。
部屋は、ホンマのことも考えて、男女別ではなく、二間続きの部屋を長門が予約してくれた。寝るときなどは、襖で仕切って、男女別で利用できる。
案内された部屋に、勢いよく峰春とザットが入ってチェックする。純和風の落ち着いた造りに、しきりに落ち着きなく二人は声を上げる。
『いいなぁー、ここ』
ザットは言うなり荷物を放り出し、畳に寝転んだ。
『“タタミ”っていいよなぁ』
ごろごろと転がる。
『【いいなぁ…着物…。着てみたいなぁ…】』
くすくす笑いを堪えるように去っていく仲居さんの背中に、峰春が羨ましげに声を上げる。
『【浴衣と羽織なら置いてあると思いますけど…】』
『【ユカタ!? どこ!】』
創樹はクローゼットを開け、やはりそこにおいてあった浴衣を出して見せる。旅館の浴衣にしては落ち着いた風合いの、質のいいものだった。
予約で伝えていたので、麻の葉柄の淡い桜色の浴衣と、えんじ色の羽織が2枚ずつ。それから同じ麻の葉柄の、薄浅葱色の浴衣と、濃紺の羽織が2枚ずつ用意してある。
『柄のある可愛いのではないんですが…』
『わぉ。渋いじゃない! サイズは大丈夫かしら?』
『えっと…女性用は小が2枚なので、たぶんちょうどいいと思いますけど』
創樹が浴衣の襟元でサイズを確認してから、峰春に当ててみると、やはりちょうどよかった。
『そんなのあったのか! 俺のは?』
いつの間に背後にいたのか、ザットが身を乗り出す。
創樹は男性用の浴衣を手にすると、立ち上がったザットに当ててみる。
ちなみに男性用は、大が2枚用意されていた。
『ちょっと短い?』
峰春は首をかしげる。
『ええ。でも、男性は女性より短めに着付けますから、これくらいでちょうどいいと思います』
創樹はそう告げると、少し困った顔でシグに視線を移す。
創樹の手から浴衣をとり、峰春は遠慮なくシグに当ててみる。
『明らかに短いわね』
峰春が眉根を寄せた。
『そりゃそうだろう。日本でサイズの合うものなんて滅多にないしな』
シグが肩をすくめた。
『これじゃ駄目だわ。スタッフに聞いてみましょ? もっと大きいのがないか』
『俺は別にいいよ』
『『駄目!!』』
手をふるシグに、ザットと峰春の声が重なった。
『皆で浴衣着なきゃ意味ないでしょ!』
『そうだそうだ! 個人行動反対!』
こんな時ばかりは手を組む二人が、両側からシグの腕を掴む。
『行くわよ、ソウジュ!』
そして引きずるようにシグを部屋から連れ出し、フロントへ向かう。シグにため息をつかれようが、放せと言われようが聞こえない様子で。
部屋の内線で連絡すれば…と、創樹は思ったが、すごい勢いで峰春とザットが出て行ったので、あえて言わなかった。
何だかんだ、楽しそうに見えるので。
『すみませ~ん。この人に合うサイズの浴衣ってありませんか?』
『特大ないの?』
途中で会った仲居さんに、峰春とザットが口々に早口の英語で尋ね、困惑させた。
追いついた創樹が日本語に訳すと、ホッとした笑顔になる仲居さん。
「お部屋でお待ちくださいませ。お持ち致します」
仲居さんはそう伝えると、創樹たちの部屋を確認してから、立ち去った。
皆はわいわいと部屋に戻ることにした。
峰春とザットは、常に賑やかなイメージです。
普段は口喧嘩してるけど、2人とも好奇心旺盛で、色々やりたい派なので、こんな時はタッグを組んでシグにせまります、笑




