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今日も3話更新目指します!
『俺たち外に出てるぜ!』
ひとしきり騒いで飽きたのか、先にザットと峰春は資料室を出て行った。中身がよくわからない、というのもあるのだろう。シグは創樹に詳しい説明と補足を求め、資料をじっくりと見ていった。日本史にも、ある程度シグは通じているらしく、創樹が学校で習っている以上に詳しい話をしても、平気で内容を理解する。
ようやく全て見終わると、二人は揃って外に出る。
『ザットと梁さんはどこに行かれたんでしょうね?』
『あいつらのことだ。騒がしい方に行けばいい』
首を傾げる創樹にシグは答え、二人で顔を見合わせクッと笑った。
しばらく人の声が一番聞こえる方に歩くと、
『シグ! ソウ!』
案の定にぎやかに声を上げ、ザットが駆け寄って来た。
『梁はどうした?』
『さぁ? どっか行った』
言いながらザットはたこ焼きをほおばっている。
『いる?』
多めに買い出しておいた食料の残りを全部平らげておいて…と思わず創樹が見ていると、ザットが差し出す。
『いえ…』
『お前のあまりの食欲にあきれてるんだよ、創樹は』
シグがニヤリと笑ってからかう。
『しかたねぇじゃん! 腹減るし!』
ザットがむくれた。
すぐに土産物屋から出てきた峰春と遭遇する。その手には、買い物袋が…。
『真田石のあると言う東虎口櫓門っていうのは、初めに通ってきたあの門?』
いまさら何も言わず、シグは創樹に問う。創樹が頷いた。
真田石とは、上田城跡の東虎口櫓門の北側、石垣に組み込まれた大石で、柱石として据えられている。松代に移封される時に持ち去ろうとしたがまったく動かなかった、といういわれのある石である。
訳のわからない顔をしているザットと峰春に二人で説明しながら、その門を出た。
『次はどこに行くんだ?』
人目のない場所に移動しながらシグは問う。
創樹がザットと峰春にガイドブックを返す。
『ここ!』
ザットがページを開いて示した。
跳ぶ。
『うっひゃ~。すっげー光景』
『だからこんなトコ嫌って言ったのにぃ』
ザットが声を上げ、峰春がむくれる。
『ここのいわれは?』
シグの問いにザットは何も言わずにシグにガイドブックを渡した。
『角間渓谷。真田十勇士の筆頭・猿飛佐助が戸沢白雲斎から修行を受けたという伝説の場所…か…』
『さる…何とかに、と…さい…何とかって何だ?』
『知らずに来たのか。猿飛佐助といえば、有名なニンジャだな。白雲斎というのが師匠だろう。架空の人物とされるが、実在したという説もあるとか…』
首を傾げるザットに呆れ、シグはつぶやく。
『ニンジャなら、知ってるぜ! 映画で見た! シュリケンだろ?』
興奮したザットに振られ、創樹は頷く。
『この奇岩と絶壁が角間川とその支流四キロにわたって続くのか…。坂上田村麻呂が矢を放ったという岩屋観音をめぐる遊歩道……所要一時間だから…半分、跳ぼう』
シグが言って、峰春が大賛成する。
皆でわいわい言いながら遊歩道を歩く。いつの間にか再び出てきて居た猫たちも、前へ行ったり後ろへ行ったり、楽しそうにじゃれあう。時折ザットと峰春が写真を撮っていた。
『坂上田村麻呂というのは、確か平安時代の武将だったな』
『ええ。征夷大将軍にまでなった方です。武官というより、武聖として崇拝されるほどの人物だったとか』
シグと創樹は、穏やかにそんな会話を交わしている。
その横では、走ったり立ち止まったりと、峰春とザットが忙しい。
歩き終わった頃にザットのお腹が音を立てる。
『もうメシの時間過ぎてるぜ!』
『…お前の腹時計は正確だな。間食をしても狂わないのが不思議だよ』
シグが時計を確認して苦笑した。峰春と創樹も顔を見合せ、クスッと小さく笑みを交わす。
『町に出ようか。ちょっと確認したいこともあるから、ネットカフェでもあればいいんだが…』
ひとまず人目につかないところまで移動し、市街地まで跳んだ。
皆の要望を満たすため、地元の人らしい通行人を掴まえては、美味しいランチがあって、インターネットが使える場所がないか聞く。
三人目に掴まえたエプロン姿の三〇半ばほどの女性が、笑って『ウチにいらっしゃいませんか?』と言った。聞けば、ご主人と喫茶店を経営しているらしく、店においてあるパソコンも使って構わないということだった。
悦子さんというその女性につれられるままに、皆は喫茶店へ。
落ち着いた雰囲気の、あまり格式ばらない、でも、カジュアルになり過ぎない店だった。
良心的な値段の美味しいランチは峰春ですら絶賛で、満足げに食べる。
シグは早めに食事を済ませ、パソコンを使わせてもらう。
ザットが呆れるほどの量を食べ続ける横で、峰春と創樹はゆっくりとコーヒーを飲む。
『ねぇ、シグザウエル! デザートにスイーツ注文してもいいでしょ? 私とソウジュ!』
『好きにしろ』
ピーク時を少し過ぎ、客も少なくなっていたので、峰春が声を上げる。シグはパソコンの画面から目を離さずに答えた。
『すみませ~ん。エツコさ~ん!』
峰春が満面の笑みでここまで連れてきてくれた店員さんを呼ぶ。
『ソウジュも一緒に食べよう! オススメめないか聞いて? どんなデザートかも』
中国語で楽しそうに言う峰春に逆らえるはずもなく、創樹はお勧めを聞く。その中から選び出した一品をふたつ注文しようとした。
『何かわかんねぇけど俺も!』
ようやく約三人前のランチを食べ終えたザットも声を上げる。
『シグザウエルは~?』
『いらない。コーヒーのお代わりだけ欲しい』
シグの答えも聞いて、創樹が注文を済ませる。
“悦子さん”のご主人と一言二言話してからプリントアウトさせてもらい、シグは戻ってきた。もちろん履歴を消すことも忘れていない。
ちょうど注文したデザートとコーヒーが来ると同時に戻ってきたシグは、悦子が離れるのを待って、皆にプリントアウトした紙を見せた。
『S市セイコンカイと繋がりの深い政治家のリストだ。アクセス制限のかかってた調べ物については、後からにしよう。英語を理解できる者が近くにいないとも限らないしね』
声を落として告げたシグの言葉に創樹は頷き、ザットと峰春は一生懸命デザートを味わっていた。
特定の人物への心的負担の大きい、国籍入り乱れた一行は、精算を済ませ礼を言ってその喫茶店を出ると、次の目的地に向かって跳ぶ。
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