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神宿り  作者:
第5章
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1

『こんな服がよかったのよ! 小物も充実してるじゃない! 行こう、ソウジュ』

 一〇時になると峰春が『店が開いた』と言い出し、話を打ち切ると、四人は昨日、本屋で教えてもらっていた店に跳んだ。峰春は創樹を引っ張り、猛然と服に向かって行く。


 残されたシグとザットは顔を見合せ、肩をすくめる。それからとりあえず二人も、観光に適した活動服を手に入れることにする。

 開店したばかりの店の中、目立つことなどお構いなしに、中国語でああでもない、こうでもないと言いながら、峰春は自分と創樹の服を見立てた。

 どうやら自分の服を選ぶだけじゃなく、人に服を選んでやるのも峰春には楽しいらしい。


『まだかよ』

 自分たちの服を選び終わり、ザットが痺れを切らしたように峰春に言う。


『ちょっと待って! ソウジュって、色んな服が似合うから困っちゃうわ』

『…あの、ひとまず動きやすい服で…』

『そうね。観光だものね。歩き回るものね』

 遠慮がちな創樹の言葉に頷きつつも、峰春の瞳はあちこちをさまよう。


『…俺たちはザックでも手に入れよう。あのままログハウスに荷物を置いとくわけにもいかない』

 シグは峰春を創樹に任せ、諦めのため息と共にザットに言った。

 ザックも選び終わり、ついでにコインケースも手に入れて先に精算を済ませ、シグは店の端に置かれたベンチに腰掛け地図を見直す。ザットはシグに言われるままにコインを仕分け、終わるとその隣でうとうととする。


『決まったわよ!』

 ようやく峰春が二人の元に創樹を連れて現れた時には、店に入ってから一時間近くが経過していた。

 椅子から滑り落ちかけていたザットが慌てて身を起こす。


『……バックにベルトに帽子まで…』

 峰春の買い物かごの中身に、シグが呆れた顔をする。

『わかってるわよ。必要最低限以外の物は、自分で買うわ。カード持ってきてるし。ソウジュのもコーディネートした責任持って、最低限以外は私がプレゼントするの! ソウジュはいらないって言うんだけど、必要なの!』

『…まぁ、とにかく精算済ませて、さっさと行こう』

 もう何も言う気になれず、シグはうながす。


 必要最低限分以外を峰春がカードで切り、残りをシグが支払う。それから再びログハウスに跳んで、峰春だけは軽くシャワーも浴び、その間に皆は着替え、残りの荷物をまとめた。観光には邪魔なので、後でシグとザットがとりに来ることにする。


『で? まずはどこに行くんだ?』

『『ここ!』』

 シグの問いに、こんな時ばかりは呼吸もぴったりに、ザットと峰春がガイドブックを示した。

 跳ぶ。

 途端、町並みが一変し、石垣が連なっている。


『ここは?』

『『さぁ? ジャパニーズっぽい写真載ってたから』』

 シグの問いに、峰春とザットが顔を見合せ、首を傾げた。

『お前ら、昨日あれだけガイドブック見といて…』

 呆れたような瞳をシグが向ける。


『ソウ、どういう意味?』

 ザットが創樹にガイドブックを渡す。

『上田城跡…一五八三年に真田昌幸が築城した実践用の堅固な平城。つまり城跡ですね。関ヶ原の合戦後、本丸の櫓などが破壊されたが、その後、上田に移封になった仙石忠政によって再建…』

『ってことは、ジャパニーズ・キャストル!?』


『城()なんだろ? 今では城はないんじゃないか?』

 興奮気味のザットに、冷静にシグが突っ込んだ。

『そのようですね。今では上田城跡公園として整備され、隅櫓(すみやぐら)と石垣などが往時の面影を伝える、だそうです』

 ガイドブックを読み上げる創樹の肩に乗っていた二匹の猫が、一声鳴いて消えた。


『どうしたんだ?』

『…城は戦うための砦ですから…戦場の記憶が見えて嫌だそうです』

 シグに問われ、創樹は応える。ザットと峰春はショックを受けたように立ち止まった。


『…ユメとウツツは特別だからな。まぁ、とにかく観光スポットなんだし、来たからには見て行くぞ』

『えっと…櫓内に資料室があるそうですよ? それに、有名らしい石ですとか井戸ですとか…』

 ため息と共に言ったシグと、何とかフォローしようとガイドブックを見る創樹。


『関ヶ原というと、徳川幕府(ショーグネイト)の幕開けだな。家康が攻め入ったのかい?』

『いえ、息子の秀忠です。二代将軍になった』

 シグに創樹が応えた時、ちょうど門に着き、ショックを受けていたザットと峰春もその造りに目を輝かせる。


『すっげ。カッコイイじゃん! フォン! 写真!』

 気を取り直したのか、ザットが声をあげ、峰春がカメラを取り出す。

『みんなも写真に入ってよ!』

『誰がシャッター押すんだ!?』

『俺が撮るよ』

 峰春とザットが興奮気味に叫び、シグが苦笑する。

『皆で撮るの! ソウジュも逃げないで!』

 遠慮がちに写真を撮ろうかと申し出かけた創樹を峰春は捕まえた。


 やたらと目立つ一行に、観光客が遠巻きに目を向けている。ザットがその中の一人を捕まえて来た。

『シャッター押してくれよ!』

 カメラを渡されるとその三〇代くらいの男性は了解し、門と皆が入る立ち位置を。

『ヘイ、シグ! 逃げるなよ。ソウも!』

 ザットと峰春がシグと創樹を捕まえ、結局二人も淡い苦笑と共に写真に納まる。

 写真を撮り終わると、ザットが「Thanks!」と共にその男性と握手をしてカメラを受けとる。


 そして興奮冷めやらぬまま、創樹が資料室の案内板を見つけ、皆で資料室へ。

 資料室の中でもザットと峰春は、これは何だ、これはこうだ、などと好き勝手言い合う。


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