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神宿り  作者:
第3章
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52/103

12

「入れ」

 男はふと顔を上げ、告げた。

 首を傾げる黒装束の男たち。

 ゆっくりと扉が開けられた。

 何故自分が扉の外に来たのがわかったのだろう、という表情で白衣の男が入室してくる。明らかに男と目を合わせるのを怖がっている様子で、白衣の人物は進み出た。


「完成したか?」

「は、はい」

「防護策は?」

「は…あの、これを身につけて…その、横のボタンを押して頂ければ…。機械の性質と真逆の微粒子を発するようになっております」

 怯えたようにさし出される腕時計のような形のものを、男はぞんざいに受け取り、腕にはめると、横のボタンを押す。


「スイッチを入れろ」

「は…? しかし、その、現物をごらんには…」

「俺が見れば機械の性能が向上するわけでもあるまい」

 男のひとにらみに、慌てて一礼し、転げるように白衣の男は駆け出した。

 しばらく身じろぎもしなかった男が、ふいににやりと口許に笑みを刻む。


 数秒の後、部屋の内線がなった。

 黒装束の一人が受話器を耳にあてる。

「機械が始動し始めたそうです」

「知っている」

 報告に、男は薄い笑みを浮かべた。防護策をしていても、一瞬体に異変を感じた。

 効果はあるようだ。

「命がけのゲームか…。ヤツらの手並みを拝見といこうか…」

 男はクツクツと人の不幸をあざ笑うような声を漏らした。


  *     *     *


『え…?』

 ふいに体に感じた違和感に、ザットは声を漏らす。

『雲っ!?』

 己の腕の中で苦しげに身をよじるようにする雲に、峰春は目を瞠る。雲の体が輪郭をあいまいにし、霧状になった雲がどこかへと流されかける。


『雲を戻せ!』

 シグの声にビクッとして、慌てて峰春は雲を戻した。

『何だ…?』

 ザットは布を一枚通して呼吸をしているような息苦しさと、目の前で起きた雲の様子に、得体の知れない気味の悪さをおぼえた。


『…雲の力が…』

 呟く峰春。シグとザットは峰春に問いかける瞳を向ける。

『雲の力が、少し、欠けてる…』

 峰春は呆然と、つぶやいた。


   *     *     *

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