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「入れ」
男はふと顔を上げ、告げた。
首を傾げる黒装束の男たち。
ゆっくりと扉が開けられた。
何故自分が扉の外に来たのがわかったのだろう、という表情で白衣の男が入室してくる。明らかに男と目を合わせるのを怖がっている様子で、白衣の人物は進み出た。
「完成したか?」
「は、はい」
「防護策は?」
「は…あの、これを身につけて…その、横のボタンを押して頂ければ…。機械の性質と真逆の微粒子を発するようになっております」
怯えたようにさし出される腕時計のような形のものを、男はぞんざいに受け取り、腕にはめると、横のボタンを押す。
「スイッチを入れろ」
「は…? しかし、その、現物をごらんには…」
「俺が見れば機械の性能が向上するわけでもあるまい」
男のひとにらみに、慌てて一礼し、転げるように白衣の男は駆け出した。
しばらく身じろぎもしなかった男が、ふいににやりと口許に笑みを刻む。
数秒の後、部屋の内線がなった。
黒装束の一人が受話器を耳にあてる。
「機械が始動し始めたそうです」
「知っている」
報告に、男は薄い笑みを浮かべた。防護策をしていても、一瞬体に異変を感じた。
効果はあるようだ。
「命がけのゲームか…。ヤツらの手並みを拝見といこうか…」
男はクツクツと人の不幸をあざ笑うような声を漏らした。
* * *
『え…?』
ふいに体に感じた違和感に、ザットは声を漏らす。
『雲っ!?』
己の腕の中で苦しげに身をよじるようにする雲に、峰春は目を瞠る。雲の体が輪郭をあいまいにし、霧状になった雲がどこかへと流されかける。
『雲を戻せ!』
シグの声にビクッとして、慌てて峰春は雲を戻した。
『何だ…?』
ザットは布を一枚通して呼吸をしているような息苦しさと、目の前で起きた雲の様子に、得体の知れない気味の悪さをおぼえた。
『…雲の力が…』
呟く峰春。シグとザットは峰春に問いかける瞳を向ける。
『雲の力が、少し、欠けてる…』
峰春は呆然と、つぶやいた。
* * *




