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神宿り  作者:
第2章
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40/103

23

『これはさすがに記憶すりかえるにしても、理由見つけるの大変だろなぁ…』

 のんびりとザットがつぶやく。

『あ、そういやこの人たちの記憶も何とかしないとなぁ』

 ザットがあんぐりとシグの消えた空間を見ている四人を見て言った。


「俺たちが、何だって?」

 哲哉がはたと我に返り、ザットを見て、それから創樹に瞳を移す。

「…記憶を修正します」

「は?」

 創樹の静かな言葉に、遼介が間の抜けた声をあげた。哲哉と石原も首を傾げる。


「……この惨状(さんじょう)に、砕牙たち…」

 創樹はゆっくりと周りを示す。

「明らかに、非日常。普通なら、ありえない光景でしょう? だから、あなた方の記憶を、日常的なものと入れ替えます」

 創樹はそっと優梨江を解放して立ち上がる。しがみついてくる優梨江の肩を、優しく抱いた。


「何で?」

「え?」

 遼介に言われ、創樹は首を傾げる。

「何で修正する必要があるんだ?」

「いやいやいや、その前に、そもそも記憶を修正って何だ」

「できるのか?」

 遼介が首を傾げれば、思わずといった調子で哲哉がつっこみ、石原がうなずく。


「…できます。…それに、こんな非日常なことを体験したんです。修正したほうがいいと思います」

 創樹は三人を見つめ、それから優梨江にも視線をうつした。

「けどさ、またこんなことがあった時、何も知らないより知ってる方がいいじゃん。俺、最近自分が何かおかしいと思うんだよね。何がおかしいのか全然わかんねぇけど。でもさ、そのおかしいことが、今日のコレと何か関係ありそうだ、って、不思議と思うんだよなぁ」

 遼介はめちゃくちゃにされた教会の中を見回す。哲哉と石原が顔を見合わせ、遼介を見る。それから創樹を見た。


「なぁ、神代さん、確かにコイツ最近おかしいし……俺も記憶、別に変えなくていいよ」

 哲哉も言って、石原も頷く。

「ゆりえもね、いいよ。そーじゅお姉ちゃんが助けてくれたんだもん。パパとママには…内緒ね」

 優梨江は眠っている両親の方を見てから、創樹を見上げた。

「……………………」

 創樹はただ、皆を順に見つめた。


『どうしたんだ? ソウ』

 ザットがその様子に気付き、創樹に問う。

 創樹が説明すると、ザットはクッと吹き出した。

『…記憶は消したのよね?』

『ええ。ありきたりな出来事とすり替えました』

 思わず問う峰春に、創樹はゆっくりと答える。


『違うぜ、フォン、こいつぁ記憶とかの問題じゃねんだよ。どっちかってぇと、気分の問題だ』

 さも愉快そうにザットが爆笑する。

『たまにいるんだよなぁ。勘で生きてるヤツ。日本でお目にかかれるとは思わなかったけど』

『誰のことだ?』

 ふいに、シグの声がした。いつの間にか戻ってきている。ライオンの姿はない。

 創樹が手短に説明した。

『そうか…。俺はてっきりザットが自分のことを言ってるのかと思ったぞ』

『失礼なヤツ』

 フッと笑うシグに、ザットが眉根を寄せ、今度は峰春が吹き出す。


『だが、そういう勘で生きているヤツは、普段はまるで見当違いのことばかり言うが…ここぞという時は、不思議と的を射たことを言う…』

 シグがスッと観察する瞳で遼介を見た。

『なぁ、この件が終了するまで、記憶、残しといてやるってのはどうだ? どうせこいつらまた巻き込まれそうだし、後でまとめて一気に記憶塗り替えたが楽だぜ』

 ザットが提案する。


『…個人的な好みでことを運ぶな』

『あ、バレた? 俺、コイツ嫌いじゃねぇや』

 ケタケタと笑いながら、ザットは遼介の肩をバシバシッと叩いた。遼介は何事かと首を傾げる。

『…まぁ、今回はその方がいいかもな。その子どもにしても、既に一度記憶を消されているのに、君を探していたというし』

 シグは優梨江をちらりと見てから、創樹に視線を戻した。

『君の意見は?』

『…お任せします』

 シグに問われ、創樹は淡々と答えた。


『OK。じゃあ、悪いが彼らに説明してくれ』

 シグに言われ、創樹は頷くと、今回は記憶を消さないでおくことを説明した。

『さて、残りの人間の記憶についてだが…』

 説明を終えたのを見計らい、シグは切り出す。

『大型トラックを見つけてきた』

『『トラック?』』

 シグの言葉にザットと峰春は顔を見合わせ、創樹は首を傾げる。

『ああ。記憶を修正する力は残ってるか? 無理をするようならば皆の記憶だけ消して、あとは想像に任せておくが』

 シグは創樹と虎を見つめる。

『彼らの記憶は既に消してます。修正する程度なら大丈夫です』

 創樹は虎が答える前に、静かに頷いた。


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