表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神宿り  作者:
第2章
PR
36/103

19

『だが…』

 シグは創樹と砕牙を等分に見つめる。

『やりましょう。体力が消耗してからより、まだ余力のある今の方がいいはずでは?』

 創樹は静かに告げ、虎はあきらめのため息をついた。


 シグはひとつ頷く。

(ゆめ)(うつつ)

 創樹が名を呼ぶと、そこにいたはずの二匹の猫が消えた。


『砕牙は攻撃。翔波と飛天には結界を』

『いや、攻撃は俺たちで何とかなる。…サイガ、結界にまわって頂けるか? サイガとショーハとヒテンならば、確実だろう』

 告げた創樹に、冷静に応え、シグは砕牙を見つめる。砕牙は鋭い瞳で一瞬シグを見つめ、頷いた。


『ありがとう。…じゃあ、ザット、合図で一気に力を解放だ。全て鬼と邪魂が消えた瞬間、サイガたちにお願いしよう』

 シグは砕牙に礼を言った後、ザットと創樹に告げる。二人と、宿神たちが頷いた。

 言われるまでもなく、タイミングが重要だと三人は承知している。


『用意は?』

『いつでも』

『大丈夫です』

 シグの言葉に、ザットと創樹は頷く。

『じゃあ…スリー・ツー・ワン…ゼロッ!!』

 気負いのないシグの合図と同時に、教会の中に光が爆発した。


 無音の爆発。

 目のくらむ閃光。


「砕牙、翔波、飛天っ!!」

 閃光が収束する瞬間、創樹の声が響く。


 鬼に乗っ取られた人間によって、机や椅子が投げられる音も、うなり声も、全てが消えた。

 しん…と、恐ろしいほどに教会内は静まり返り、同時にどこからともなく風が吹きぬけ、一瞬にして空気が清浄なものになった。


 乗っ取られていた神父、シスター、母親や子どもたちは、その場に崩れ落ちる。

 その表情から、凶暴さは消えている。


「幻、現…」

 微かなかすれた声と共に、今度は柔らかな光が満ちた。

 倒れふしている皆の表情が和らぐ。

 じょじょに、音が戻った。

 視界も戻る。


『久々に疲れたな』

 ふうっと息を吐き、シグが宙からトンッと床に舞い降りる。かたわらに、ライオンも着地した。

『同じく』

 息を整えつつ、ザットは壁に背中を預け、汗をぬぐった。漆黒の狼も、伸びをする。


『あれ? ソウは?』

 ザットは首を傾げた。

『あ…』

 その言葉に、辺りを見回したシグの瞳が、宙に固定される。

 つられてザットも、同じく創樹を見失ったらしい創樹の宿神たちも、宙を見上げる。


 宙に(・・)創樹が横たわっていた・・・・・・・・・・・。見えない巨人が創樹を支えているようだ。


 ふっ…と、突然その体が落下する。


『えっ!?』

 驚き、壁から身を起こすザット。

 シグがとっさにそちらに掌を向けた。掌から光がほとばしって創樹にあたる。


 光に包まれた瞬間、落ちてくる速度が遅くなった。いつの間にか、創樹と床の間に体を滑り込ませていた砕牙が、柔らかく受け止めた。

 そっと創樹の体を床に下ろし、その身で包みこむ。


 鳥が虎の傍らに舞い降り、いつの間に再び現れたのか、猫たちが駆け寄ってくる。

 一角獣も創樹の顔を覗き込んだ。

 虎がシグに向かって声を発する。シグは傍らのライオンを見やり、虎に視線を戻す。


『大したことじゃない。礼を言うのはこちらだ』

 シグは告げ、ゆっくりと創樹とその宿神たちに歩み寄る。

 ザットも続いた。


『彼女は…?』

 シグはそっと創樹の顔を覗き込んだ後、砕牙を見る。

 砕牙は創樹から目を離さないまま、小さなうなり声をあげた。

『そうか…。無理をさせてしまったな…』

 ロードに言葉を訳してもらい、シグは小さなため息をついた。

 ロードがふっと姿を消した。

 ザットとハックが教会の扉を見つめる。

 しばらくすると、ふっ…と再びロードが姿を現した。


『騒がしいと思ったら、そうか…。教会の外に、例の〝クボタ〟とほか数名が。ここに入ろうとしているそうだが…どうする? あまり長居も出来なさそうだ。ご希望の場所があれば()ばすが…?』

 シグは虎と、それから創樹を見やった。


 虎はうなりを返す。

『…そうか。彼女が例の約束をした女の子が…。ザット、対面しないわけにはいかないようだ。ここをとりあえず人が入れるようにするぞ。被害者を一箇所に集めてくれ』

 シグの言葉に肩をすくめ、ザットは漆黒の狼と共にあちこちに倒れ伏す人々を抱え上げ、シグのあけた空間に横たわらせていった。


 シグは掌をあちこちに向け、ロードと共に机や椅子を傍らに寄せる。

 そのほとんどが壊れていて、とても使えそうになかったが。


『こんなもんか…。サイガ、彼女のことは俺から説明しよう。何か言いたいことがあったら、ロードを通じて言ってくれ。皆、ひとまず外の人間が驚かないように、姿を消してくれるか? …あぁ、猫神たちは構わないよ』

 シグの言葉と同時に、宿神たちの姿は消えた。創樹は空間に寄りかかっているように見える。


『少しだけ、彼女をお借りしても?』

 シグは丁重に空間(さいが)に確認してから、そっと創樹を抱き上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ