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『結界を一部だけ解いて、外の彼らを招き入れてくれるかい?』
シグの言葉から数秒の後、勢いよく教会の扉が開く。
女の子を抱いた男が飛び込んでくる。遼介と優梨江だ。
続いて哲哉と、そして石原。
「何だよ…この惨状…」
思わず、という調子で哲哉がつぶやく。
「何があったんだ…?」
「人が大勢…倒れてる」
石原と遼介がつぶやいた。
「パパッ!! ママッ!!」
悲鳴のような声をあげ、遼介の腕から飛び降りようとする優梨江。
遼介は人の倒れている場所へ近づき、そっと優梨江をおろした。
「…誰だ…?」
「神代さん…っ!?」
一方、石原と哲哉は、壁際で静かに自分達を見ている男二人に気付いた。
「パパ…? ママ…?」
自分の両親を見つけ、泣き出しそうに顔をゆがめる優梨江。
『眠ってるだけだ。大丈夫』
ザットが告げ、ビクリと優梨江と遼介は振り返る。
『眠っているだけ…?』
哲哉がぎこちない英語で繰り返す。
ザットとシグは頷いた。
「ゆりえちゃん、パパとママは眠ってるだけだから、大丈夫だって」
ひとまず哲哉は優梨江に告げる。
「パパもママも…ねむってるんだ…」
優梨江は呟きつつ、見知らぬ二人をこわごわと見る。
優梨江の目が大きく見開かれた。
遼介も凍り付いて、シグの腕の中を凝視している。
「そーじゅお姉ちゃん!?」
優梨江は思わず駆け出した。
遼介も、弾かれたように。
「…だれ? そーじゅお姉ちゃんを、どうするの…? そーじゅお姉ちゃん、どうしたの…?」
優梨江はシグから距離を置いて立ち止まり、その腕の中の創樹をじっと見つめた。
他の三人も、優梨江のそばへ。
『記憶は?』
シグは猫たちに確認する。
「ミャァ!」
「みゅっ」
『なるほど』
猫たちが答え、シグは頷く。
「ゆめ…? うつつ…? このお兄ちゃんたち、だれ?」
優梨江が二匹の猫に問う。
「神代さん、どうするつもりだ…?」
「いや、その前にどうしたんだ?」
遼介がシグに一歩つめより、石原が問う。
『日本のワカモノはおとなしいと聞いてたが、結構血の気が多いんじゃねぇの?』
ザットがフッと笑い、今にもシグの手から創樹を奪い返そうかという表情の遼介の様子に言った。だが、一応シグとザットの正体が知れぬので、思いとどまっているらしい。
『何が起きたんです? 彼女は大丈夫ですか?』
哲哉が、たどたどしい教科書通りの英語で問う。
『命に別状はないぜ? 大丈夫だ。ちょっとばかしフルに力を使いすぎただけさ』
『心配ない。今は、回復のために冬眠状態にあるがね』
ザットとシグは説明した。
「力…?」
哲哉が聞き取れたフレーズに眉根を寄せる。
『力を、使いすぎた。オーバーヒートだよ』
ゆっくりと、はっきりとした発音で、シグは繰り返す。
「オーバーヒート? 力を使い果たした?」
哲哉は日本語で繰り返した。
「お姉ちゃん、大丈夫なの?」
優梨江がそのやり取りに、シグに近づく。
シグはしゃがみこみ、優梨江に創樹の顔を見せてやった。
『彼女のおかげで、皆が皆、助かった。彼女の力なくして、この教会は守れなかっただろう…』
「?」
優梨江は首を傾げ、哲哉を見上げる。
『彼女が、みなを、守った。ここにいる、全員を』
シグはゆっくりと哲哉に告げる。
哲哉が一瞬瞠目した。
『彼女の力で、皆助かった』
はっきりとした発音で、同じく告げるザット。




