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神宿り  作者:
第2章
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20/103

3

 ホール内は泰善高校の生徒や父兄、それから一般客で大半の席が埋まっていた。


 創樹は手近に空席を見つけ、腰を下ろす。そしてホール全体を静かに見回した。

「………?」

 その視線がホールのある一角で停滞する。

「………………」

 ゆっくりと視線を引きはがし、再び緩やかな移動を始めた創樹の瞳が、今度はホールの扉で止まった。


 その扉が開き、泰善高校の制服を着た生徒が入ってきた。

 創樹の視線はその人物には行かず、床の上をすべるように移動した。

 彼女の腕が、さりげなく床に伸ばされる。


 ホール内に流れていたゆったりとした曲が止まった。

「ただいまより、泰善高校、クリスマスミサを開祭いたします」

 開祭の宣言に続き、全員が立ち上がり、入祭の歌を歌う。


 創樹は起立したものの、口を開くことはない。

 再び彼女の視線が扉へと移った。

 扉が開く。

 入祭の歌に迎えられ、神父とシスターが現れた。

 創樹は二人の姿をじっと見つめる。


 うっすらと口許に微笑を浮かべ、一定のリズムで神父が歩む。

 創樹のいる列にさしかかった時、神父はハッと顔を上げた。

 創樹と神父の視線が交錯する。


 息をつめ、こわばった表情で歩調を乱す神父に、周囲が無言の疑問符を投げかけた。

 神父は気を取り直すようにぎこちなく前方に視線を戻し、硬い面に無理やり笑みを浮かべ、機械的に歩を進めた。


 創樹はスッと目を細め、小さく頷くと、神父の姿を目で追った。

 神父がステージに上がり、まもなく歌が終わった。


 静かに客席の全員が腰を下ろした。

 厳かにミサが始まる。


 創樹は微動だにせず、神父を見続けた。

 時折、壇上から会衆を見回す神父は、明らかに創樹の瞳につかまるのを怖れ、避けていた。


 ミサが着々と進む中、創樹は静かに待っていた。

 時間と比例して、神父の面から笑みがはがれてゆく。

 神父の顔が完全に無表情になった。

 そして今度は、その表情が刻々と険しくなってゆく。


 前列の客席にいる者たちは、不思議そうに互いに顔を見合わせては首をひねる。客席後方は、まだ気付かない。


 神父の表情が険しさの極致に達した。

 そして、彼は唇をゆがめた。


 ………いや…、これは…笑っている(・・・・・)のだ。

 創樹の眼光が鋭くなった。

 神父の言葉が途切れる。


 ホール全体にざわめきがのように広がる。

 創樹の肩口で、異変が起きていた。

 霧散する映像を逆再生するように、何かが形を成してゆく。


 神父が手にしていた聖書が床に落ちた。

 創樹の肩には、外で別れたはずの二匹の猫が乗っていた。

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