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神宿り  作者:
第2章
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19/103

2

 石原が創樹の姿に気づく。

「君だったか…」

「……お誘い、ありがとうございました」

 創樹が一礼した。


「猫たちはちゃんと届けてくれたみたいだな。だが…何で俺だと?」

 不思議そうな石原に、二匹の猫が『心外だ』とばかりに鳴いた。


「やっぱり、猫たちが…?」

 石原は幻と現を見やった。創樹はうなずく。

「やるなぁ。……あ、それよりお前たち、仕事に戻って、門のトコに行け。人手不足だ」

 石原は立ち尽くしていた三人の生徒に言った。

「え、でも…」

 三人は創樹を見る。


「俺の知り合いだ。俺が案内するからいいよ。……やっと来たか…」

 石原の視線を追った白猫が鳴いた。

「あれ? 神代さんじゃん」

 何やら両手に荷物を大量に抱えた遼介。

「幻に現も…。よっ」

 その隣で同じように荷物を抱えた哲哉が、白猫と黒猫にも声をかける。

「みゃっ」

 白猫は哲哉に応えて鳴いた。

 石原は三人と二匹をうながし、歩き始める。

 残された案内係の三人は、首を傾げながら仕事に戻った。


「神代さん、一昨日(おととい)はありがとな」

 遼介の言葉に、哲哉が怪訝な顔をする。

「お前、また何かしたのか?」

「何もしてねぇよ。ただ…ただ…一昨日の夕方、フラッと街に出たわけよ。んで、闇雲に歩き回ってたら、いつの間にか街から離れたトコまで来てたのに気付かなくて。自分がどこにいるか、わからなくなったんだよ」

「…お前なぁ…高校生にもなって迷子になるなよ…」

「情けない…」

 哲哉があきれ、石原が頭痛をこらえるような顔をした。


「でも、気付いた時には普段全然行かねぇような入り組んだ道にいたんだってば。んで、仕方なくテキトーに歩いてたら偶然神代さんに会って、俺の知ってる通りまで連れてってもらったんだよ」

「すまんなぁ、こんな抜けたヤツで…」

 石原が遼介の言葉に、ため息と共に創樹に言った。創樹は『なんでもない』というように首を振る。


「でも、神代さんって結構道知ってるんだ? そんな街からちょっと外れた入り組んだ道なんて…」

 意外そうに哲哉が創樹を見た。創樹は首を横に振り、猫たちを示した。

「「「…猫?」」」

 三人の声がハモる。


「私が知らなくても、この子たちが。猫の友達もいるし、よく探検に出かけるので、私の知らない道もたくさん知ってます」

 穏やかに言う創樹に、白猫が擦り寄った。三人は驚きと感心に息をついた。


「ミャッ」

 不意に黒猫が創樹の肩から飛び降り、声を上げる。

「みゅ」

 白猫がそれに続いた。振り返り、二匹揃って創樹を見上げる。

 創樹がうなずくと、二匹の猫はどこかへと駆け去った。


「…捕まえなくてもいいのか?」

「校内は、猫禁止ですよね。帰る頃には戻って来ますから」

 石原の問いに、創樹は何でもないことのように答える。


「ま、確かに…」

 猫禁止の部分を肯定しつつ、納得したように、石原は校舎の扉を開いた。

「この廊下をまっすぐ行くと、左手にドアがある。そこから中に入ればホールの客席だ」

 石原に言われ、創樹は礼を言い、三人に頭を下げてから歩き出した。

 三人は創樹と逆方向に進む。

 創樹はホールの扉を開けた。






 二匹の猫が並んで駆ける。

「ミュッ」

 黒猫が注意をうながすように鳴いた。

「みゃ~ぅ」

 白猫も鳴き返す。

 二匹の猫が見つめ合った。

 そして…消えた。

 数秒の後、三人の人間が姿を現した。

 生徒に案内され、シスターと神父は校舎へと入っていった…。

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