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創樹のつぶやきだけじゃ(虎たちとの会話が)、わかりにくいかな…と、思いつつ、この方があとで意味を知って面白いかな、と。
「………ミサ、か…」
創樹は傍らの虎に身を寄せる。
手には一枚の紙切れ。教会で石原という教師が、猫たちに渡した紙だ。
虎が創樹を見上げた。
「……一週間…。あっという間に数が逆転した…」
じっと創樹を見つめていた虎が、ふいに視線をそらすと、己の背を示す。
創樹が頷き、その背にひらりとまたがる。
虎がふっとかき消える。創樹の姿も同時に消えた。
風が地面から木の上へと舞い上がる。間髪おかず、今度はビルの屋上まで吹き上げ、しばし無風となる。
「………あそこだね…」
誰も居ないはずの空間に、少女の声が小さく響いた。
風が舞い起こる。
流れるように…というよりは、家々の屋根から屋根へ風は移ろっていく。
風が小さくうなる。
「…うん、気をつける。……近いね…」
屋根から地面へ舞い降りた風は、人通りのない細い道の地面すれすれを吹き抜けた。
大きな通りが近付いてくると、停滞し、やがて風が止む。
フッと、無人だったはずの路地に虎にまたがった創樹が現れる。創樹は虎の背から飛び降りた。
「ありがとう、砕牙」
創樹は虎の首筋に手を回し、抱きつく。
虎が静かな声を上げる。
創樹がうなずいて…虎は消えた。
スッと立ち上がり、創樹が歩き出す。いつの間にか、その肩に二匹の猫が乗っている。
たいした距離を歩くこともなく、『泰善高等学校』の門をくぐった。
案内板を見ながら校内を歩く。
創樹の他にも、一般客らしき姿がちらほらと目についた。
「君、一人?」
泰善高校の制服を着た三人組の男が声をかけてきた。創樹が振り向く。
男たちは気おされたように一歩、後ずさった。
「………………」
「みゃぅ」
創樹の代わりに、肩の上の白猫が鳴いた。
「う…あ、そ、そうか。猫も一緒か…」
三人のうちの一人がしぼり出すような声で言い、何度もうなずいた。
「えーあ~…俺たち、怪しいモンじゃなくて、え~っと…」
「案内係なんだ。ほら」
男子生徒は腕章を示した。
彼らは案内係で『怪しい者』ではないはずなのに、その妙にうろたえた自分たちの言動によって、不審に映るのに気がついていない。
「……………」
「ホ、ホールまで案内するよ」
「……………」
創樹は猫たちと顔を見合わせ、再び視線を戻した。そして軽く会釈する。
表情を変えない創樹に十分に戸惑いつつ、彼らは創樹を案内し始めた。
白猫は呆れたような目で、黒猫は馬鹿にしたような目で、彼らを見やっていた。
「………お前たち、何をやってるんだ…」
不意にあきれた、ため息混じりの声がかけられた。
創樹も知る声。振り返ると、やはりそこには、石原がいた。
「な、何って案内を…」
「一人の人間に三人も案内が必要なのか? 他にも客はいるんだぞ」
確かにその通りである。




