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神宿り  作者:
第1章
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11/103

10

「まぁ…猫ちゃんが?」

 シスターが微笑んだまま応え、あたりを見回す。


「猫って…あの、白猫と黒猫…?」

 思わず、という様子の遼介に、哲哉が不思議そうに遼介を見、四〇代半ばほどの男がいぶかしげな表情をつくる。

 一瞬少女と目が合い、遼介は息を詰めた。少女が頷く。


「何でお前が知ってんだ…?」

 哲哉に肩を叩かれ、遼介はハッとする。

「あ…いや…昨日、家に帰る途中、猫連れた彼女に会って…ていうか、見かけて…」

 しどろもどろの遼介と、確認する瞳を向ける男と哲哉に、少女は頷いた。


「…まぁ、それはいいとして、手伝おっか? 猫探し」

 哲哉は少女に問う。少女が哲哉を見る。哲哉が息をのんだ。

 男とシスターは、既に辺りをきょろきょろと見回している。


「ありがとうございます。ですが、大丈夫です」

 少女は目礼するように少し目を伏せて、答える。哲哉も我に返る。


「「大丈夫…?」」

 少女の応えに、男とシスターが顔を見合わせ、首を傾げた。


「幻、現」

 周囲の疑問など意に介さず、少女が声を上げる。

 すると、どこに隠れていたのか、二匹の猫が転げるようにでて来て、少女に駆け寄る。そして足元で急停止した。

 少女が手をさしだすと白猫が飛び乗り、毎度の如く肩まで登る。


 黒猫はちらっと少女を見上げ、そばを離れた。

 それから驚いている四人の人間の元へ行くと、机に飛び乗り、机から今度は遼介の肩に飛び乗った。


「!?」

 遼介はわけがわからず戸惑う。少女は落ち着いた足取りで四人のそばへ。

「遼介、その猫、何くわえてんだ?」

 哲哉が手を猫の口元にのばすと、黒猫は手の上にくわえていたものを置いた。

 哲哉は視線を落とし…

「あ…、これ、お前の学生証じゃん。落としたのか?」

 遼介にカードを見せた。


「お前というやつは…」

 男が低い声をしぼりだす。

「今日再発行したばっかりの学生書を、今日早速落とすなバカモノッ!!」

 男に怒鳴られ、遼介は首をすくめた。


 黒猫は『巻き添えはごめんだ』とばかりに、既に哲哉の肩に移動している。

「まぁま、センセ。落ち着いて。頭に血がのぼってっと、ロクなコトないぜ?」

 怒鳴られた側の遼介がなだめる。逆効果であるのは明らかだった。


 だが、さすがに場をわきまえているので、男もそれ以上は大きな声を出さず、シスターに軽く頭を下げる。

「失礼しました」


「いいえぇ。元気な生徒さんですねぇ…」

「まったく、困ったやつらで…」

 ニコニコと返すシスターに、男は苦笑した。

「『やつら』って、俺も入ってるってことかぁ?」

 腑に落ちない表情で哲哉が言った。


 その目の前に、少女が立つ。

 黒猫が哲哉の肩から、少女の肩へジャンプする。少女は軽く哲哉に会釈した。


「お騒がせしました」

 それから全員に頭を下げる。

「いえいえ。……そういえば私、猫アレルギーだったんですけど、治ったのかしら? 猫ちゃんがこんなに近くにいても平気だわ」

「…………………」

 首を傾げるシスターに、少女は無言で猫たちと瞳を交わした。


「それにしても、賢い猫ちゃんたちねぇ…。触ってもいいかしら?」

 笑顔のシスターに、少女はちらりと猫たちを確認するように見てから、頷いた。


 黒猫はツンとそっぽを向いている。

 少女は右腕を持ち上げた。白猫がその腕を伝ってシスターに歩み寄る。

「まぁまぁ」

 シスターは大して意味のない感嘆符を並べ、白猫に両腕をさしだした。

 白猫は抱き上げられる前に、自らその腕に飛び込んだ。


「あらあら、人間の言葉や動作がわかるみたい」

 シスターの言葉に、「当然だ」とばかりに白と黒の猫はそろって鳴いた。


「すごい猫だな……っと、感心してる場合じゃなかった。さっさと働くぞ」

 男が遼介と哲哉に声をかけた。


「じゃあ、ご案内しましょうね。…あなたはもう、お帰りになるの?」

 三人に言ってから、少女に尋ねるシスター。少女は頷く。

「そう、残念だわ。でも、せめて入り口までご一緒しましょう?」

 シスターに微笑まれ、特に拒否する理由もないので少女は頷いた。


「私は野々村と言います。あなたと…それから猫ちゃんの名前を教えて頂けるかしら?」

「私は神代創樹(かみしろ そうじゅ)。白猫が(ゆめ)、黒猫が(うつつ)がです」

 歩き出しながら尋ねられ、創樹はシスターに応えた。


「あらあら、あなたも猫ちゃんも個性的で素敵なお名前…」

「…ありがとうございます」

「学校は?」

 応えた少女に、今度は男が問う。

「あぁ、俺は高校で教鞭をとっている石原というんだが…君は、どこの学校の、何年生かな?」

 男…石原は名乗り、問い直した。

「港南高校の二年です」

 簡潔に創樹は応える。


「ほう…。同じ高二でも、お前たちとはえらい違いだなぁ。たまにはお前らも敬語使ってみたらどうだ?」

 石原は遼介と哲哉に言った。

 遼介はあらぬ方向をながめ、

「俺はそれなりに使ってますよ」

 哲哉は反論した。


「あれ? そういえば、何で猫が入って来れたんだ? 閉まってたよな…?」

 扉に手をかけようとして、ふと哲哉が言った。そういえば…と、他の三人も不思議そうに創樹を見る。


「………幻、現」

 創樹は猫たちを見、ドアを見た。

 創樹の肩から黒猫が飛び降り、シスターの腕から白猫がジャンプしてドアノブに着地した。

 白猫がノブの上で体重を移動させ、黒猫が体でドアを押すと、難なく開く。

 四人はただ、頷くしかない。


 外へ出ると、シスターが創樹と向き合った。

「突然ですけど、創樹さん。あなた、明日何かご予定ある?」

「……いえ…」

「まぁ、本当? じゃあ、もしよかったら、明日またへいらっしゃらない? あいにく神父は不在ですけど、日曜礼拝をやるの。午後の二時頃からですけど…」

 シスターの言葉に、創樹と地面で遊んでいた猫たちは、瞳を交わす。

「礼拝と言っても、お祈りの後、来てくれた方々と楽しくおしゃべりをして、お茶を頂く集会なの。堅苦しく考えなくていいわ。あなたと猫ちゃんたちが来てくれたら、きっと子どもたちが喜ぶと思うんだけど…どうかしら?」

 創樹は猫たちに軽く頷き、それからシスターを見た。

「お伺いします」

「嬉しいわ。では明日、二時頃にいらして下さいね」

「はい」

 シスターに頷いてから、創樹は猫に手をさしだした。二匹の猫が飛び乗る。

 四人に一礼をして、創樹は教会を後にした。


良かった、やっと主人公の名前出せた、笑

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