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「まぁ…猫ちゃんが?」
シスターが微笑んだまま応え、あたりを見回す。
「猫って…あの、白猫と黒猫…?」
思わず、という様子の遼介に、哲哉が不思議そうに遼介を見、四〇代半ばほどの男がいぶかしげな表情をつくる。
一瞬少女と目が合い、遼介は息を詰めた。少女が頷く。
「何でお前が知ってんだ…?」
哲哉に肩を叩かれ、遼介はハッとする。
「あ…いや…昨日、家に帰る途中、猫連れた彼女に会って…ていうか、見かけて…」
しどろもどろの遼介と、確認する瞳を向ける男と哲哉に、少女は頷いた。
「…まぁ、それはいいとして、手伝おっか? 猫探し」
哲哉は少女に問う。少女が哲哉を見る。哲哉が息をのんだ。
男とシスターは、既に辺りをきょろきょろと見回している。
「ありがとうございます。ですが、大丈夫です」
少女は目礼するように少し目を伏せて、答える。哲哉も我に返る。
「「大丈夫…?」」
少女の応えに、男とシスターが顔を見合わせ、首を傾げた。
「幻、現」
周囲の疑問など意に介さず、少女が声を上げる。
すると、どこに隠れていたのか、二匹の猫が転げるようにでて来て、少女に駆け寄る。そして足元で急停止した。
少女が手をさしだすと白猫が飛び乗り、毎度の如く肩まで登る。
黒猫はちらっと少女を見上げ、そばを離れた。
それから驚いている四人の人間の元へ行くと、机に飛び乗り、机から今度は遼介の肩に飛び乗った。
「!?」
遼介はわけがわからず戸惑う。少女は落ち着いた足取りで四人のそばへ。
「遼介、その猫、何くわえてんだ?」
哲哉が手を猫の口元にのばすと、黒猫は手の上にくわえていたものを置いた。
哲哉は視線を落とし…
「あ…、これ、お前の学生証じゃん。落としたのか?」
遼介にカードを見せた。
「お前というやつは…」
男が低い声をしぼりだす。
「今日再発行したばっかりの学生書を、今日早速落とすなバカモノッ!!」
男に怒鳴られ、遼介は首をすくめた。
黒猫は『巻き添えはごめんだ』とばかりに、既に哲哉の肩に移動している。
「まぁま、センセ。落ち着いて。頭に血がのぼってっと、ロクなコトないぜ?」
怒鳴られた側の遼介がなだめる。逆効果であるのは明らかだった。
だが、さすがに場をわきまえているので、男もそれ以上は大きな声を出さず、シスターに軽く頭を下げる。
「失礼しました」
「いいえぇ。元気な生徒さんですねぇ…」
「まったく、困ったやつらで…」
ニコニコと返すシスターに、男は苦笑した。
「『やつら』って、俺も入ってるってことかぁ?」
腑に落ちない表情で哲哉が言った。
その目の前に、少女が立つ。
黒猫が哲哉の肩から、少女の肩へジャンプする。少女は軽く哲哉に会釈した。
「お騒がせしました」
それから全員に頭を下げる。
「いえいえ。……そういえば私、猫アレルギーだったんですけど、治ったのかしら? 猫ちゃんがこんなに近くにいても平気だわ」
「…………………」
首を傾げるシスターに、少女は無言で猫たちと瞳を交わした。
「それにしても、賢い猫ちゃんたちねぇ…。触ってもいいかしら?」
笑顔のシスターに、少女はちらりと猫たちを確認するように見てから、頷いた。
黒猫はツンとそっぽを向いている。
少女は右腕を持ち上げた。白猫がその腕を伝ってシスターに歩み寄る。
「まぁまぁ」
シスターは大して意味のない感嘆符を並べ、白猫に両腕をさしだした。
白猫は抱き上げられる前に、自らその腕に飛び込んだ。
「あらあら、人間の言葉や動作がわかるみたい」
シスターの言葉に、「当然だ」とばかりに白と黒の猫はそろって鳴いた。
「すごい猫だな……っと、感心してる場合じゃなかった。さっさと働くぞ」
男が遼介と哲哉に声をかけた。
「じゃあ、ご案内しましょうね。…あなたはもう、お帰りになるの?」
三人に言ってから、少女に尋ねるシスター。少女は頷く。
「そう、残念だわ。でも、せめて入り口までご一緒しましょう?」
シスターに微笑まれ、特に拒否する理由もないので少女は頷いた。
「私は野々村と言います。あなたと…それから猫ちゃんの名前を教えて頂けるかしら?」
「私は神代創樹。白猫が幻、黒猫が現がです」
歩き出しながら尋ねられ、創樹はシスターに応えた。
「あらあら、あなたも猫ちゃんも個性的で素敵なお名前…」
「…ありがとうございます」
「学校は?」
応えた少女に、今度は男が問う。
「あぁ、俺は高校で教鞭をとっている石原というんだが…君は、どこの学校の、何年生かな?」
男…石原は名乗り、問い直した。
「港南高校の二年です」
簡潔に創樹は応える。
「ほう…。同じ高二でも、お前たちとはえらい違いだなぁ。たまにはお前らも敬語使ってみたらどうだ?」
石原は遼介と哲哉に言った。
遼介はあらぬ方向をながめ、
「俺はそれなりに使ってますよ」
哲哉は反論した。
「あれ? そういえば、何で猫が入って来れたんだ? 閉まってたよな…?」
扉に手をかけようとして、ふと哲哉が言った。そういえば…と、他の三人も不思議そうに創樹を見る。
「………幻、現」
創樹は猫たちを見、ドアを見た。
創樹の肩から黒猫が飛び降り、シスターの腕から白猫がジャンプしてドアノブに着地した。
白猫がノブの上で体重を移動させ、黒猫が体でドアを押すと、難なく開く。
四人はただ、頷くしかない。
外へ出ると、シスターが創樹と向き合った。
「突然ですけど、創樹さん。あなた、明日何かご予定ある?」
「……いえ…」
「まぁ、本当? じゃあ、もしよかったら、明日またへいらっしゃらない? あいにく神父は不在ですけど、日曜礼拝をやるの。午後の二時頃からですけど…」
シスターの言葉に、創樹と地面で遊んでいた猫たちは、瞳を交わす。
「礼拝と言っても、お祈りの後、来てくれた方々と楽しくおしゃべりをして、お茶を頂く集会なの。堅苦しく考えなくていいわ。あなたと猫ちゃんたちが来てくれたら、きっと子どもたちが喜ぶと思うんだけど…どうかしら?」
創樹は猫たちに軽く頷き、それからシスターを見た。
「お伺いします」
「嬉しいわ。では明日、二時頃にいらして下さいね」
「はい」
シスターに頷いてから、創樹は猫に手をさしだした。二匹の猫が飛び乗る。
四人に一礼をして、創樹は教会を後にした。
良かった、やっと主人公の名前出せた、笑




