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召喚送還師  作者: 銀槍
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屋台

俺が国に申請した商売は、正確にはスーパーマーケットの様な店頭販売だ。だが始はコロッケの揚げ物販売しかしない。召喚術全開でこの世界に無い物まで販売したら、年緒さんが忠告した内容の通りになってしまう可能性が高い。


だが秘密というのはいずれバレるものだし、バレた時の対応策も考えた上での国への申請なのだ。


もしバレた場合は召喚術を全開に使用して、この国の権力のある落ち人達に、元の世界の商品を出来るだけ多くの人に売り付けるつもりだ。


大きな権力を持つ落ち人達が、互いに監視仕合、俺に手を出させ辛い構図にするのが目的だ。もし誰かが俺を囲ったら、他の落ち人はもう二度と元の世界の欲しい品物が手に入らないから、必死になって俺を守ろうとする筈だ。


これぞ名付けて昔のアイドルが言っていた作戦。


「私は一人の物じゃない、みんなの物なのよ作戦」


ストーカーは出ない事を期待したい。


そんな訳で、早速開店の準備に取り掛かる。まず屋台を召喚する。なんと車で移動する屋台を召喚してしまった。王都で屋台付きの車で営業する者も多い。あちらの動力は、魔石を細かく砕いて粉末状にして水に溶かしてガソリン代わりにしているのに対して、こちらは完全にガソリン車だ。見かけの違いは変わらないから問題は無いだろう。召喚した車は小回りが効く軽自動車にして後ろのスペースがお店のタイプにした。コロッケ揚げるだけだからこれで十分だ。


この世界のコロッケは元の世界のコロッケに比べて食感がもちもちしている。その方が美味いという方もいるだろうが、俺は食べ比べてみてジャガイモの方が美味いと感じた。なのでジャガイモで作られた冷凍されたコロッケを召喚してその場で揚げてお客に渡す方式にした。このコロッケの事をお客に訊かれても適当に誤魔化しゃいいし、まさか中身がジャガイモだとは気が付かないだろう。見た目は全く同じだし。


コロッケの値段は一個二百円にした。他の店では一個三百円で売っていたから、此方の方が百円も安い、この差は大きい。ちなみに車を王都に転移させる場所も確保してあり、王都の端にあるが、車庫付きの駐車場で、駐車場代は一月六千円、そのまま駐車場に車を置いて自分達だけ洞窟に転移すれば良いし、六千円で安全に転移出来るなら安い物だ。


もちろんサスケにも手伝って貰う。その為の準備も万全だ。明日が楽しみだ。


翌日、車庫に転移して助手席にサスケを乗せて、いざ出発。もちろん安全運転だ。隣りにいるサスケは身体と尻尾を丸めて休んでいる。この世界ではまだ車が発明されたばかりなので免許は必要ないそうだ。と言うより乗り物を運転するのに免許自体必要ではない。まだそこまで法整備が進んでないとの事。此方の世界の人は、乗り物の数自体が少ないから、其処まで深刻に考えていないんじゃないかな。管理も大変だし。


五分ほど細い道路を、人が飛び出さないか注意しつつ車を運転して目的地である大通りの商店街の一番端の方の商店の終わる場所に車を止める。営業する場所は国に決められていて、当然中央の人通りの多い場所は場所代だけでも結構それなりに金がかかる。この場所はタダ同然の場所だ。もうチラホラと他の屋台をする人の姿も見える。隣りの屋台との距離は三十メートル以上あり、その向こうに屋台がズラリと並んでいる。さながら俺一人だけ陸の孤島だ。場所代を節約し過ぎたか…、今さら言っても遅いか。


少し不安で落ち込んでいる俺に、サスケが器用に前足で「気にするな」とポンポン俺の足を優しく叩いている。


「サスケ…、お前良い奴だな、落ち込んでも仕方ないか、サスケ、開店の準備をするか。」


「ワン」


元気よく吠え、俺に応えてくれる。あんた良い人や…、いや犬か。


車の後部の側面を開くと、中から厨房が現れる。水はポリタンクで助手席の下に置いてあるが、使う予定は今のところは無い。調理場スペースは後ろの縦半分なので、残り半分空いたスペースに座り調理を始める。冷凍のコロッケを召喚して取り合えず五個油の中に入れて揚げ始める。揚げ終わった順に油を切るトレイに載せる。これでお客が何時来ても大丈夫。



一時間後……、一人も客が来ない。他の店は少しずつ客が入り始めているのに、此方には来る様子も無い。


「まずい、まずいぞ、サスケ、客を呼んで来てくれ。」


俺は画用紙とゴムバンドを召喚して円錐形の帽子を作り、その側面にコロッケ一個二百円と書いてサスケに装備させて送り出す。その他に無地の旗を召喚してコロッケ一個二百円と書いて目立つように車に括りつける。


その状態で暫く待っているとサスケが客を三人連れて戻ってきた。どの客も若い女の子だ。サスケ君グッジョブ。


それを何回か繰り返したら一日の売上が六千円にもなった。サスケ君さまさまだ。


次の日は、コロッケが安いと聞いてやってきた奥様連中のおかげで売上が一万円近くになった。そして次の日も次の日も、そしてまた次の日も奥様連中はお客さんになってくれた。


次の日、メニューにアジフライとメンチカツが載りました。屋台の開店の準備をしていると、奥様連中の旦那さんらしき人達がやってきて、このままだと毎日コロッケばかり食べさせられるから妻達に売らないでくれと懇願された。


「そんな事知らんがな」と言いたかったが、土下座までされて折れた。代わりにメニューを増やすと伝えたら、泣いて喜んでいた。


その結果、一日の売上が平均三万円になり、噂を聞きつけた奥さん達も増えて笑いが止まらん。元の世界でもこんな簡単に稼げればなあ…、と少し虚しくなった。


そして更に数日が経ち、トーマスさんとの約束の日がやってきた。俺は洞窟で屋台の売上を数えていた。


「一週間で二十万近くか。まずまずだな。」


経費がほとんどゼロなので、笑いが本当に止まらない。サスケにもご褒美にジャーキーを与えている。今も俺の隣りでムシャムシャと食べている。


「サスケ、もしかして、やっと俺人生の勝ち組に入れたかもしれない。まるで世界が俺を祝福しているみたいだ。」


「ワン、ワワン」


サスケもジャーキーを食べるのを止めて、ウンウンと頷きながら俺に応えてくれる。気分の良いままトーマスさんに会いに行こう。今なら全て上手く行く気がする。


「サスケ留守番を頼む、少し出かけてくる。」


「ワン」


俺は送還術を発動する。そしてエリア4へ跳ぶ。


転移終了後、俺の目の前には焼け落ちるトーマス邸と左には埃だらけのトーマスさん、エド君、ロイ君、そしてゴメスさんの4人、対する右側には剣を持って武装する男達が数人……、


「あれ、もしかして俺の人生、風前の灯だったりして……」


そう思った瞬間、剣を持った男達が俺に襲い掛かった。


「沖田さぁぁぁん」


トーマスの声が庭に響いた。



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