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「なんでいい年して、また学生服なんか着なきゃいけねぇんだよ…」
エレオノーラの言うところの危機的状況に、全く関心がないリンは虚ろな目でネクタイを引っ張った。
「しょうがないよ、リリアーヌ様の護衛だもん」
渋るリンに、ガイが諦めたように首を振った。
「二人とも、お似合いよ?」
「はは……」
二十歳を過ぎて、学生服が「お似合い」と言われても全然嬉しくない。
おっとり微笑むリリアーヌに二人は曖昧に笑う。
「それはそうとリリアーヌ様、恋してるんだって?」
一応、ガイが探りを入れてみる。
言ってからすぐ後悔した。
「あら、お姉さまから聞いたのね?」
リリアーヌが細い指を両頬に当てて、ほんのり赤くなる。
ガイはそれだけでもうお腹いっぱいだ。
「ごめん、やっぱいいや」
「聞いて欲しかったのに…」
「リリアーヌ様、そろそろ学園につくぜ?」
正直、この話を続けたくない。
少し残念そうなリリアーヌの話を、強引にリンが打ち切った。
「…学園内も気を付けろよ?」
馬車を降りるリリアーヌに手を貸しながらリンが囁く。
「……?」
「噂が巡りめぐって、リリアーヌ様が精霊の加護持ちって話になってるからな」
エレオノーラの部屋に光を撒き散らしながら現れた精霊王たち。
真実は保護者会だが、「リリアーヌが精霊に愛されている」という噂だけが独り歩きしていた。
「リリアーヌ様の美しさが精霊たちを魅了したことになっちゃったみたいなんだよねぇ」
「まぁ、なんでそんなことに…」
「俺たちが知るか」
真相を知る二人にとっては面倒が増えただけの忌々しい噂だ。
「困るわね…」
「同感だ。けど、それを信じるやつらがいる以上警戒はしておけ」
傍目には丁寧な従者のように振る舞いながら、リンは用心深く周囲を見回す。
「分かったわ、気を付けます」
「素直で助かるよ」
授業にリリアーヌを送り出す。
その姿が教室に消えたのを確認して、リンがガイに目配せをした。
「うん、いるね?」
「二人、か…。隠れる気あんのか、あれ」
「自信があるタイプなのかもよ?」
そこそこ手練れの気配を確認して、リンとガイは面倒くさそうにため息をついた。
「リリアーヌ様をエサにして一気に叩きてぇ」
「それは止めとこ。俺たちが猛獣のエサにされそう…」
「はは…言えてんな」
やりかねない。
「さて、どうするかな」
「学園内はまずいでしょ。おびき出すとか?」
「替え玉でも立てるか」
空の馬車でおびき寄せる。
目立たない場所で速やかに片付けたい。
「引っ掛かってくれると良いけどな」
リンの唇が薄く上がった。




