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執務室にエレオノーラの独り言だけが呪詛のように響いている。


重たすぎる…。


リンとガイが深く息を吐いた。


「あの庭師を解雇…は、もう止められていますし――いっそのこと…」


「待った待った待った!!」


「やめておきなよ、本気で嫌われるよ!」


恐ろしい結論に辿り着きそうなエレオノーラを二人は必死で止める。


業務外もいいところだ。


「なんか取り柄とかねぇの、そいつ」


「そうだよ、エレオノーラ様が納得できるようなさ」


何が来ても文句を付けると言い切ったエレオノーラに、それがあるとは思えない。

しかし妥協案を探して納得させないと、自分達にとばっちりが来ることは間違いない。


とにかく、放っておいたら絶対に碌なことにならない。

その確信だけがあった。


「良いところ…」


エレオノーラの扇子が、考え込むその顎に添えられる。


「そういえば、あの庭師…」


「あるのか!」


「ちゃんと強いやつ?!」


心当たりがあることにも驚きだが、この際それは置いておく。

二人が食いついた。


「春の精霊王と秋の精霊王。二つの加護を受けているようだったわ」


……無音。


一瞬の空白をおいてリンとガイが叫んだ。


「あるじゃねぇか!」


「その二つって豊穣とかそういうすごいやつだったよね!?」


勢い良く詰め寄る二人にエレオノーラがつまらなそうに息を吐いた。


「確かに二つの加護は珍しいけれども、我が侯爵家はすでに豊穣ですし…。今さらこれ以上は必要ありませんもの」


「『王』クラスが二つだぞ、間違いなく立派な取り柄だ!」


「そうだよ、リリアーヌ様に相応しい強烈な祝福持ちだよ!」


何で会ったこともない庭師の良いとこ探しを、こんなに必死にやらなきゃいけないんだ。

そんなことを考えたら敗けだ。


とにかく、エレオノーラを丸め込み、自分達への被害を最小限に押さえたい。


「だけど、あの精霊たちちょっと面倒そうなんですもの」


「…会ったのか?」


エレオノーラが不満げに口を尖らせた。普段からは想像のつかない幼さだ。


「今日は本当に珍しいね、エレオノーラ様」


扇子を弄ぶエレオノーラに、リンとガイの頬が引きつる。


「昨晩。私の部屋に燦々と光が落ちて…」


「…来たのか?」


「…何しに?」


心底嫌そうなエレオノーラに、負けず劣らずリンとガイが嫌そうな顔になる。


「その庭師の『花嫁』にしたい、と…」


「がっつり、話してんじゃねぇか!」


「それなのに、リリアーヌ様に知らないふりしたんだ、せこい」


ばん!


エレオノーラが二人を黙らせるように、机に扇子を叩きつける。


「お黙りなさい!」


ビクッと二人が条件反射で黙る。


「良い年して、恋愛に保護者が口を出してくるような情けない男など、論外ですわ!」


「エレオノーラ様が言えた義理か!」


「口うるさい舅と姑が居るようなところにやれませんわ!」


「それも、そのままエレオノーラに返ってくるからね!」


リリアーヌが絡むことで、エレオノーラがまともであったことはない。


知ってたけど、再確認。

リンとガイが力一杯怒鳴りつけた。


しかしそれも一喝される。


「お黙りなさい、私は認めたくないの!」


「「理不尽!!」


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