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ふわり。


ガイがリンの魔方陣を具現化する。

光がわずかに揺れ、姿勢を正して座るリリアーヌが現れた。


「よし、完璧」


「どうだろ?エレオノーラ様にはバレそうだけど」


「あれは異常者だ。一般的に騙せりゃいいんだよ」


リンは魔方陣を製図した光ペンをくるりと回した。


「自分達でおびき出しといてなんだけど、これで引っ掛かっちゃったら、結構まぬけだよね…」


「まぁ…。なんたって本人が学園で授業受けてるからな」


カタリ。


「…掛かっちゃったよ」


「まぬけ確定だな」


馬車の屋根の上。

わずかな気配に二人は顔を見合わせた。


即座にリンが光ペンを宙に走らせようとしたとき、急速な魔力の乱れが生じた。


「…!?」


カチリ、と小さな音が天井から響く。


「まずい、魔力暴走型の爆弾だ!」


「ええ!やることが雑すぎない!?」


「出るぞ!」


勢い良く扉を蹴破り飛び出す。

地面を転がった直後、背後で爆音が弾けた。


ドンッッ!!


鈍い音とともに、馬車が吹き飛ばされる。


「誘拐じゃなくて爆殺かよ」


もうもうと立ち上る砂煙の前で、リンが舌打ちをした。


その横を――


ふらり…。


爆風も収まらない中、何かに引き寄せられるようにガイが一歩踏み出した。


「…ガイ?」


「この、魔力…、俺の知ってるやつ…」


小さな呟きは、風にかき消されて良く聞こえない。


「なんだって?」


「なんで、俺…、あれ?…なんでここに…」


ガイの様子がおかしい。

リンが眉を寄せたとき、煙の向こうから人影が浮かんだ。


「…ふん。勘の良いヤツらめ」


沈黙の海蛇サイレント・リヴァイアサン……っ」


腕に蛇の巻き付いた骸骨のタトゥー。

――海賊の旗印。


「あぁ、侯爵家の嬢ちゃんも勿論頂くが、お前らにも個人的に恨みがあるんでな?」


「あんた達なんて知らねぇな。あいにく好み(タイプ)じゃねぇし、言い寄られても困るぜ?」


つうっと背筋に流れる汗。

気付かれないように、リンが口角を上げた。


「お前らに何隻か船をやられてんだよ」


にじり寄る男の手には小さな箱が握られている。

馬車の爆発の時に感じた、圧縮された膨大な魔力の塊。


「……それ」


ガイの目が箱に釘付けになった。


「ガイ?」


目の前の海賊も厄介だが、ガイの様子がさっきからおかしい。


「こいつぁ特別製だ。ドラゴンの魔力入りでな」


男が自分の優位を確信した声で高らかに叫んだ。


「ドラゴンの…魔力…?」


リンの眉間に皺が寄る。

瞬間、隣でガイの瞳孔が縦に裂けた。


「……俺の……」


ガイの喉から、掠れた声が漏れた。


「――俺の力だ」


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